顔のイボは老人性イボ? 加齢に伴いできる脂漏性角化症
「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と言われてもピンとこないかもしれませんが、いわゆる「老人性イボ」のことです。顔や頭、体のあちこちに年令とともにできる茶色や黒のできもので、次第に大きくなったり、かゆくなったりすることもあります。脂漏性角化症の原因、予防法、治療で取れるのか、治療法にはどんな選択肢があるのかを解説します。<目次>
- 脂漏性角化症の特徴:平坦な茶色いシミから大きな盛り上がりまで
- 脂漏性角化症(老人性イボ)の画像・症例写真
- 脂漏性角化症の原因:加齢・遺伝による体質・日光の影響なども?
- 脂漏性角化症の好発部位は顔・頭……20~30代の若年層にも
- 脂漏性角化症の診断法・ほくろとの違い
- 脂漏性角化症は治療不要・見た目が気になるなら取ることも可能
- 脂漏性角化症の治療法:手術、液体窒素など 自分で取る塗り薬にはリスクも
- 脂漏性角化症が自然に取れることはあるか
- 脂漏性角化症の予防法
- 老人性イボ「脂漏性角化症」まとめ
脂漏性角化症の特徴:平坦な茶色いシミから大きな盛り上がりまで
「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と難しい名前を聞くと、稀で難しい病気を思い浮かべてしまうかもしれませんが、いわゆる「老人性イボ」のことで、年齢が上がると誰しも経験する茶色や黒いできものです。顔や頭にできることが多く、最初は平坦で茶色いシミのように見えることが多いですが、時間が経つと盛り上がって拡大します。見え方は様々で、ウイルス性のいぼのように表面ががさがさしていることもありますし、つるっとしていることもあります。盛り上がりが強い場合もあれば、ほぼ平坦なこともあります。通常は無症状ですが、炎症を起こして赤くなり、かゆみを訴えて皮膚科を受診される方もいます。
脂漏性角化症(老人性イボ)の画像・症例写真
■頭にできた脂漏性角化症(老人性イボ)の症例画像■おなかにできた脂漏性角化症(老人性イボ)の症例画像
■薄い色、赤っぽい色の脂漏性角化症(老人性イボ)の症例画像
■おなかにできた複数の脂漏性角化症(老人性イボ)
■顔にできた脂漏性角化症(老人性イボ)
脂漏性角化症の原因:加齢・遺伝による体質・日光の影響なども?
脂漏性角化症は年令とともに増えていきますので、加齢は原因の一つです。同じ年齢でも脂漏性角化症が多発している人、ほとんどない人はわかれますので、遺伝による体質でできやすい、できにくいがあります。顔や頭にできやすいので、日光の影響はあると言われています。ただし、あまり日光の当たらないお腹や背中に脂漏性角化症が多発することもあるので、必ずしも日光だけが原因ではありません。
脂漏性角化症の好発部位は顔・頭……20~30代の若年層にも
顔や頭にできることが多いです。20代~30代で若い方でも目の外側からこめかみのあたりに小型の脂漏性角化症がたくさんできている方は多く見かけます。年齢が上がってくると大型になり、ほほ、おでこや頭皮に大型のがさがさした脂漏性角化症が多発している方が皮膚科を受診されます。他にも首、胸、おなか、背中、腕や脚とどこにでもできます。体質的にできやすい方、できにくい方はいて、場合によっては100以上多発していることも稀ではありません。
脂漏性角化症の診断法・ほくろとの違い
まずは見た目で判断がつきます。脂漏性角化症の表面はがさがさしていて、茶色や黒で均一な色をしています。ほくろも同じように茶色や黒ですが、表面はつるっとしているところが脂漏性角化症と違うところです。ほくろは触るとやわらかいことも多いですが、脂漏性角化症は固いできものです。外見だけでは皮膚科医にもほかの診断と紛らわしい場合があります。そのような場合には「ダーモスコピー」という皮膚科にある拡大鏡を使った診断法が活躍します。脂漏性角化症では特徴的なイメージが見えることが多いので、かなりの確率で診断をつけることができます。
ダーモスコピーでも診断がはっきりしない場合があります。場合によっては基底細胞癌や悪性黒色腫(メラノーマ)といった皮膚がんと区別がつきにくい場合もありますので、そのような場合には麻酔をかけて手術でとって顕微鏡の検査(病理検査)で診断をつけます。
脂漏性角化症は治療不要・見た目が気になるなら取ることも可能
脂漏性角化症は見た目以外には悪さはしませんので、医学的には必ずしも治療の必要性はありません。ただ、皮膚がんなど他のできものと区別がつきにくい場合は手術で切除して正確な診断を付ける必要があります。顔や体にできた脂漏性角化症はかなり目立ちますので、多くの方が見た目を気にして治療を希望されます。ほくろと比べてもできものの深さが浅く、きずを少なく治療することのできる脂漏性角化症では、見た目が気になる場合は積極的に治療を行うとよいでしょう。
脂漏性角化症を自分で取る方法は? 市販塗り薬にはリスクも
脂漏性角化症を自分で取ろうとする方もいらっしゃいます。イボ用の塗り薬を自宅で試したものの取れなかったと皮膚科を受診されるケースですが、塗り薬で炎症を起こして赤く痒くなり、結局イボも取れないことも多いのでおすすめしません。脂漏性角化症の治療法:手術、液体窒素など
選択肢には大きく分けてラジオ波メス、炭酸ガスレーザー、手術、液体窒素が挙げられます。いずれも皮膚科のクリニックで取り扱っていることが多いですので、ウェブをチェックしてみてください。脂漏性角化症はほくろと違い、浅いところにある皮膚のできものです。そのため、ラジオ波メスや炭酸ガスレーザーで削りとることで、一度浅い傷にはなりますがきれいに取り切ることができます。浅い傷になったあとは1~2週間できれいに皮膚が表面にはり、ピンク色の皮膚になります。その後、2~3ヶ月で元の皮膚の色に徐々に戻っていきます。半年もすればあとがほとんどめだたないことが多いです。
中高年の男女でよくみられる、多発する比較的大型の脂漏性角化症。最初はしみのように平らだが、次第に盛り上がってくる。しみのように平坦な場合はQスイッチレーザー、盛り上がりがある場合にはラジオ波メスや炭酸ガスレーザーを使えばきれいに除去することができる。
ウイルス性イボの治療によく使われる冷凍凝固という液体窒素でできものを凍らせる治療も脂漏性角化症の治療に使うことがあります。小型の脂漏性角化症であればこの方法もやりかたによっては効果的ですが、大きな脂漏性角化症では治療に時間がかかり、黒っぽい色が残りやすいことから、あまりおすすめはできません。
ラジオ波メスや炭酸ガスレーザーを用いないメスで切って縫う治療も選択肢にはなりますが、皮膚がんを疑った場合以外はラジオ波メスや炭酸ガスレーザーを用いた場合よりも切除後のきずが目立ちやすいので、見た目を治療する場合には第一選択にはなりにくいです。
脂漏性角化症が自然に取れることはあるか
脂漏性角化症は炎症を起こして赤くなることがあり、そのままかさぶたのようになり取れることが稀にあります。ただし稀ですので、自然に取れることはあまり期待しない方がいいです。脂漏性角化症の予防法
脂漏性角化症は平坦なしみが盛り上がってできてくる場合が多いですので、平坦なしみのうちにレーザーで治療できていれば将来的に盛り上がって脂漏性角化症になるリスクを減らすことはできます。脂漏性角化症ができる原因の一つとして日光の影響がありますので、毎日日焼け止めを塗ることも有効です。
それでも体質的に脂漏性角化症ができやすい方では年齢ともに増えてしまいますので、治療を検討する必要がでてきます。
老人性イボ「脂漏性角化症」まとめ
脂漏性角化症は良性のできものですが、ラジオ波メスや炭酸ガスレーザーで削り取ることによりきれいに除去することができます。顔に多くできるので見た目が気になる方は皮膚科に気軽にご相談ください。多くの場合は大きなキズなく取り切ることができます。脂漏性角化症か他のできものかわからず気になっているときにもダーモスコピーや病理検査で診断をつけられますので皮膚科専門医までご相談ください。【関連記事】