食と健康

時間栄養学とは…量・内容だけでなく食事時間も重視

【管理栄養士が解説】 食事や栄養に関しては、「どんなものをどれくらい食べるか」を考える人が多いかもしれません。最近広がってきた「時間栄養学」では、同じ食事内容でも、どの時間帯にどれくらいの時間をかけて食べるのかが、健康に影響を与えると考えられています。より健康に過ごすために、理想的な食事の「時間」について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

「時間栄養学」とは

時間栄養学とは

何をどれくらい食べるかだけでなく、どの時間にどれくらいの時間をかけて食べるかを考える「時間栄養学」。同じものを食べる場合でも健康に与える影響が変わってくるようです


人間を始めとする動植物は「体内時計」を上手に使って生活しています。動植物の体内時計は、「オジギソウ」が光によってではなく、時間によって開いたり閉じたりすることが分かったことから発見されました。2017年には体内時計を生み出す遺伝子機構の発見がノーベル医学賞を受賞しましたが、このルーツもここにあります。

そして、私たちは頭では1日が24時間であると理解していますが、体は25時間くらいを1日と感じています。多くの人にとって、夜更かしは楽にできても、早起きはつらいと感じるのはこのためです。これを24時間にリセットし寝起きをスッキリさせるためには朝の光を浴びることが大切だと言われています。体の外からの刺激はすでにご存じの通り「光」が効果的ですが、体内からの刺激は「食事」がもっとも有効です。この考え方から生まれたのが「時間栄養学」です。

これまでの栄養学では「何をどれだけ食べるか」が大切と考えられてきましたが、「時間」を考慮することでさらに食事の健康効果がアップすることが分かってきています。「時間栄養学」では「食事の時間」「食事にかける時間」「食べる順番」が重要です。この3つのポイントについて、詳しく解説します。
 

より健康に良い食事時間・食事にかける時間・食べる順番は?

■食事の時間……1日3回同じ時間に。「おやつの時間」も決めることが大切
食事は1日3回、毎日、同じ時間に食べるようにします。仕事の都合で昼食と夕食の時間が長い場合には、おやつを食べてもよいですが、おやつを食べる場合はその時間も決めて、決めた時間以外は食べないようにすることが大切です。

寝る前に食べてしまったり、夜食を取ったりすると、エネルギーが活動に利用されず脂肪として蓄積されてしまいます。食事はできるだけ早い時間に終わらせて、空腹で耐えられないと感じる前に就寝するようにしたいものです。そのため「18時までに食事を」と言われることもありますが、現実では多くの人が18時前後までは仕事をしていることが多いため、18時に食事を食べることは難しいでしょう。18時の食事は不可能だからと食生活の改善をあきらめるのではなく、まずはどんなに遅くなっても就寝の2時間前までには食事を食べ終われるように配慮してみましょう。

■食事にかける時間……食事時間の長さではなく「噛む」時間を長く
食事は「ゆっくり食べる」とよいと言われています。「ゆっくり」の意味は、「食卓に座っている時間を長くしましょう」ではありません。「一口ずつ、しっかり噛んで食べましょう」です。

一口ずつ、しっかり噛んでいると時間がかかります。噛むこと以外に食事に時間がかかる理由として、「外食でコース料理などが多く、食べ終わってから次の料理が運ばれてくるまでに間がある」「話が弾み、食べ物を口に運んでいない」といったことも考えられます。それらの時間は心の栄養としてはとても有意義な時間だと思いますが、体の栄養には「噛む回数を増やすための時間をたっぷりとる」ことが重要です。

■食べる順番……最初の一口目はおかずから
テレビでも「野菜から食べ始めること」と盛んに報道されているので、野菜を最初に食べればいいんだな、と思っている人も少なくないと思います。野菜を最初に食べることは、間違いではありませんが、実は野菜からじゃなくても大丈夫。血糖値を上げるのは糖質だけなので、たんぱく質や脂質が多い食品を食べても血糖値はさほど大きく上昇しないのです。つまり、炭水化物や糖質含量の少ないものから食べればよいというわけなのです。だから、野菜のおかずだけでなく、煮魚、焼き魚、焼肉など、肉や魚のおかずから食べ始めてもOK。そのため現在の「食べ順ダイエット」は「ベジファースト」から炭水化物や糖質の多い食品を最後に食べる「カーボラスト」の考え方にシフトしてきています。ただ、カーボラストを完璧に実行しようとするとおかずを先に食べ、最後に味の薄い米飯やパンを食べることになりますので、味覚面からは実行し辛い方法だと思います。そこで、最初の一口目を「おかずから食べる」というのが、実行しやすい方法になるのではないかと思います。
 

できるところから自然の「時間」のリズムを取り入れることが大切

大昔は人間も明るい昼間のうちに活動して、暗くなると眠るという生活を送っていました。長い間、自然に昼と夜を上手に使い分けて生活していたのです。しかし近年は電気の発達によって昼夜問わずに長時間の活動が可能になりました。「時間を有効活用する」ことができるようになったわけですが、これに伴って、人工的な時間ばかりを気にしてしまい、太陽の光とともに生活することの大切さを忘れかけているようにも思います。

「時間」を使った研究は「時間栄養学」だけではなく、「時間医学」「時間睡眠学」「時間運動学」など様々です。いずれも「時間」に注目して考えることで、太陽の光と共生することの大切さを科学で証明しています。これらの研究から、昔の人のいわゆる生活の知恵の科学的根拠がわかり、その素晴らしさが改めて実感できることも多々あります。

今回ご紹介した「時間栄養学」の実践方法も、特別に目新しいものはひとつもありません。古くから健康によいと言われてきた方法ばかりだと思います。都会で暮らしていても、雨風や太陽の光などの自然は届いています。できるところから少しでも自然と共生して、自然にある「時間」のリズムを取り入れていくことが、よりよい健康的な生活につながっていくのです。
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