アドバイス1 3年後のフルリタイアは十分可能
海子さんはこれまで大変頑張ってこられたことは、文面からも伝わります。しかも、現在の貯蓄は慰謝料や相続ではなく、コツコツ貯められたとのこと。家計管理にも感心いたしました。さて、ご相談の早期退職ですが、まず、希望されている時期は、下のお子さんが大学を卒業する3年後。一方、毎月の収支は教育費がかさむため、月6万3000円の赤字。ボーナスは全額、生活費の補てんに充てているものの、年間で25万円程度の赤字となります。今後3年間、教育費が変わらないとすれば、貯蓄から計75万円を捻出することになります。その他、毎月の家計支出に反映されない突発的な支出等を考慮して、100万円は少なくとも貯蓄が目減りすると考えていいでしょう。
想定している早期退職は海子さん53歳のとき。この時点で貯蓄と国債の合計は100万円を差し引いて4400万円。これに退職金を加えると5200万円。他に、学資保険と養老保険の満期金、個人年金保険から受け取る年金を加算すると、金融資産は6100万円(終身保険は解約返戻金の詳細が不明のため、ここでは含めず)となります。
53歳からは希望どおり、フルリタイアとします。65歳までは、かかる生活費のすべてを貯蓄等から取り崩すことになります。リタイア後の生活費(海子さん一人分)を現状から考えて、月15万円(退職後、国民健康保険や国民年金の保険料等が発生)とします。65歳までの12年間で2160万円。それでも、65歳のとき、手持ちの金融資産はまだ約3900万円残ります。65歳以降は、公的年金の受給額は月9万円とのことですから、社会保険料や税金等を考慮して、月の不足額は7万~8万円といったところ。90歳までの25年間で、取り崩す金額は2100万~2400万円。結果、少なくとも1500万円はまだ手元に残ります。
また、ここからガーデニング等の費用として1000万円、さらには住宅のリフォーム・修繕費用、医療費等を捻出します。それでも、生活をしっかりコンパクト化しておけば手持ち資金が不足するとは考えにくい。しかも、終身保険を解約すれば、まとまった解約返戻金を受け取れます。長生きリスクにも十分対応できるでしょう。つまり、希望どおり早期退職しても資金的に困ることはないということです。
アドバイス2 健康を考えれば、即リタイアでも構わない
しかし、心配な部分もあります。現在も心療内科に通っているとのこと。その状態で、あと3年間、今のように働き続けることが可能かどうか。少なくとも、今の職場での勤務が健康を害した要因であれば、個人的には3年と言わず、すぐに退職しても構わないと考えます。そして、まずは2、3年、ご自身の心身を休めてはどうでしょう。ただし、そうなると3年間分の収入=870万円がなくなりますので、先の老後資金から同額を差し引かなくてはなりません。それでも、足りなくて困るという事態にはならないでしょうが、多少不安も残ります。したがって、即退職の場合は、数年後に再び働くことが条件となります。
働くといっても、身体に負担のない程度。アルバイトで構いません。月8万円も収入があれば十分です。3年間働けば約300万円、5年なら500万円。これでまた老後資金に余裕が生まれます。お住まいの地域は世界でも有数の観光エリア。仕事は高齢になっても、そう苦労せずに見つけられるのではないでしょうか。
あるいは早期退職の時期を、2年後に短縮してもいいでしょう。それならその後、フルリタイアでも資金的には問題ないでしょう。ともあれ、健康を最優先に考えることが、海子さんにとってもっとも大事なことです。
アドバイス3 周囲の目や声は気にせず、自分のために生きる
最後に「周囲の目」について。詳しい事情はわかりませんが、ご兄弟に何か言われても気にしないことです。離婚後、子育てをしながら頑張って働いて、お子さん2人を大学と大学院に入学させた。立派の一言です。近くでその姿を見てきたお子さんたちも、間違いなく感謝しているでしょう。それでも、周囲が気になるようでしたら、今後、ご兄弟とは極力接しないことです。これからの時間は、海子さんが思うように、そして楽しむために使うべきだと考えます。相談者「海子」さんから寄せられた感想
早期退職可能とのこと、少し安心いたしました。また、お金のことだけでなく、健康のこと、これからの時間のこと、心遣いのあるアドバイスをいただき、ありがとうございます。がんばらなければいけないと思ってしまうので、自分の健康を優先に考えるようにしていきたいと思います。お金のことが、わかりましたので、しばらく心身を休めることも考えてみようと思います。今回、深野先生に、相談できましたこと、感謝いたします。ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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