柴犬はどんな犬? 歴史や性格・特徴、寿命などを解説

日本犬の中でも小型の柴犬は広く一般家庭に馴染んだ犬種であり、古い歴史をもつ日本固有の犬です。そんな柴犬とは、どんな犬なのでしょうか。その歴史や気質、毛色、サイズ、や寿命、体の特徴、飼育ポイント、気をつけた病気など基本情報をお伝えします。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

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柴犬はどんな犬?歴史や性格・特徴、寿命

柴犬はどんな犬?歴史や性格・特徴、寿命などを解説

これまで貝塚から出土している犬の骨は、サイズ的に柴犬に匹敵する小型のものが多いという。

「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と言ったら、まさに柴犬のことでしょう。私たちには馴染みの深い柴犬とは、どんな犬なのでしょうか。
 
<目次>
 

柴犬の歴史

縄文時代や古墳時代のものとして出土した犬の土偶や埴輪を見ると、立ち耳で、しっぽは巻尾または差尾であり、現代の日本犬の姿とそれほど大きくは変わっていないことが想像できますが、柴犬との直接的な関係は定かではありません。
 
ただ、これまで古代の貝塚から発見されている犬の骨は、体高が37cm~50cm程度のものが多い中、特に小型のものが多いそうで、柴犬の体高に匹敵する犬が確かに存在していたということでしょう。
 
これは人でのことになりますが、日本人(アイヌの人・琉球の人・本土の人)のゲノム解析の結果では、アイヌの人と琉球の人は遺伝子的に近い関係にあり、本土の人は韓国の人と同じ系統集団に属することが発表されています(#4)。実は、日本犬についても似たようなことが言われているのです。
 
日本犬8犬種(*)と日本周辺のアジア犬種、そして西洋犬種の約4,000頭から血液採取をして遺伝子解析を行った研究によると、北海道犬(アイヌ犬)と琉球犬は遺伝子的に近く、本州から四国、九州にかけての本土の日本犬は北方から朝鮮半島を経て流入した遺伝子の存在が見られるとのことです(#5)。
 
このことから、縄文人がもたらした古い型の犬が南方から琉球を経て北海道に至るまで広がっていたところに、後に朝鮮半島を経てやって来た弥生人や古墳時代の人が連れて来た(ついてきた?)犬が入り込み、互いが交雑することで、多くの日本犬の原型がつくり上げられていったのではないか。その一方で、北海道の犬や琉球の犬では、あまり交雑が行われなかったということなのではないか、と考えられてきました(#5)。
 
人がいるところには犬がいる。だからこそ、互いの歴史や遺伝子情報が重なるというのはたいへん興味深いことですね。
泳ぐ柴犬

猟犬として鳥猟に使う際、山深い場所においては、ポインターやセッターより有能だという。

こうして長い年月を経た柴犬は、主に群馬県から島根県あたりにかけての本州中央部山岳地帯で、キジやヤマドリなどの鳥類や、ウサギ、タヌキ、イタチなどの小動物を狩る猟犬として重宝されました。
 
まだ交通が不便な時代には産地ごとに味わいのある犬が存在し、産地によって「信州柴(長野県)」「美濃柴(岐阜県)」「山陰柴(鳥取県・島根県)」などという呼称があり、信州柴は「川上犬」「木曽犬」「佐久の犬」とさらに細かい地名を冠した呼び方もある他、山陰柴は「石州犬」とも言われ、その他、「十国犬(群馬県)」と呼ばれる犬もいました。
 
しかし、明治時代の文明開化と共に洋犬熱が高まり、大正時代末期には日本犬の雑化も進んで、先行きが心配される状況に。それを憂えた人たちにより、日本犬の保存運動が始まったことで、昭和の初期には日本犬7犬種に対して国の天然記念物指定を受けるに至ったのです。この時、柴犬は1936年12月、6番目にその指定を受け、これを機に「柴犬」と犬名が統一されました。
 
ひとつ付け加えるとするなら、信州柴・美濃柴・山陰柴に注目した遺伝子解析の結果では、信州柴と美濃柴は同一の祖先から分化し、山陰柴はそれとは別の祖先から分化した可能性が示されたとしています(#7)。それが真実だとするなら、柴犬は私たちが思っている以上に多様な背景をもっているのかもしれませんね。ちなみに、現在、一般的によく見かける柴犬は主に信州柴が基礎になっていると言われています。
 
なお、かつては「芝犬」と表記されたこともあり、「しば」は小さいという意味からきているという説や、柴をくぐるのが上手だからという説、柴の赤い色からきているという説などいくつかありますが、はっきりとした語源はわかっていません。
 

柴犬のバラエティー 豆柴・小柴の定義とは……

柴犬-ストップ

同じ犬種ながら、実際にはいくつかのタイプが存在する。

現在、柴犬には少々タイプの異なる犬が存在します。縄文時代の犬のストップは浅く、弥生時代の犬になるとそれが深くなってくると言われますが、古来より日本にいた犬を理想として繁殖をする犬種保存団体系の柴犬はストップがないか、または浅く、口吻(マズル)もやや細長くて、体型的にも細身で引き締まった体つきをしています。
 
それに対し、別の保存団体系の柴犬はストップが深く、筋肉質ながら見た目がややころっとした印象を受けます。犬種保存団体は複数あるため、それぞれの団体の繁殖に対する考え方の違いが犬に表れているということでしょう。
 
また、昨今では豆柴・小柴というよりサイズの小さい柴犬について見聞きすることが多くなりましたが、柴犬として望ましい姿を崩すものとして認められないという意見がある一方で、柴犬には元々小さいサイズの犬もいたという意見がある中、一部にはたまたま小さく生まれた犬を豆柴と称したり、故意に小さくつくろうとしたりするケースもあるようで、少々混乱した状況にあると言えるでしょう。
 

柴犬・豆柴のサイズ(平均体重・体高)と平均寿命

柴犬

一緒に生活するにはほどよい大きさ。

体高:オス38cm~41cm メス35cm~38cm
体重:オス9kg~11kg メス7kg~9kg程度
平均寿命:13~15歳程度
 
豆柴と呼ばれる柴犬の場合は、これより6cm~13cmほど小さくなっています。
 
柴犬は長生きする個体が多い犬種としても知られています。実際はこれ以上に長生きする犬も多いことでしょう。
 

柴犬の毛色

柴犬-赤毛と黒毛

赤毛と黒毛の柴犬。どちらも日本の風景に似合う渋みのある色合いとなる。

圧倒的に多いのは赤毛(赤茶系)で、次いで黒毛、胡麻毛、白毛があります。赤毛は淡い色から紅赤、緋赤と言われる濃いものまであり、胡麻毛は赤毛に黒い差し毛がある(黒い毛が交じっている)ものを言います。黒毛はピアノブラックのような黒ではなく、鉄錆色のような渋みのある黒で、目の上に「四ツ目」と呼ばれる白または褐色の模様が出ることがあります。
柴犬-白毛

白毛は数が少ない。

日本犬では白毛以外、顎の下や首の下、胸、お腹、四肢、しっぽの裏側などが「裏白」と呼ばれる白や淡い色になることが多いですが、赤毛の場合、中には「赤一枚」と言って裏白にならず、全身が赤毛に包まれる犬もおり、特に美濃柴では、それが特長のひとつとされています。
  

柴犬の体の特徴

柴犬

動きは軽やかで俊敏。走る姿は疾風の如し。

耳は小さめで、やや前傾した三角形の立ち耳。目は三角形と表され、目じりがやや上がっています。口吻は中庸。被毛は二重毛(ダブルコート)で、表毛(オーバーコート)は硬く、真っ直ぐであり、下毛(アンダーコート)は密生しています。
 
しっぽはくるりと巻いた巻尾、もしくはしっぽを巻かずに背中の上方に上げた差尾で、差尾はその形状により、太刀尾、薙刀(なぎなた)尾などという呼び方も。信州柴系には巻尾が多く、山陰柴系には差尾が多いと言われます。
 
小型らしく動きは俊敏で、コンパクトな体の中に運動性能の高さを秘めています。
 

柴犬の気質・性格

柴犬-赤毛

美濃柴は性格的に人懐こい傾向にあるという話も。

日本犬は「一犬一主」と言われます。一人の飼い主、またその家族には心を許すものの、他人にはそっけないとされますが、昨今の柴犬は他人に対してもフレンドリーな犬が増えたように感じます。
 
普段は落ち着きがありながら、事あらば敢然として行動に出るのは日本犬に共通するところで、小型ながら気迫を感じさせる犬です。その反面、可愛らしい面ももちあわせており、そのギャップがファンを惹きつけるのかもしれません。
 

柴犬の飼い主に向く人

柴犬

自分のしっぽを追い駆ける常同行動は柴犬に多く見られるそうだが、その原因のひとつとして刺激のない環境が挙げられるという。やはり、心身の健康のためには適度な運動や刺激が必要。

小型と言えども、それなりに運動量を必要とする犬種なので、それにつきあえるだけの時間の確保や体力は必要でしょう。
 
下毛が豊富な分、換毛期には結構抜け毛が出ます。その点、部屋の中に犬の毛が飛び散っているのは嫌だと感じる人には向かないかもしれません。
 
気質的には飼い主一筋というようなところがある犬なので、ガイドとしては、飼い主さんも何かに対して一筋になれるような人のほうが向くように思うのですが、いかがなものでしょうか。
 
また、柴犬は前述したように長生きする傾向にある犬種でもあります。その分、高齢になった時に寝たきりになり、介護状態になるケースも目立つようになっていますので、たとえ介護状態になってもしっかり面倒が見られるという自信と覚悟がもてる人が、より望ましいでしょう。
 

柴犬の子犬を選ぶ際には

柴犬-子犬

一般的に、見た目より重たく感じる子犬がよいとされる。

柴犬には若干タイプの違いがありますので、自分の好みが決まった後、可能であれば両親犬、もしくは母犬を見せてもらえると理想的です。子育て中、母犬が落ち着きないようであると、子犬にもそれが影響している可能性があります。また、性格は遺伝しますので、親犬の性格がよさそうであれば、子犬にもそれを期待できるでしょう。
 
手をたたいたり、オモチャを見せたりした時、隅っこに隠れて寄って来ない子犬はシャイ気味で、扱うには多少気配りが必要になるかもしれません。一般的には、すぐに寄って来る子犬は明るく積極的な性格で扱いやすい傾向にあると言われる一方、我先にと他の子犬を押しのけても寄って来る子犬は我が強い面をもちあわせている場合も。また、抱っこした時に強く嫌がる、手を噛んでくる子犬はしつけに苦労する可能性がないとも言えません。
 
何より、子犬の社会化に十分配慮されて育った子犬を選ぶのが一番でしょう。
 
その他、目ヤニが付いていないか、お尻が汚れていないか、歯茎はピンクか、皮膚に異常はないか、被毛の状態、痩せ過ぎていないか、背中は真っ直ぐで立ち方や歩き方に異常はないかなど、健康度もチェックを。抱っこした時に子犬にしては重みを感じるくらいのほうがよいと言われています。
 

柴犬の飼育ポイント

お手入れ中の柴犬

柴犬は皮膚トラブルが懸念されることもあるので、皮膚のチェックはこまめに行いたい。

下毛が密なので、ブラッシングをする時には梳かし残しがないかチェックを。ブラッシングが不十分で毛球になり、それを放置した場合、皮膚炎を起こしてしまうことも。シャンプーの後も毛の根元までしっかり乾いているかチェックをお忘れなく。
 
しつけに関しては咬み癖がつかないよう、子犬のうちに甘噛みのコントールができるようにしておくと理想的で、動物行動学者の中には生後4ヶ月半頃までにはそれができていることがベストだという意見があります。
 
犬には、「獲物を探し⇒獲物を見つけて⇒追跡し⇒襲って⇒仕留める」といった一連のモーターパターンと呼ばれる捕食行動がありますが、牧羊犬では羊を襲っては困るので、「襲って⇒仕留める」部分を抑制した繁殖がなされてきたのに対し、獲物を仕留めるタイプの猟犬の場合は最後までをよしとして繁殖されてきたために、相手に攻撃をしかけ、咬みつくことに対して積極的な面があると考えられます。そうした点を考慮し、基本的なしつけはもちろん、「噛み」については子犬のうちにコントロールできるようにしておくのがいいでしょう。
 
また、柴犬や日本犬系のミックス犬はなぜか高齢になって認知症になる率が高いことでも知られていますので、極力スキンシップをはかる、脳を刺激するような遊びやゲーム(例:探し物ゲーム)を取り入れる、散歩コースを時々変えてみる、仲のいい友だち犬と遊ばせる、たまにはマッサージをしてみる、DHAやEPAを食事に取り入れる、などして予防することをお勧めします。
 

柴犬で気をつけたい病気

柴犬

長生きする傾向にある犬種だからこそ、若い頃からの健康寿命を考えたケアを。

アトピー性皮膚炎
若齢期に発症することが多く、ほこりやダニ、花粉などのアレルゲンによって痒みや発疹、皮膚が赤くなる、脱毛などの症状が見られる。アレルゲンは様々であり、詳しく調べるには血液検査が必要。
 
認知症
老化による脳の機能低下や萎縮などが原因となって、認知能力や刺激への反応が低下する。狭いところに入り込んで出られない、徘徊する、昼夜が逆転する、夜鳴き、トイレの粗相、反応が鈍い、食欲が異常になる、などの症状が見られる。
 
股関節形成不全
股関節の変形や緩みによって、お尻を左右に振りながら歩く、立ったり座ったりを嫌がる、跛行、ウサギのように後ろ脚を揃えて動かす、痛みなどの症状が見られる。遺伝性疾患であるが、肥満や滑りやすい床での生活など環境的な要因にも影響を受ける。
 
など
 
 
以上、柴犬についてお伝えしました。日本の風土が生んだ柴犬が、今も多くの人に愛され続けているというのは、とても素晴らしいことですね。
 
 
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注:犬は生き物です。性格、気質、体高、体重など、人同様に個体差があることをご承知おきください。
 
*日本犬=国の天然記念物指定を受けたのは、秋田犬・甲斐犬・紀州犬・越の犬(絶滅と思われる)・土佐犬(現在の四国犬)・北海道犬(アイヌ犬)・柴犬だが、その他にも日本犬はおり、琉球犬は1995年に沖縄県指定の天然記念物(#6)になっている。
 
参考資料:
(#1)日本犬大観A Manual of The Japanese Dog復刻版/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社
(#2)日本犬百科/渡辺肇/誠文堂新光社
(#3)日本犬名犬写真集/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社
(#4)〔プレスリリース〕日本列島3人類集団の遺伝的近縁性(2012.11)/国立大学法人総合研究大学院大学=The history of human populations in the Japanese Archipelago inferred from genome-wide SNP data with a special reference to the Ainu and the Ryukyuan populations(ゲノム規模のSNPデータから推論された、アイヌ人と琉球人に特に着目した日本列島人類集団の歴史)/Japanese Archipelago Human Population Genetics Consortium/Journal of Human Genetics、Nature Publishing Group, 2012. 11 .1, オンライン版
(#5)日本犬の起源とその系統/田名部雄一/日本獣医師会雑誌1996年第49巻4号p221-226, https://doi.org/10.12935/jvma1951.49.221
(#6)データベースギャラリー琉球犬/琉球大学博物館風樹館
(#7)マイクロサテライトマーカーによる柴犬3内種の遺伝的多様性と類縁関係/牧拓也、Kyung-Won HONG、田名部雄一et al./動物遺伝育種研究、2008年36巻2号p95-104,  https://doi.org/10.5924/abgri2000.36.95
など

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