今回は、「株」と「天気」の意外な関係を示す、さまざまな研究事例をご紹介します。
事例1:気温が高くなると、株価が上がりづらい
Melanie CaoとJason Weiの調査結果によると、「気温が高くなると、株価が上がりづらい」ことが分かっています(1)。事実、日本株市場は夏の時期、特に7月から10月にかけて上がりづらい傾向があります。逆に、冬になって気温が下がる11月から4月にかけて、日本株市場は上昇しやすい傾向があります。気温が上がれば上がるほど、相場が上昇しづらくなるのかもしれません。株のプロに「今は買い時ですか?」なんて話を聞くくらいなら、気象予報士に「明日の最高気温は何度ですか?」と尋ねた方が、よっぽど先行きを見通すことができそうです。
事例2:雲の量が少ないほど、株価が上がりやすい
筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授の加藤英明さんの調査によると、「晴れの日ほど株価が上がりやすい」ことが分かっています(2)。同氏はこの傾向のことを「晴天効果」と表現していて、天気がよいほど人の感情が高ぶり、株を買いやすいのではないかという話をしています。ちなみに、「天気がよいと気分がよくなる」というのは心理学的にも、おおよそ正しい考察です。なぜなら、実際に「日照時間が短い国ほど鬱病の発症確率が高まる」という事例も報告されているからです。
また、心理学的には「気分一致効果」というヒトの行動特性も発見されています。気分一致効果とは、「ヒトは、気分がよいときにはポジティブになり、気分が悪いときには、ネガティブになる」という傾向があります。
よって、「天気がよい→気分がよくなる→株を買いたくなる」や「天気が悪い→気分が暗くなる→株を買いたくなくなる」といった行動特性が起きても、おかしくないのではないかと思います。
事例3:新月の前後ほど株価が上がりやすい
さらに面白い研究としては、「月の満ち欠けが株価に影響を与える」というものがあります。Dichevによると、新月の前後は満月の前後と比べて、株価が上がりやすい傾向があるのだとか(3)。個人的には、このアノマリーは正直「信憑性としてはどうなんだろうか?」と思うのですが、それでも、月齢は人間の心理状態に、そこそこ影響を与えているようです。立正大学の地球環境科学部の福岡義隆さんによると、死亡事故に至る大事故は「満月」と「新月」の日に集中しているのだとか(4)。
こういった点も踏まえると、存外「月の満ち欠けも相場の動きに影響をもたらしていても、おかしくないんじゃない?」という気がしています。
まとめ
「天気と株には、関係があるんだよ」なんて話をされると、「うわ、胡散臭い!」という印象を抱くのが普通だと思います。実際、私もそうでした。しかし、詳しく調べてみると、天気と人間の心理には、そこそこの相関関係が見られているようですから、信憑性がないと言い切れないのが実情です。「株のプロの話を聞くと損をする」というエビデンスは沢山あります。ですから、「プロの話を聞くくらいなら、天気とか月を観察している方が、よっぽど役に立つんじゃないか?」と思っているところです。
「これから、どうやって株を買おうかな?」と悩んでいる方は、プロの話を聞く前に、テレビをつけ、天気予報を見ることが、利益を出すための近道になるかもしれませんよ。
【参考文献】
(1) 論文:Stock Market Returns: A Note on Temperature Anomaly(2005)
(2) 書籍:『天気と株価の不思議な関係』(加藤英明、2004)
(3) 論文:Lunar Cyvle Effects in Stock Returns(Ilia D. Dichev, Troy D. Janes)
(4) 論文:気象・季節の感情障害への影響(福岡義隆、2003)
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