長期優良住宅/長期優良住宅の基礎知識

住宅の保証制度を徹底解説!売却や中古購入にも影響?

住宅に関わる「保証」は我々消費者が気になる一方、わかりづらい面もあります。この記事ではハウスメーカーによる長期保証制度を中心に、住宅保証の種類や新築の瑕疵担保責任、保証制度が住宅の売却や中古住宅購入に与える影響などを徹底的に解説していきます。さらに最新の動向にも触れていきますので、安心した住宅購入の検討に役立ててみてください。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

<INDEX>
・住宅の保証の種類とは?
・新築住宅の保証期間は?
・ハウスメーカーの長期保証制度の仕組みとは?
・保証制度は将来の住宅売却に役立つか?
・最新の保証制度はどうなっている?
 

二つの仕組みからなる住宅分野の保証制度

今、世の中で製造販売されるもののほとんどには、消費者保護を目的とした一定期間の保証が用意されています。住宅の世界も同様。大手ハウスメーカーでは、50年、60年に及ぶ長期保証制度を設けている事業者もあり、それは消費者にとって安心感を感じられるため、依頼先選びの指標の一つになっています。では、具体的にどのような内容なのでしょうか。この記事では、注目すべきポイントや最近の動向などを含め解説します。

 
施工

施工現場の様子。長く快適に過ごせる住宅の実現には、技術などとともに施工精度の高さも重要な要素となる(クリックすると拡大します)


まずはじめに理解すべきは、住宅分野の保証には大きく二種類あることです。具体的には、

・完成保証引き渡しまでを保証
・瑕疵(かし)担保保証
引き渡し後を保証

があります。

完成保証は、住宅を新築する際、事業者の倒産などで中断した工事を完成までサポートする制度です。工事の中断や引き継ぎなどにより発生する費用や前払い金の損失について、一定の限度額の範囲内で保証金を受けられます。

大手ハウスメーカーは資金力があるため倒産するリスクはあまり高くありませんが、そうではない工務店などの地域ビルダーの場合は倒産の可能性は少なからずあります。そのため、消費者はこの制度を任意で利用できるようになっているわけです。
 
富士ハウス

2009年に倒産した富士ハウスの施工物件。外壁の防水施工などが行われていない状況だった(写真は2009年4月撮影。クリックすると拡大します)


ちなみに、この制度があるからといって全て安心とは限りません。信頼して依頼したビルダーの倒産、さらには工事の中断と引き継ぎ先が決まるまでの過程は、精神的にも物理的にもかなり大きな負担となるからです。

現在、住宅事業者が少ないパイを巡り熾烈な競争をしています。その中には資金力が乏しい地域ビルダーも含まれます。建設費が安いということから彼らと契約すると、施工中に倒産するリスクも十分にあり得る状況と認識しておいた方がいいでしょう。

ですので、依頼先となりそうな事業者の経営の状況はしっかりとチェックしておくことをお勧めします。それもより良い住まいづくりを行う上で欠かせない作業です。
 

新築住宅の保証期間は10年が基本

次に瑕疵担保保証について。これは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」、そして「住宅瑕疵担保履行法」により、引き渡し後10年間、主要構造部分と防水の瑕疵ついて事業者の責任を義務づけるものです。

主要構造部分とは基礎、柱、梁、屋根、床、外壁などの構造体のこと。「瑕疵」とは、建築基準法や契約書で決定された品質・性能を有しない状態をいいます。つまり、引き渡しから10年間に欠陥が発覚した場合、事業者は無償で補修しなければならないわけです。
 
瑕疵担保

住宅瑕疵担保履行法に関するポスター。ハウスメーカーは「保証金」の供託、地域ビルダーは「保険」に加入しているケースが多い(クリックすると拡大します)


瑕疵担保保証は責任履行のために、事業者には資力確保として「保険」か、「供託」(銀行などに資金を預けておく)のどちらかの措置をとることが義務化されています。10年間の間に事業者が倒産しても、消費者が補修を受けられるようにするためです。

住宅の場合は、この瑕疵担保責任が一般的な製品の保証の位置づけになります。話は少しそれますが、なぜ住宅は10年という他の製品より長い保証期間が設けられているのでしょうか。それは、耐久消費財と位置づけられているからです。

耐久消費財とはクルマや家電などと同じく、比較的ながく使われるモノのこと。ちなみに、自動車は新車から3年間(あるいは走行距離60000kmまで)とされています。住宅がそれよりも圧倒的に長い保証期間なのは、より長く使われることと、さらに家族の安心・安全を守るものだからです。
 

定期点検が大前提のハウスメーカーによる長期保証制度

以上をご理解いただいた上で、ハウスメーカーなどによる長期保証制度についてご説明します。まず基本的なこととしては、瑕疵担保保証の仕組みがベースになっていることはもちろんですが、保証期間はより長期に設定されていることが多くなっています。

つまり、地域ビルダーの初期保証期間が瑕疵担保責保証の10年より長いというわけです。これは、大手ハウスメーカーの場合、経営が安定しているため、点検やメンテナンスを継続できる体制であることが反映されたものと考えられます。
 
メンテナンス

ハウスメーカーでは、長期保証制度の一環として24時間365日のアフターサービス体制の構築にも力を入れている(クリックすると拡大します)


また、保証の内容についても防蟻処理、設備機器なども含まれれるケースがあり、かつ24時間365日のアフターサービス体制があるなど、より充実したかたちとなっていることも大きな特徴といえます。ただ、若干難しい点がありますので、重要なポイントを4つ、以下で確認します。

長期保証制度の第1のポイントは、定期点検が大前提となっていることです。逆にいえば、定期点検を受けなければ成り立ち得ない制度であるということです。

大手ハウスメーカーの中には最長60年の長期保証制度を設けている事業者がありますが、初期保証期間の間に定期的に無料の点検を受けることで、それ以降の保証が継続される仕組みになっています。
 
点検

近年は床下の点検にロボットを使用するケースも見られるようになった(クリックすると拡大します)


注目すべきは、初期保証期間以降は有料の点検とハウスメーカーが必要と指摘する補修が必要であること。それにより、仮に60年の長期保証制度を持つハウスメーカーなら、保証が継続されるというわけです。

第2のポイントは、保証対象は欠陥のほか、通常の暮らしによる劣化を対象としたものであること。つまり、自然災害(地震など)による損傷に対して無料で補修をするものではないということです。
 
地震

大地震で住宅が損傷した場合、それをカバーできるのは地震保険で、事業者の保証制度ではない。写真は大地震の被災地で行われる自治体による建物の危険度判定の用紙(クリックすると拡大します)


自然災害のリスクは、例えば地震保険でカバーするものです。クルマの事故は自動車保険で対応しますが、要するにそれと同じ理屈であると考えると分かりやすいでしょうか。このあたりは結構誤解があるようなので、あえて指摘させていただきました。
 

長期保証制度は将来の売却時に有利になる!?

第3のポイントは、他の事業者でリフォームや補修、特に構造体に変更が及ぶリフォームをした場合、保証の対象から外れる可能性が大であるということです。というのも、保証すべき構造体の品質や性能が大きく変わる可能性があるためです。
 
構造

あるハウスメーカーの構造躯体内部の様子。この中にも、そのハウスメーカー独自の技術や工夫が詰まっており、それに第三者が手を加えるのはあまり好ましい状況ではない(クリックすると拡大します)


このことにより、新築したハウスメーカー以外ではリフォームや補修が非常にしづらい状況になるわけです。つまり、長期保証制度は顧客の囲い込み策という側面があって、そのことは消費者にはデメリットと感じる可能性もあるということです。

ハウスメーカー系のリフォームは一般に比べて品質が高い一方、費用が高くなる傾向があるので、一般のリフォーム会社などに依頼したいと考える方もいるでしょう。しかし、規模や内容にもよりますが、それはなかなか難しい状況になるわけです。

ただ、デメリットばかりではありません。リフォームや補修は、その住宅を建てた事業者に任せるのが一番で安心。事業者は独自の工法で住宅を建てていますから、その特徴を理解している人たちが工事を担当することが、最も合理的だからです。
 
中古

不動産会社の店頭に並ぶ中古住宅のチラシ。長期保証制度があることにより、将来的により有利な条件で住宅を売却できる可能性が高まる(クリックすると拡大します)


そして、そのことは住宅を売却する際にメリットが生じるはずです。ハウスメーカーは設計図と点検、補修、リフォームの履歴を残していいますので、購入者は安心なストック(中古)住宅と認識でき購入しやすくなりますし、それは売却価格にも反映されると考えられるからです。

つまり、長期保証制度はストック住宅の価値を高め、流通を活性化させるという側面があるというわけです。ハウスメーカーの場合は元々、瑕疵担保保証よりこちらの方の意味合い強く、このことが第4のポイントです。
 

近年、さらに充実しつつある保証の内容

ところで、最後に長期保証制度に関する最近の動向についてお知らせしおきます。構造躯体と防水の初期保証を30年間とする、つまり「30年間ノーメンテナンス」をうたうハウスメーカーがいくつか現れ始めています。
 
外壁

外壁の事例。近年、この分野の耐久性や耐候性、耐劣化性などが大きく高まっている(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


これは、新素材や新技術が開発され耐劣化の性能が高まったことに加え、これまでに供給された住宅の点検状況から30年でも劣化が少なかったことが確認され、それが反映されたものと考えられます。

キッチンやバス、給湯器などの設備機器についても設備機器メーカーの保証を上回る10年保証とする動きも見られます。このように長期保証制度の内容は、ハウスメーカー間で色々と違いがありますのでしっかりとチェックしたいものです。

新築の検討時に「築30年で○百万円のメンテナンス費用が発生します」と明示する事業者もあるくらいです。こんな感じだと、将来の人生設計をしやすくなるため、より安心感が高まるのではないでしょうか。そのことは、皆さんの将来的な住まいへの満足度につながるはずだからです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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