お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

47歳貯金270万円。仕事がきつく早期退職を考えています(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、仕事がハードワークのため、早期退職、早期リタイアを希望する47歳の会社員女性。そのための資金の備え、その方法や安心できる金額等について、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 早期退職なら55歳が資金的にギリギリ

早期退職のご相談ですので、相談者のえもんさんの退職の年齢によってどうキャッシュフローが異なってくるか、具体的に試算をしながら、考えてみましょう。
 
まずは3年後、50歳での早期退職の場合。毎月の貯蓄(iDeCoを含む)が13万5000円ですから、年間162万円。ボーナスの貯蓄分も含め、3年間で530万円ほど。今ある貯蓄と合わせて770万円ですから、退職金を仮に700万円とすれば、退職時の手持ち資金は1470万円となります。
 
次に、退職後の生活費ですが、今とほぼ変わらないとすると、現在の毎月の生活費に固定資産税や車検などクルマのコストも月割りで加算し、さらに健康保険料や住民税、国民年金の保険料も加味しなくてはなりません。少なくとも月18万円にはなるでしょう。だとすれば、退職後、フルリタイアなら8年目、57歳のときに貯蓄が底をつきます。
 
では、セミリタイアとして、えもんさんが言われているように、月14万円の収入(社会保険料や税金を差し引いた手取額)を得るとしたらどうか。このケースでは、不足額は年間30万円程度。65歳まで働くとすると、15年間で450万円ですから、65歳の時点で手持ち資金は約1000万円に減っています。

公的年金の受給額は断定できませんが、おそらく月6万~7万円は生活費が不足すると考えられます。結果、76歳でやはり貯蓄がなくなります。65歳以降も働けば、資金が減るスピードは落ちますが、それでも90歳まで生きると考えれば、資金的リスクはあまりに大きいと言わざるを得ません。
 
対して、55歳退職の場合はどうか。退職時の手持ち資金は2400万~2500万円。退職後、フルリタイアとなれば、65歳の時点で手持ち資金は200万~300万円に減っています。老後資金としては明らかに不足しています。

一方、退職後、同様に月14万円(手取額)の収入を得続けることで、65歳の時点で手持ち資金はまだ2000万円超。年金の不足額を月6万円とすれば、90歳の時点で手持ち資金はまだ200万円程度残ることになります。長生きリスクや、病気・介護の可能性も考慮すれば、額は不足気味ですが、65歳以降もアルバイト等で収入を得れば、老後資金としては足りる可能性もあります。
 

アドバイス2 60歳まで勤務ならフルリタイアは可能

最後に60歳まで勤務した場合。退職時の手持ち資金は3500万円。以降、フルリタイアすると、公的年金支給までの5年間でかかる生活費は1000万円程度と考えられますので、65歳のとき手持ち資金は2500万円。そして、90歳の時点でまだ1000万円が残ることになりますので、老後資金としては「足りる」と考えていいでしょう。つまり、60歳まで勤務すれば、その後はフルリタイアも可能ということです。
 
結論を言えば、資金的には退職後フルリタイアを前提に60歳まで勤務するという選択が望ましいということになります。現状で退職金、公的年金とも最大額を手にできることと、60歳以降、アルバイト程度の働き方でより資金的に余裕を得られるという手段も選べるからです。

一方、早期退職を選択した場合、必要な資金を得るだけの新たな仕事を得られるかが、まず不確定。相続で資金を手にする可能性もありますが、その時期は不明ですし、その間、手持ち資金がなければ、気持ち的にもかなり不安になるはずです。
 

アドバイス3 ボーナスはあえて支出に回すのも一案

ただし、問題は60歳まで働くことが可能かどうか。そもそも、ハードワークやストレス等で心身が疲弊し、10年以上も通院されているわけです。幸い、最近異動があり、職場環境はだいぶ改善されたとのことですが、定年までこの状態が継続されるかどうかはわかりません。

したがって、無理に頑張るのではなく、あくまで設定は60歳退職に置き、きびしいようなら55歳でも57歳でも、早期退職の余地を自分の中に残しておく方がいいと思います。
 
それと、現時点では、えもんさんの貯蓄率は手取り収入の45%ほど。相当な高さです。もしその維持が大変であれば、ボーナスだけは支出してもいいのでは。趣味に使う、外食をする、あるいは旅行でも構いません。日々の生活で楽しむ部分、遊びの部分があることで、気持ちのバランスが取れることは往々にあります。

60歳までに支給額が変わらなければ、13年間で手にするボーナスは195万円。60歳時点での手持ち資金が3500万円から3300万円に減る程度です。60歳まで勤務するならば、さほど大きな影響はないでしょう。
 
投資については、昇給等で余裕資金ができたら、「つみたてNISA」を始めたいとのこと。いいと思います。投資の基本は分散ですが、具体的な商品選びは、楽しみながら実践で学んでいくというスタンスでいいのでは。定年までまだ時間はあります。また、それに関連して、現在のiDeCoの20%が「定期」になっていますが、別途、貯蓄商品でも積立は十分されています。iDeCoは100%投資でいいでしょう。
 
最後に保険について。現在加入の終身保険はその必要性がありません。死亡保障は不要ですし、お葬式代なら、貯蓄から出せばいい。予定利率は不明ですが、さほど高いとは思えません。払済保険にして、浮いた保険料の月1万円は、貯蓄に回す方が合理的です。
 

相談者「えもん」さんから寄せられた感想

この度は貴重な機会をいただきありがとうございました。自身の生活、財布の見直し、未来を考えるいい機会でした。早期リタイアは厳しいという現実を思い知りましたが、具体性が出たことで、60歳を人生の節目にしたいという気持ちです。ありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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