「親へお礼」は素晴らしいが…初任給は手元にそれほど残らない
新社会人となって、最初のお給料日を迎えた人も少なくないと思います。がんばって就職活動に励み、なんとかみつけた職場で、会社のルールをたくさん詰め込まれながら、毎日朝早くから出社する生活の結果としてもらえた報酬が、あなたの銀行口座に振り込まれている金額です。新社会人の初任給といえば「ここまで育ててくれた親へお礼のプレゼント」という話題がしばしば上がります。実家と今の生活が離れているため、ゴールデンウイークに里帰りするので、何か準備をしなければ、と考えている人もいるでしょう。
親への感謝、というのはとても素晴らしい考え方です。しかし、マネープラン的には「親への感謝は、今はファミレスご飯のご馳走でも十分」という話をしてみたいと思います。
第1の理由は、「初任給はそれほど多くない」ということです。1カ月のアルバイト代より多い金額をもらえたとしても、それは「これからの1カ月を暮らしていくお金」です。食費や家賃を全部親に頼んで、アルバイト代をすべて自由に使っていた時代とはもう違います。
毎日の朝食を300円、昼食を600円、夕食を700円としても、30日あれば48000円が消えていきます。実際にはそれ以上の食費がかかるはずです。
お菓子やジュースに毎日300円かければ、これは月9000円のお金が必要です。
スマホ代、家賃やガス代、電気代、その他のお金を積み上げていけば、おそらく誰かにプレゼントをする予算はほとんど残らないはずです。
社会人になる、ということは「自分のお金で自分を養っていかなければならない」ことなのです。
働いたお金で1カ月暮らすことが一番の恩返し
あなたがもし、実家暮らしなら、親と相談して毎月数万円を実家に入れるルールを作りましょう。ひとり暮らしの人なら生活するだけで10万円以上は確実に消えていきます。実家暮らしだからといって、全額自由に使うのではなく、必ずお金を実家にいれておきましょう。それがむしろ「親への恩返し」だと思います。1回ではなく、これからずっと、実家にいる限り、自分の生活費を親に渡すのです。ひとり暮らしの場合は、全ての生活コストを自分で払うことになりますが、学生時代のように「親にお金を出してもらう」から「全部自分でやりくりする」1カ月を過ごすことが何よりの恩返しです。おそらく、親としてもあなたが1カ月しっかりやりくりできるか心配の種であるはずです。親に数万円のプレゼントをするよりも、なんとかやりくりをしている、というあなたの話をしてあげるほうが喜ばれると思います。
初任給が半月分ということもありうる
もうひとつ注意点は「初任給が他の月より少ないこともある」ということです。これは大企業ではあまりないのですが、中小企業では「15日分」あるいは「20日分」の給料しかもらえないことがあるのです。会社の規定によりますが大企業では「1日に在職しているなら基本給は全額25日に支払う」「1日から末日までの給与を計算して25日に支払う」のようにして、新卒でも1カ月分の給料を払ってくれることが多いようです。
ところが中小企業などでは「25日に支払う分は、15日に締めた勤務日数分」「25日に払う分は20日まで働いた分」のように設定していることがあり、この場合、15日分(つまり半月分)あるいは20日分(つまり3分の2月分)しかお給料がもらえないことになります。
「あれ、なんでこんなに初任給が少ないの!」と思っているとそんな理由があるわけです。今月の給与は翌月払う、ということもあるので、これは法律違反ではないのですが、新卒にとっては正直痛い話です。次の給与振り込み日まではかなりの苦労を強いられます。
こういう場合、やはり「親へのお礼」よりも「1カ月の生活のやりくり」が優先ということになります。
お礼に何万円もかけるのはむしろNG 今はお花かファミレスでOK
親へ感謝を伝えたい新社会人世代としては、どうしても値段の高いプレゼントを考えがちです。しかしマネープラン的には「自分の生活の確立」が優先です。もし親にまとまった金額のプレゼントをしたいのであればボーナスシーズンまで待つべきです。
どうしても今、親に感謝の気持ちを示したいなら、たとえば数千円程度のお花をプレゼントしたり、ファミレスでのお会計を全部自分が出したり(数千円から5千円程度)、というような形をとってみてはどうでしょうか。
そしてもし将来余裕ができてきたら、30代あるいは40代になってから、親に旅行をプレゼントしたり、ミシュランの星が付いたレストランで夕食をご馳走してあげてください。
気持ちを示すのは金額ではないはずです。あなたの両親も、きっとあなたの気持ちを分かってもらえると思いますよ。