食と健康

避難所生活・防災袋にも…非常時に備えるべき水と食品

【管理栄養士が解説】地震や台風、水害などの非常時に備え、水や食品の備蓄はとても大切です。避難所などでは健康を考慮した生活必需品が配られますが、それでも過不足が生じがちです。災害に備えた水や食品の備蓄の量と種類の目安、今日から始めるローリングストック法による備蓄、介護食・離乳食・アレルギー食など、飲食物の備蓄の考え方を解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

第一に備蓄すべき「水」……何リットルあればよいか備蓄量の目安

玄関先の非常持ち出し袋

災害はいつやってくるかわからない、というものの災害袋に入れておいて賞味期限が切れてもったいない思いをしたという人も少なくないはず。食品を無駄にしない非常食の考え方があるんです。


災害時、何が必要になるかというと一番最初に大切なのが「水」です。身体の約60%は水分ですから、有事であれ、何をおいても「水」は重要です。最優先で避難所に運ばれるものも水ではありますが、災害直後は物流が途絶えてしまうことも考えられます。その間、持ち堪えられるように各家庭で備えておきましょう。

目安としては、1人1日3リットルで3日分(=9リットル)以上は備蓄しておくことが望ましいといわれています。

ただし、あくまでこれは「飲料水」として必要な量です。水は体や食べ物などを洗ったり、冷やしたりする場合も、水が必要になるため、邪魔にならない範囲でなるべく多めに備蓄しておくとよいでしょう。
 

ローリングストック法で災害食を用意

次に食品の用意です。災害時でも「主食、主菜、副菜」のバランスを考えたいところですが、避難所には開封したらすぐに食べられるような、おにぎりや菓子パンが多く届くようです。物資が届いていない間や、物資が届き始めても不足しがちな栄養素を補給するためにも、保存性の高い食品を使って栄養バランスがとれるように工夫しましょう。

実際の備蓄法としては、普段の食事でも使っている乾物類や缶詰などを少し多めに購入しておくようにし、万が一の際にはそれらを使う方法がよいでしょう。この備蓄のやり方は「ローリングストック法」という方法で、東日本大震災以降に広まってきた考え方です。

ローリングストック法に向く食品は、

主食:そうめん、パスタ、米、カップ麺(加熱すると食べられる)
主菜:缶詰(ツナ、コーンビーフなど)、レトルト食品(カレー、シチューなど)、高野豆腐(加熱すると食べられる)
副菜:根菜類、野菜缶詰、野菜ジュース


といったものです。

通常は、野菜ジュースは野菜ではありません、とお話ししていますが、避難所では新鮮な野菜が手に入りにくくビタミンが不足しがちです。そのためビタミン補給のために、野菜ジュースも非常時には野菜としてカウントし、積極的に取り入れたいところです。

このほかに、最近流行りのドライフルーツやドライベジ、フルーツ缶詰なども備えておくと、食卓が潤います。さらにカルシウム不足も気になることから、スキムミルクや粉チーズなどの室温保存が可能な乳製品を一つ常備しておくのもよいでしょう。

また、避難所では大人も子供もイライラしがちになります。特に、子供たちにガマンさせるのはかわいそうですから、チョコレートやクッキーなども備蓄しておくとよいでしょう。

詳しくは、家庭用食料品備蓄に関するリーフレット(PDF)や、「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド(PDF)」を参考にしてください。

避難所での食事の衛生管理に役立つもの

飲食物の備蓄にあわせて、紙皿、紙コップ、割り箸など汚れたら簡単に廃棄できる食器類、サランラップなどの食品用ラップフィルム、ビニール袋なども保存や食品に直接触れなくても食べられるように包装できるため、一つあると重宝します。

また、実際に避難所生活をしていた方からの「水不足で食べ終わった缶詰を洗うことができないため、悪臭がきつかった」とのコメントもありました。水で洗えないのであれば、せめてビニール袋に入れて臭いが拡散しないように配慮したいところ。手洗いする水も不足する可能性が高いことから、ウェットティッシュもあると便利です。

また、寒い時期の災害であれば温かい食事がご馳走になることもあります。食中毒等から身を守るためにも、食品を加熱調理するための「カセットボンベ式のガスコンロ」も1台、持っているといいと思います。
 

避難所での非常食……治療食・介護食・離乳食・アレルギー食はどうするか

アレルギーがあったり、糖尿病や腎臓病などで食事療法をしている方にとっては、避難所の食事だけでは治療の妨げになってしまう場合もあると思います。介護食や離乳食を利用している人や赤ちゃんも、避難所の食事を食べたくても物理的に食べられない場合もあると思います。避難所で病者用食品の対応まで手が回りにくいこともあると思いますので、避難所に行ってからもしばらくは自宅のストックだけで大丈夫なように、これらの食品は意識的に備蓄しておくことをおすすめします。

それと同時に、万一の場合は早めに避難所にいる専門家に相談し、これらの事情があっても食べられる食品がある場合には、優先的に分けてもらうようにしてください。専門家側も可能な限りの対応をしてくれるはずです。

詳しいことは、国立健康・栄養研究所「避難生活を少しでも元気に過ごすために(PC)」、またはスマホ版を参照してください(PC版の方が詳細に書かれています)。

非常時で食品が思うように手に入らない状況は辛いと思いますが、できるだけ日常生活に近い生活を送るために、事前にできる準備はたくさんあります。災害なんて「まさか自分のところに……」と思いたいところではありますが、「備えあれば憂いなし」です。まずは、水や缶詰などのローリングストックからはじめてみてはいかがでしょうか。

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