タイから日本に帰国後、非正規雇用でも資金的に老後は大丈夫ですか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、来年日本への帰国を希望する、現在タイのバンコクで働く40代後半の男性会社員。しかし、日本での就職は、生活費が不足するという不安もあります。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

 
タイから帰国後の生活についての相談

タイから帰国後の生活についての相談


■相談者
Shuheiさん(仮名)
男性/会社員/40代後半
タイ・バンコク/持ち家・マンション
 
■家族構成
独身・一人暮らし
 
■相談内容
タイ在住現地採用にて10年以上働いてきました。50歳を目途にタイから日本に戻り、地元で再就職を検討中。ただ、年齢的なこともあり、地元での就職は難しく、正社員の職はつけないことが考えられる。できれば、タイ株投資と、現在バンコクに3部屋保有するマンションの賃貸料(約14万円)で、非正規雇用での所得をカバーできないかと思っています。60歳までに引退もしくは半引退をして、日本とタイを往復する生活を送りたいと思っています。
 
■家計収支データ
相談者「Shuhei」さんの家計収支データ

相談者「Shuhei」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)ボーナスについて
ほぼ全額貯蓄、一部マンション補修費
 
(2)マンションの賃料について
少なくとも10年間は今の収入は維持できそう。それ以降は売却予定。3物件の現状での売却額(相場)は1300万円、1100万円、500万円。
 
(3)保険について
死亡保障のある保険に数本加入。満期金は計360万円。
 
(4)日本での生活費について
日本では実家に住み、毎月の生活費は10万円程度の予定。
 
(5)日本での働き方
非正規雇用で月15万円程度の収入と考えている。
 
(6)公的年金について
タイで年金加入。60歳から月1万円支給。
日本では国民年金に加入。帰国後、非正規雇用でも厚生年金に加入できる勤務先を探すつもり。
 
(7)退職金について
現在の勤務先は退職金はほぼなし。
 
(8)投資について
日本での所得の不足分を「タイ株式投資」でカバーすることについて本人コメント「現時点の配当は年間10万円程です。毎日デイトレードを行うのであれば、年間100万円程の収益を期待しています。ただ、株は上がるときも下がるときもあるギャンブルですので、何とも言えないところです」
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 非正規雇用でも資金的には困らない
アドバイス2 「生活費が月10万円」が大きなポイント
アドバイス3 リスク回避の手段として60歳からアルバイト
 

アドバイス1 非正規雇用でも資金的には困らない

まずは、キャッシュフローを見ていくことにします。予定どおり、50歳で退職をし、日本に帰国後、非正規で働くとします。収入は月15万円程度を考えているとのことですが、これが額面だとすると、税金と社会保険料を差し引かれ、手取りで12万円台前半。毎月の生活費はShuheiさんが想定した月10万円ならば、2万円の黒字ですから、給与から貯蓄ができるとするなら年間24万円。
 
また、マンションの賃料収入が経費を引いて年間100万円。それが10年間、継続して得られるとすれば1000万円となります。加えて、投資商品からの配当が年間10万円で、これも10年間だと100万円。今ある金融資産が10年後も増減なしとすれば1330万円。さらに、満期金360万円の保険にも加入しています。結果、あくまで計算上ですが、60歳の時点で金融資産はざっと3000万円ということになります。
 
加えて、家賃収入が発生していたマンションは、10年後には売却予定とのことですが、そのときいくらで売却できるかはわかりません。仮に、Shuheiさんが言うところの現在の相場の70%で売却できれば、約2000万円、50%程度なら1500万円。退職金がないとすれば、先の3000万円に、この売却額(税金等は考慮せず)を加算した金額がいわゆる「老後資金」となります。
 
では、この老後資金で足りるかどうか。60歳から年金受給まで5年間。フルリタイアとなれば、収入は配当などの年間10万円とタイで加入していた年金が月1万円。不足分の生活費は月8万円程度ですが、60歳以降はタイと日本を往復する生活をしたいとのこと。もしもタイも日本も生活費が同じなら、必要なのは交通費程度。それも加算して差し引いて、5年間で600万円を老後資金から捻出することになります。
 
65歳以降は年金受給となります。これまでの年金加入状況がわかりませんが、50歳から10年間、厚生年金に加入したとして、タイからの年金と合わせれば、月10万円の生活費はほぼ年金でまかなえる可能性があります。であれば、プランどおりに帰国して、60歳からフルリタイアでも資金的には足りることになります。
 

アドバイス2 「生活費が月10万円」が大きなポイント

試算上、足りるという結果になったのは、まず実家の存在が大きいと言えます。家賃を含めた住宅コストがまったく発生しないからです。

また、生活費が月10万円に抑えられるという点も同様。実際に、タイでの支出を見ると、基本的には「つつましい」生活という印象です。月10万円の生活も決して不可能とは言えないでしょう。

それでも、リスクがないとは言えません。住宅についても、実家はどういう状況なのか。将来的に相続すれば、固定資産税が発生します。今後リフォームや修繕の必要性は考えられます。生活費にしても、通信費や水道光熱費は、タイより日本の方がはるかに割高です。また、日本での生活にクルマが必要なら、そのコストも考慮しなくてはいけません。

そもそも、家賃収入を見込んでいるマンションが、10年間家賃を維持できるという確固たる保証はありません。保有するタイの株式が大きく下落する可能性も否定はできないでしょう。
 

アドバイス3 リスク回避の手段として60歳からアルバイト

そう考えると、60歳以降、アルバイトでいいので、定期的に収入を得ることが、そういったリスクの回避につながります。例えば、月8万円稼ぐことができれば、年間100万円。65歳までの5年間で500万円。月割りすれば90歳まで、1万7000円ほど。毎月、これだけ家計に余裕が生まれます。
 
最後に、Shuheiさんが期待されている収入として、キャピタルゲインがあります。コメントには「デイトレードを行うのであれば、年間100万円の収益を上げたい」とありますが、本人も認識されているとおり、その発想は「ギャンブル」に等しいと言わざるを得ません。単年なら可能でも、5年、10年と毎年確実にそれだけ収益を上げるのは至難の業です。

株式についても、利益が出ているものは早めに売却して利益を確定しておくのも、リスク回避の有効な手段です。
 

相談者Shuheiさんから寄せられた感想

独身の50歳と言うのは、何かと不安な気持ちが大きくなる年ごろなようですね。特に海外生活が長くなるにつれて、今後の生き方などを色々と考えるところです。ただ、日本に帰れば帰ったで、また思うところがあるとは思いますが。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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