ドイツの春の味覚、シュパーゲルを味わおう!
春のドイツのお楽しみといえば、シュパーゲル(白アスパラガス)。「白い金」「食べられる象牙」などと崇められるシュパーゲルは、春の訪れとともにみんなが心待ちにしている特別な野菜。シーズンともなるとドイツ中にシュパーゲル旋風が巻き起こり、みんなこぞって期間限定の美味に舌鼓をうちます。ふくよかな食感と繊細な甘み、口の中にじんわりと広がる口福感……その唯一無二の味わいは、一度食べたら虜になるほど。かくいう私もその魅力に憑りつかれた1人で、毎年熱に浮かされたように様々な料理でシュパーゲルを味わい、全国の名産地を訪ねたり農家でアスパラ掘りを体験したりとシュパーゲル活動に勤しんでいます。
シュパーゲル愛好家としては、ドイツを旅する皆さんにもぜひ美味しいシュパーゲルを味わってほしい! と願わずにはいられません。そこで今回は、シュパーゲルの基本情報から「シュパーゲルの町」観光案内、レシピやお土産まで、シュパーゲルを楽しむための情報をお届けします。春のドイツならではの味覚を思いっきり堪能してくださいね!
<目次>
ドイツのシュパーゲル(白アスパラガス)とは?
「シュパーゲル(Spargel )」とはドイツ語でアスパラガスのこと。日本では緑のアスパラガスが主流ですが、ドイツでシュパーゲルというと通常は白アスパラガスのことをさし、緑のアスパラガスは「グリューナー・シュパーゲル(Grüner Spargel)」と呼ばれています。色も味も異なる白と緑のアスパラガス。じつはこの2つはもともとは同じ品種で、栽培方法によって色が異なります。日光にあたらないように土の中で栽培されるのがホワイトアスパラガス。太陽を浴びて育つと、色が変わって緑のアスパラガスになるんです。
土の中で育ったシュパーゲルは手作業で掘り出さなければならないため、収穫は重労働。お肌と同じく、美白を保つためには大変な苦労がかかるのですね。
ドイツのシュパーゲルは期間限定?
ドイツのシュパーゲルの旬は春。国内産シュパーゲルは4月初旬から店頭に出始め、収穫期間は6月24日(聖ヨハネの日)までとされています。最終日がきっちりと決められているのには理由があって、翌年の春にも最高のシュパーゲルを収穫するために、畑とシュパーゲルの根を休ませるのだそうです。季節外れでも南米などから輸入されたシュパーゲルが販売されていますが、ドイツではその土地で採れたものを旬のうちに味わうことが好まれるので、やはり圧倒的に国内産シュパーゲルの方が人気。シーズンが終わるまでに思う存分味わっておこうと、みんなこぞって美味しいシュパーゲルを買い求めます。
美味しいシュパーゲルが買える場所と見分け方
ドイツのシュパーゲルはサイズや品質で選別されています。値段はランクや時期によって様々で、だいたい1kg 5ユーロから10ユーロ前後。日本にくらべると驚くほど安いですが、食品の物価が安いドイツでは、シュパーゲルは高級野菜なんです。シーズン中は街のあちこちにシュパーゲルを販売するスタンドが立ち、スーパーではシュパーゲルが山積みにされています。スーパーで買うシュパーゲルも充分美味しいですが、機会があればぜひ市場や農家の直売所に出かけてみてください。朝採れたばかりの新鮮なシュパーゲルの味は格別ですよ。
美味しいシュパーゲルの見分け方をご紹介。購入する際の参考にどうぞ。
- 色……美白と艶をチェック。穂先が紫に変色していたり、全体的に茶色がかっていないもの。
- サイズ……太さが均一で極端に細すぎたり太すぎないもの。
- 鮮度……根元が乾燥していないか、穂先がしっかり閉じているか。シュパーゲルをこすり合わせてキュキュッといい音が鳴ると新鮮な証しです。
シュパーゲルの美味しい食べ方、合うワインは?
ドイツでは、柔らかくゆでたシュパーゲルにじゃがいもとハムを添え、オランデーズソースや溶かしバターをかけるのが定番の食べ方。シュニッツェルやステーキなどメインの肉料理や魚料理の付け合せにすることもあります。前菜にはシュパーゲルのクリームスープ「シュパーゲルズッペ」も定番です。その他、サラダやピザ、パスタなどアレンジメニューも豊富。シュパーゲルは繊細な風味が魅力なので、素材そのものの美味しさを味わえるシンプルな料理方がおすすめです。
シュパーゲルに合わせたい飲み物はなんといっても白ワイン。ミネラル豊富な辛口の白、なかでもリースリングとの相性は抜群です。ドイツには13のワイン生産地域があり、知られざる美味しいワインがたくさん。ワイナリーを訪ねて併設のレストランでシュパーゲルと一緒に楽しむ……春のドイツでは、そんな至福のひとときを過ごすことができます。
シュパーゲルのお土産
残念ながら生のシュパーゲルを日本に持ち帰るのは難しいですが、シュパーゲル風味のスープの素なら軽くてお土産に最適。シュパーゲルにかけるパック入りのオランデーズソースも手軽で便利です。なかでもおすすめなのが「Lukull」というメーカーのソース。プロのシェフも使っているほどの美味しさで、私も自宅では専らこちらを使っています。シュパーゲル専用の鍋やピーラーなどドイツならではのシュパーゲルグッズも豊富なので、デパートやキッチン用品店でチェックしてみてくださいね。
「シュパーゲルの町」へ行ってみよう!
ドイツにはシュパーゲルの名産地として知られる町があり、採れたてのシュパーゲルを買ったりレストランで味わったりできます。とくに有名なのはニュルンベルクやベルリン郊外のベーリッツ、デュッセルドルフ近郊のヴァルベック、ハイデルベルクに近いシュヴェッツィンゲンなど。シュパーゲル産地を結んだ、「アスパラガス街道」なるルートもいくつかあるんですよ。美味しいシュパーゲルを求めて「シュパーゲルの町」を訪ねる旅も素敵ですね。シュパーゲル旅におすすめしたいのが、ドイツ北部ニーダーザクセン州のアスパラガス街道に位置するニーンブルク(Nienburg)。春のシュパーゲル祭りではアスパラ市が立ち、シュパーゲルの女王が選ばれシュパーゲル・マラソンが開催されるなど、まさにシュパーゲルの町です。知る人ぞ知るニーンブルクですが、じつは観光客に人気のメルヘン街道上にあり、中世の木組みの家が建ち並ぶ可愛い旧市街やヴェーザー川沿いの散歩道、シュパーゲル博物館など見どころの多い町なんです。
ニーンブルクでシュパーゲルを食べるなら、川の上に建つレストラン「Weser Schlösschen」がおすすめ。シュパーゲルのフラムクーヘン(薄焼きピザ)や天ぷら、デザートのクレーム・ブリュレまでシュパーゲルづくしのメニューが楽しめます。
■Weser Schlösschen
シュパーゲルの美味しい茹で方とスープのレシピ
レストランもいいけれど、手作りの味もまた格別なもの。シュパーゲルは手軽に調理できるのでドイツの家庭ではよく作られます。ここではシュパーゲルの美味しい茹で方と、その茹で汁で作るクリーミーなスープのレシピを紹介します。ドイツではシュパーゲル1人前は500gが標準。食いしん坊の私はぺろりと食べてしまいますが、個人差があると思いますので分量は調整してくださいね。シュパーゲルの美味しい茹で方
■材料(食いしん坊2人分)シュパーゲル 1kg
塩 小さじ1
砂糖 小さじ2
バター 大さじ1
■作り方
- シュパーゲルを水洗いし、穂先を残してピーラーで皮を厚めにむき、根元を2cmほど切り落とす。※皮と根は捨てない。
- 鍋に1のシュパーゲルと切り落とした根元と皮、ひたひたの水(分量外)、塩、砂糖、バターを入れて火にかけ、沸騰してから約10分~好みの固さになるまで茹でる。茹であがったらひきあげて水気を切る。※茹で汁は捨てずにスープに使います。
- お好みでオランデーズソースや溶かしバターをかけていただく。付け合せはハムとじゃがいもがおすすめ。
※皮が残っているとせっかくのシュパーゲルが台無し。厚めにしっかりむきましょう。
※シュパーゲルは柔らかめに茹でるのがドイツ風。持ち上げて少ししなるくらいが茹で上がりの目安。
シュパーゲルのスープの作り方
■材料(4人分)シュパーゲルの茹で汁 500cc
茹でたシュパーゲル 4本
生クリーム 100cc
バター 大さじ1
小麦粉 大さじ4
白ワイン 大さじ1
塩・こしょう 適宜
■作り方
- 鍋にバターを熱し、小麦粉を加えて木べらでなめらかになるまで練る。
- 木べらを泡だて器に持ちかえ、シュパーゲルの茹で汁を少しずつ加えながらのばしていく。一度に加えるとダマができてしまうので注意。
- 白ワインを加えてひと煮立ちしてから生クリームを加えて温め、塩・こしょうで味を整える。
- 食べやすく切った茹でシュパーゲルを器に入れ、スープを注いでできあがり。
この他にもパスタにリゾット、炊き込みご飯やお浸しなど様々な料理にアレンジできるシュパーゲル。煮ても焼いても美味しいのでいろいろと試してみてくださいね。
※ドイツ発フリーペーパー「ニュースダイジェスト」で連載させていただいているレシピコーナーでも色々なシュパーゲルメニューを紹介しています。こちらも参考にどうぞ。
>>>『食いしん坊のための簡単おいしいレシピ』
取材協力:ドイツ観光局 Mittelweser-Touristik