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人生100年時代。選ぶなら生活コストが低い町

人生100年時代。老後破産を心配する方が増えています。まず気になるのは生活費です。定年が延長されるなか、70歳まで働き続けて得た蓄えと年金で、老後30年間の暮らしが賄えるのか、誰しもが不安に思っています。

大久保 恭子

執筆者:大久保 恭子

これからの家族と住まいガイド

70歳まで働き続けて得た蓄えと年金で、老後30年間のお金が足りる?

人生100年時代。老後破産を心配する方が増えています。まず気になるのは生活費です。定年が延長されるなか、70歳まで働き続けて得た蓄えと年金で、老後30年間の暮らしが賄えるのか、誰しもが不安に思っています。
老後の生活

老後の生活に不安はありますか?

 

夫婦2人にかかる30年間の生活費は1億80万円

世帯主が70歳以上の、世帯平均貯蓄額は2,389万円(平成29年版高齢社会白書)です。また夫婦二人の年金額の平均は1カ月当たり約22万円(厚労省が発表しているモデル世帯における29年度の年金額)。一方、実際にかかる生活費は1か月あたり28万円(「家計の金融行動に関する世論調査(平成29年)」のアンケート回答より)。
 
とすると、夫婦(同じ年齢として計算)が自宅で病気もせず、介護も受けずに、元気に暮らしているとすれば、100歳までの30年間にかかる生活費総額は1億80万円。年金総額は7,920万円ですから、年金では賄えない赤字分の2,160万円を貯蓄から取り崩していくことになります。貯蓄残高は、220万円。ぎりぎりセーフです。
 

物価の安い町に住んで長生きコストを抑える

こうした長生きコストに備えるなら、日々の生活費をできるだけ低く抑える、というのが、誰にでもできる生活防衛策です。一番効果的なのは、物価の安いところへの住み替えです。
 
地方の県庁所在地の物価は、東京を100にすると、概ね92~95程度の安さです(フィデリティ退職・投資教育研究所)。特に安いのは、秋田市91.9、奈良市92.0、前橋市92.1といったところです。家賃は東京100に対して40~50程度の安さです。とりわけ安いのは松山市37.5、大分市37.8、宮崎市40.5です。
 
思い切って、地方への移住を考えてみるのもひとつの対策といえるでしょう。
 
また、物価も家賃も高い東京ですが、地域によって状況は異なります。私の知人は65歳のときに、長年住んでいた中央区から江戸川区へ住み替えました。安くておいしい野菜や魚、お惣菜のお店がある商店街が充実していて気楽で生活しやすい。生活費もかなり抑えることができたと、言っています。東京に限らず、名古屋、大阪などの広域な大都市であれば、その圏内でより安い地域への住み替えというのも考えられます。
 
では安いところへ住み替えれば、それで万全でしょうか?私は、それだけでは備え不足だと考えます。
 

老後破産は病気や介護が原因

前述の家計収支は、あくまでも夫婦で元気に30年間暮らすというのが、前提です。が、現実には、100歳まで病気も介護も不要で暮らせる方は稀でしょう。いずれ、夫(妻)が、病気になって入院する、介護が必要になり施設へ入所するなど、暮らしに大きな変化が訪れます。治療費や入所費用が加われば、たちまち生活費は大幅に上昇し、老後破産に直面することになります。
 
参考までに、必要な介護費用をシミュレーションしてみましょう。東京都のデータによると要介護2になるのは男性82.5歳、女性は85.6歳。要介護2からの平均余命は80歳とすると男性6年、女性8年程度となります。
 
夫が82歳で要介護2になり民間施設へ入所したと想定します。施設は月額25万円かかります。妻は自宅で生活するので、別に月15万円ほどの生活費がかかる(家計調査より)ので、元気なうち28万円で済んだ生活費が40万円に増えます。
 
そしてこの妻も、86歳で要介護2となり同じように介護施設に入所すると生活費は月額50万円に跳ね上がります。夫が施設に入って6年後に死亡すると、妻がもらえる遺族年金の額は約15万円程度に下がってしまいます。そして8年後に亡くなったとすると、かかる生活費は次のようになります。
 
*計算を分かりやすくするために、夫と妻は同じ年齢、夫82歳入所、88歳死亡。妻86歳入所、94歳死亡とします。
 
① かかる生活費 9,000万円
・夫婦が元気に自宅暮らし(70歳~81歳)
28万円×12か月×11年=3,600万円
・夫が要介護2で施設、妻は自宅暮らし(82~86歳)
(25万円+15万円)×12か月×5年=2,400万円
・夫も妻も施設暮らし(87~88歳)
50万円×12か月×2年=1,200万円
・夫死亡、妻は施設暮らし(89~94歳)
25万円×12か月×6年=1,800万円
・合計9,000万円
 
② 年金収入 6,096万円
・70~88歳
22万円×12か月×19年=5,016万円
・夫死亡 89~94歳 
15万円×12か月×6年=1,080万円
・合計 6,096万円
③ 預貯金 2,389万円
④ 収支 マイナス515万円

 
「②+③-①=6,096万円+2,389万円-9,000万円=マイナス515万円」このように収支はマイナスとなります。このシミュレーションでは、病気による治療費支出は計上していませんので、現実にはより赤字は膨らむことが予想されます。老後破産の危険は、実は病気や介護の問題につきるようです。
 
では、病気や介護の問題はどうすれば解決できるのでしょうか?
 

最期まで自宅を貫けば老後破産は避けられる

私は、最期まで自宅で暮すという覚悟を決め、そのために50代、60代から準備する。準備とは家事、人付き合い、運動の3つの習慣形成です。こちらについては私の記事のバックナンバーをご覧ください。
 
3つの習慣を実践することにより、心身機能の低下をできるだけ遅らせ、病気にかからない、介護を必要としない暮らしを持続させることができます。そうすれば、治療費、入所費がかさむことはありません。また70代以上の持ち家率は80パーセントを超えているので、自宅で暮しつづけている限りは、多くの人は住居費がかからないでしょう。
 
老後破産の防衛策は生活コストの低いところで暮らす。そのうえで、最期まで自宅で自立して暮らすための3つの習慣の実践による老化の進行抑制だと、考えます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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