お金の悩みを解決!マネープランクリニック/老後のお金や介護費用が心配な人の相談

39歳専業主婦、貯金600万。勤務先が倒産し、その後就職できません(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、会社倒産で突然無職になってしまった39歳の専業主婦の方。夫は契約社員でボーナスがなく、老後や家計管理で抱く不安に対して、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 親の介護は「親のお金」の範囲内で

まず、今後のマネープランを考えれば、奥様である「まるるんさん」が働いて収入を得ることは必須と言えます。その上で、ご自身も希望されているように、できれば正社員が望ましいですが、それにこだわり続け無収入状態が長引くのは避けなくてはなりません。

したがって、契約社員等でも構いませんので、少なくとも厚生年金に加入できる働き方を目指してください。老後までまだ20年以上あります。加入期間の長さで、受け取る老齢厚生年金の受給額も違ってきます。

また、親御さんの介護を考え「パート勤務の方が都合がいいのでは」とのことですが、そこはまだ考えなくてもいいと思います。実際にどのような介護が必要かは不明です。その必要性が生じた時点で、まずは自治体の福祉課や最寄りの地域包括支援センターに相談した上で、その後の対応を判断しても遅くはありません。加えて、所得税等の税金面で収入を抑えた方がいいのでは、という点ですが、それも今は気にせず、より高い収入を目指していけばいいでしょう。

それと、親御さんの介護について。同居されて、普段の生活を自分たちで介助できるなら問題ありませんが、それも時間的、体力的にきびしいなら介護ヘルパーの手を借りたり、介護施設を利用することになるはずです。

そこで注意すべきは、経済的支援は原則すべきではないという点。親の介護は親の資金の範囲で行うことが、マネープランの基本だからです。公的介護保険を活用しながら、親御さんの持つ資産、年金の範囲で行うということです。最初から子どもが負担すれば、自然とそれを頼ってしまいます。結果、自分たちの老後資金が目減りしても、負担し続けるといったことにもなりかねません。
 

アドバイス2 月10万円超の貯蓄も不可能ではない

次に家計ですが、車検等のクルマの維持費で実質、貯蓄が増えていないとのこと。ご主人だけの収入でやりくりするのであれば、ある程度仕方がないと思います。

しかし、これを機会に家計を見直すのはいいことです。ではどこを見直すか。やはり、ご本人も自覚されていますが、食費となります。月8万円は外食も含めているとは言え、やはり高め。ご夫婦とも食べることが「楽しみ」だとしても、見直す余地はあるでしょう。

ただし、食費だけを大きく減らすとストレスになる可能性もあります。したがって、通信費、雑費、趣味娯楽費と合わせた計17万円から、最初は3万~4万円減らすことを目標にしてみてください。削りやすいところ、優先順位の低い支出から手をつけましょう。そこで気になるのは、雑費に含まれる月4000円の婚約指輪の支払い。残高が14万円ほどですから、貯蓄から一括返済していいのでは。

保険については、ご主人の終身保険を払済保険にしてください。現状、加入の必要性は低い商品ですし、保険に毎月1万5000円近くコストを掛けるより、貯蓄に回すべきです。ただし、ご主人の医療保障がなくなりますから、共済保険で割安に確保します。入院は日額5000円で十分。保険料は2000円程度ですから、終身保険との差額分を丸々貯蓄に回せます。

加えて、いただいたデータでの収支は毎月、黒字が6万4000円。一方、貯蓄ペースは毎月5万円前後(投資商品の積立分も含む)ですから、データ上は1万5000円が使途不明金に該当します。これがもし貯蓄に回せるのなら、毎月10万円、年間120万円の貯蓄も不可能ではありません。
 

アドバイス3 老後対策のカギは継続的な妻の収入

最後に老後について。いくらあれば安心かは不確定要素(とくに住宅コスト)が多いため、断定はできません。ただ、仮にどちらかの実家に移り住むとしたら、現在の生活費から推測して、老後の生活費は月平均で22~25万円(クルマの維持費や旅行費用等は月割りで加算)でしょうか。
老後資金は、公的年金受給額での不足分をカバーすることが目的ですから、もしも、月平均5万円不足なら、65歳から90歳までの25年間で1500万円。これに予備費(クルマの買い替え、医療・介護費用、長生きリスクなど)として1000万円加算すれば、2500万円が少なくとも必要ということになります。生活費の不足額が月10万円なら、必要額は4000万円に増えるわけです。

では、老後資金をどのくらい準備できるでしょうか。

ご主人の職場が70歳まで働けるとのこと。もしも給与が今のまま維持できるとすれば、ご主人70歳のとき、まるるんさん61歳ですから、夫の給与で生活して、妻の給与は全額貯蓄という家計が継続できます(※)。

まるるんさんの収入が手取りで15万円とすると、年間180万円。22年間で約4000万円。これに、今ある貯蓄と投資商品、さらにご主人の給与からもいくらか貯蓄できるなら、合計で金融資産5000万円前後にはなるでしょう。

ここからクルマの買い替え費用、実家に移り住んだ際のリフォーム費用を差し引くと、残り=準備できる老後資金は3500万~4000万円でしょうか。

ただし、この試算はあくまで、夫婦ともあと22年までは安定して収入を得る(できれば、まるるんさんも65歳まで働く)という条件付きです。

投資について。純金積立はまだいいですが、プラチナ積立は現状を考えると、投資商品としての将来性はきびしいと言わざるを得ません。現金化して、積立はやめてもいいと思います。
また、まるるんさんが働き始めたら、老後資金づくりとしてiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めてはどうでしょう。節税効果も得られます。

(※)70歳まで働くと、現状、65歳から支給となる公的年金について、老齢厚生年金部分の支給が一部もしくは全額停止されます。一方、老齢基礎年金部分は停止されません。
 

相談者「まるるん」さんから寄せられた感想

老後資金に関して具体的な金額を示していただけて、とても安心しました。大きな金額ではありますが、目安が分かれば今後の貯蓄や節約も頑張れます。また、親の介護費用は親の資金で、というお話もとても意外でした。今回の相談内容を就職活動の励みにしたいと思います。本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……

深野 康彦さん
 
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マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武

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