メルセデス・ベンツ/メルセデス・ベンツの車種情報・試乗レポート

40年ぶりの“一新”、メルセデス・ベンツGクラスに試乗

79年の登場から変わらぬ魅力で人気のGクラスが、遂に新しくなった。新設計のラダーフレームなど中身を一新させつつ、伝統のエクステリアを頑なに守った“マイナーチェンジ”。「洗練された乗り味を提供する昔ながらのクロカンモデル」の走りとは?

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

見た目が変わらないことにこだわった

メルセデスAMG G63

1979年の登場以来、基本スタイルを変えずにアップデートを続けてきたGクラス。遂に2018年の“マイナーチェンジ”で新型へと進化を果たした。価格はG550が1562万円、AMG G63は2035万円


Gクラスがフルモデルチェンジした! と言ってはみたものの、名目上はフェイスリフト、マイナーチェンジだ、というから面白い。なるほど、スペック表の型式名を見れば、1983年以来となるW463を引き継いでいた。
 
確かにパッと見た目、エクステリアデザインはほとんど変わっていないように見える。今、Gクラスに乗っているという人かよほどのマニア以外、新型が一台だけポツリと置いてあったとして、誰もそうだとは気づかないはず。それほど、デザインを守ることに固執した。
 
メルセデスAMG G63

助手席のグラブハンドルなどやディファレンシャルロックを操作する3つのスイッチなどはそのままに、最新メルセデスデザインへと進化したインテリア。ステアリングはボール&ナット式から電動機械式ラック&ピニオン式に変更されている


けれども実際には、車幅ははっきりと広がっており、インテリアは最新のメルセデスモードに全面刷新され、同形式のラダーフレーム構造を踏襲しつつもその設計は完全に新しいものとなった。そのほか、フロントサスペンションではついにリジッド+コイルを諦めてダブルウィッシュボーン式を採用している。パワートレーンを除く重要なパートをすべて作り替えたのだから、普通はフルモデルチェンジと言ってさしつかえないところを、あえて、型式継続とした。おそらくそこには、新型はゲレンデヴァーゲンの基本コンセプトを変えることなくひたすら進化を続けてきた結果でしかないという、いかにもダイムラー・メルセデスらしい“こだわり”ではなかったか。むしろ、コンセプトを変えることで進化としてきた自動車界では、まったくもって稀有な存在だと言えるし、それだけ、ゲレンデヴァーゲン=Gクラスの基本コンセプトが素晴らしかったということだろう。
 
それでも、旧型と全く同じものもあるらしい。それは、ヘッドライトのウォッシャーノズルと、ドアハンドル、そしてスペアタイヤカバー。ここまで同じデザインとしたのに、継続使用された部位がたったのそれだけだったの? と思ってしまった。ちなみに、旧型では完全に平板であったフロントウィンドウも、そのまま使われているように見えるが、実は少しだけ湾曲されている。CD値を改善して、風きり音を失くすため、らしい。幅が広がったため、無視できなくなったのだろう。
 
メルセデスAMG G63

外観はデザインを踏襲、プロテクションモールやテールゲート外側のスペアタイヤなどが採用された。ボディサイズは全長4873mm×全幅1984mm×全高1966mm、ホイールベース2890mm(AMG G63)。全幅は117mm(G550は64mm)広げられている


ではナゼ、今回、このように“改良”しなければならなかったのだろうか。答は、燃費や排ガス、安全性といった面での新規制への対応に迫られたから、である。さらに、メルセデスの誇る各種安全機能を採りいれると同時に、待ち望まれたオンロードでの快適性を大幅に向上させるべく、170kgもの軽量化や、ラダーフレームの捻り剛性アップなどを実施している。もちろん、Gクラスのレゾンデートルであるオフロード走破性をキープしたままに。
 
日本市場へは、まず、ガソリンエンジン搭載の2グレード、G550とAMG63が導入されることになった。Gといえば今やディーゼルだが、しばしお待ちを。
メルセデスAMG G63

後席シートは60:40の分割可倒式を採用、ラゲージ容量は667~1941L

 

洗練されたハンドリングと乗り心地のよさ

メルセデスAMG  G63

オフロード走行に適したラダーフレームは新設計され、剛性や安全性が向上した。サスペンションも専用に新開発、フロントはダブルウィッシュボーン独立懸架、リアはリジットアクスルを組み合わせた


いずれのグレードも乗ってみて特筆すべき点というと、信じられないくらいに扱い易くなっていることだ。運転している女性を見つけると、あんなに運転しづらいクルマを乗り回せるなんて、どんなに逞しいんだろう! と思ってしまうほど、以前のGクラスは他のSUVに比べてクセが強く、有り体に言って乗りづらいシロモノだった。
 
メルセデスAMG  G63

ドライブモードはコンフォート/スポーツ/エコ/インディビジュアルに加え、悪路走破用のGモードを追加。Gモードはディファレンシャルロック作動やローレンジ(低速ギア)の選択で有効となる


それが、どうだ。乗り心地の良さ、安定感、ハンドルの切り易さ、しっかりとしたボディなど、一度新型を体験してしまうと、全ての面でもう旧型には戻れないと思ってしまうほど、洗練されている。新型に乗ってから旧型に触れると、どこかが壊れているに違いない、と思ってしまった。
 
街乗りで50km/h以下の速度域では、いかにもクロカンSUVらしく、タッパの高いタイヤを履いている印象が如実にあって、そこだけちょっと懐かしく思えたものだが、それ以外はまるで別物だ。これなら、長距離ドライブも全く問題なさそう。
 
あまりにクルマが上出来過ぎて、ハイパワーなAMG63では、速く走れ過ぎて、怖い。旧型も速かったけれど、どこかに、老体をむち打つような真似はできないという自制心があった。新型ではそれがまるでないので、高性能を丸ごと、受け止めなければならなくなって、逆に、怖かったのだ。
 
メルセデス・ベンツG550

420ps/610Nmを発生する4LのV8ツインターボを搭載したG550


その点、550の方が、乗り味も幾分かマイルド。それでも必要にして十分だけれど、まだしも新型Gクラスの、洗練された乗り味を提供する昔ながらのクロカンモデルというキャラクターに似合っているとは思う。もちろん、ディーゼルエンジン搭載グレードが、大本命であることには違いはないのだが。
メルセデスAMG G63

レーダーセーフティパッケージをはじめとする、メルセデスの先進安全快適装備も充実。片側84個のLEDを個別制御することで、より広い範囲を正確に明るくするマルチビームLEDヘッドライトも備えた


走り出した瞬間に聞こえてくる、“ガチャ~ン”という盛大なドアロック音と、平たい(そう見える)ウィンドウ越しの景色以外に、ドライブしていて“古さ”を感じることはまるでない。見た目にほとんど変わらず、オフロード性能も保った新型が登場した以上、今さら旧型にこだわる理由なんて、まるでなくなった。あるとすれば、全幅の狭さくらいか。それでも尚、旧式にこだわる人もいるだろうけれど。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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