インプラント治療の目的は? 機能性・審美性・快適性
機能性だけでなく見た目も大切ですよね。
- しっかり良く咬めること
- 周囲と調和がとれていること
- 長期間安全に快適に維持できていること
残念ながら、せっかくインプラント治療をうけて機能的には問題なく使用できている方でも、見た目が不自然な結果になってしまいご相談にいらっしゃる患者さんもいらっしゃいます。原因とそうならないための対策法を解説します。
インプラント治療の審美的な失敗例……不自然な見た目の原因
インプラント自体は人工物なので変化しませんが、骨や歯肉は時間の経過とともに形態が変化していきます。ですので、あらかじめある程度の変化を予測してポジションを決め、インプラント治療を行うことが大切です。しかしその予測が不十分であった場合、見た目が段々と不自然になってしまうことがあります。そのほか、骨が痩せていることが原因で仕上がりの見た目に不満が残るということもよくあります。たとえば上顎の前歯の1本をインプラントにする場合、抜けた部分の歯肉や歯槽骨も失われていることが多いのですが、十分に骨や歯肉を増やさずに治療すると歯茎のラインの仕上がりが不自然になります。
また、インプラント治療が始められた頃は、骨造成や歯肉の移植などの概念がなく、歯槽骨の量が少ない場所や薄い場所などに埋入することができませんでした。そのため、ベストなポジションでなくても歯槽骨が残っている場所に埋入していたため見た目が不自然になってしまった、というケースもあります。
埋入位置の問題が原因で見た目が悪くなってしまった失敗例
写真の事例を見てみましょう。インプラントが前歯に入っています。機能的には問題ないものの歯の長さが違い、歯肉の色も悪いので改善したいというご相談でした(写真上)。左前歯がインプラントなのですが周囲との調和は取れているとは言えません。CT撮影などの精密診断を行った結果、インプラントの埋入位置が悪いことがわかりました。
ですので、治療そのものをやり直した方が早いということになり、インプラントを撤去し同時に新たなインプラント埋入と骨造成を行いました。その後、最終上部構造を装着しました。
元々反対の右前歯にはセラミックが入っていて、その形も不自然だったのでこの歯も同時に変えさせてもらいました。大げさな歯肉移植を行いわざわざ右側の歯にあわせるのではなく、逆にインプラントに合わせて2本のバランスをとったのです。
現在リカバリー後4年が経過していますが、(写真下)のようにわずかに歯肉が退縮しているだけで、3か月ごとのメインテナンスだけで綺麗な状態が保てており、機能的な問題もなく支持骨も十分です。
せっかくインプラント治療を受けるのならば、機能だけでなく、審美性でも満足のいく治療を受けたいもの。数年後、数十年後の歯肉や骨の変化を予測するには、多くの治療経験が必要です。
ですので、特に前歯のような審美性が求められるインプラント治療を受けるときは、できるだけ経験豊富なドクターを選ぶと良いでしょう。