ニューリッチへの道/ニューリッチへの道

金持ち企業は働きやすいオフィス環境に投資する

企業の成長、つまり従業員満足のためには、オフィス環境の整備は重要な投資です。売り手市場で人材不足の今、従業員が満足して働ける環境はコスト面でもスムーズな業務遂行のためにも欠かせない条件になっています。

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

ニューリッチへの道ガイド

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稼ぐ企業は顧客満足の前に従業員満足を大切にする

金持ち企業

企業の成長と働きやすさは比例します

私個人は、住む場所や住まいのグレードによって気分が変わることはあまりなく、どんな家に住んでもすぐに慣れ、パフォーマンスがぶれることはありません。そういった価値観があったため、オフィスはとくにこだわりはなく、それまで勤めた会社でもオフィス環境に不満を持ったことは一度もありません。

だから起業するときも、顧客が来社しやすい場所であればリーズナブルな物件でいいやと思っていました。オフィスが売上をつくるわけでもないですし。

それでも当初は多少の見栄を張り、東京の表参道に事務所を構えていました。確かに人材募集の広告を出すと数多くの応募がありましたが、それは単に場所がおしゃれという問題だけだろうと思っていました。

しかし業績悪化のためオフィスを移転したのですが、表参道ほどの知名度がないマイナー駅で家賃の安い古いビルだったことから、如実に社員のモチベーションが下がったのです。何人かのスタッフに直接言われたこともあります。

そのとき、企業の成長、つまり従業員満足のためにはオフィス環境の整備は重要な投資であることに、遅ればせながら気が付きました。

それは豪華であれということではありません。見栄を張って身の丈以上のオフィスを構えることは、業績が悪化したときに企業の足を引っ張るだけです。そうではなく、従業員に優しい環境(たとえば複数路線が使えるとか、駅から近いとか、トイレが男女別とかボロ過ぎないなど)を整備することで、従業員の満足度は高くなるものです。

実際、事務所が移転したという編集者や記者さんたちに話を聞くと、「きれいなビルになってうれしい」「駅から近くて快適になった」「オフィスにバーがあって楽しい」という話や、「郊外に移転する話が出て社員が猛反発している」「湾岸に移転したため東京の西側に住んでいる人は通勤時間が長くなって地獄だって」などという話が出てきます。

女性が働きやすい環境か?

また、今後は女性の活用を考えると、彼女たちのプライベートの変化にも対応できる環境整備が必要です。

私の会社の社員は若い人材ばかりだったため、女性スタッフの妊娠や出産に直面することはなかったのですが、私自身に子どもが生まれ、しばらくは保育園に入れず苦労しましたから、子育てをしながら働く女性(に限らず男性もですが)の大変さは今ではよくわかります。

だからもし今後、私がオフィスを構えて女性スタッフを雇うとき、社員食堂やビリヤード場を設けるのは無理かもしれませんが、女性の更衣室兼休憩室を作ったり、キッズコーナーを設けて子連れ出勤もOKにしたいと思っています。

あるいは優秀な女性なら、仮に子育てのため10時~16時の時短勤務であっても、9時~17時勤務の人と同じかそれ以上のパフォーマンスを発揮してくれるのであれば、辞められるよりは給与を少し減額する程度でとどまってもらったほうがいい。

それに、それを社内に公表すれば、「そういう働き方をしてもいいんだ」と他の女性スタッフにも安心材料になるはずです。「それでは未婚女性や子どものいない女性社員から不公平だと不満が出る恐れがある」という心配もあるので、あくまで成果による評価であると、スタッフにしっかり説明することは必要です。

採用から戦力化までのコストは膨大

なぜそこまでしなければならないかというと、買い手市場の時代ならともかく、もはや売り手市場で人手不足の時代だからです。
通勤がしんどいとか、育児や介護のためにやむを得ず退職ということになれば、また人を採用するのも大変だし、その人たちが戦力になるまでに時間がかかりますから、その間のコストのほうが膨大です。

また、自社の業務に習熟し、取引先の状況を把握し、会社の風土を理解した社員が定着することは、コストの面だけではなく企業の成長にも欠かせません。何年も勤めてもらえば、自社や顧客のことをよくわかっています。そんな人に長く定着してもらったほうが、業務はスムーズに回るでしょう。(そうでない人は自然と淘汰されていく仕組みも必要ですが)。

従業員が数名程度の零細企業には難しいかもしれませんが、その会社で働く人に合わせて環境を整備することで、人材の定着を図るほうがメリットが大きいのです。

実際、米グーグルやアップルはそんな社屋を作っていますし、日本でも楽天やサイバーエージェントなども従業員満足を重視したオフィス環境を整備しています。企業体力を無視してまで無理をするのは本末転倒ですが、従業員が働き続けやすいよう雇用側が柔軟に対応し、多様な労働ニーズに合わせていく時代なのです。

オフィス環境などは経営者が理解していなければできないことですが、部門の管理職もそういう意識が必要です。たとえば産休や育休、あるいは有休の取得を気持ちよく認めてあげられるかどうか。あるいは長期休暇を取ったスタッフの分で負担の不公平感が出ないようにするため、業務の割り振りや納得感のある説明をするとか。

物理的な環境を変える権限はなくても、「働きやすい職場の空気」をつくることは、離職を防ぎ業績を上げるうえで、リーダーの大切な役目でもあります。

出典)『私が「ダメ上司」だった33の理由』(日本実業出版社)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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