アドバイス1 貯蓄が継続できるようストレスをためないこと
32歳のとき、貯蓄を使い果たしたわけですから、5年間で390万円貯めたことになります。とても頑張られたと思います。家計を見る限り、同居されている親御さんの助けもありますが、手取り給与額の半分以上を貯蓄に回しているのは立派です。ただし、お父さんがご病気ということで、今後は生活コストが増えることになります。当面は、食費や水道光熱費が増えるはず。これらがどの程度の金額かですが、少なくとも月3万円の貯蓄ペースは保ちたいところ。食費など、慣れてくれば抑えられるようになり、さらに貯蓄ペースは上がってくるでしょう。
ただし、将来が不安であったり、貯蓄しなければという意識が強いばかりに、頑張りすぎるのはリスクをともないます。それがストレスになって、逆に支出が抑えられなくなったり、精神的に参ってしまうことも考えられるからです。
貯蓄は継続しなくては意味がありません。そのためには、ときどき息抜きも必要。ボーナスを利用して海外旅行に行かれているとのこと。それは継続してほしいと思いますし、予算を抑えるなら国内旅行でも構いません。家計を見る限り、普段の生活ではあまり自身の楽しみに支出していないとも思われます。予算を決めれば、多少支出が増えたとしても構いません。どうすればストレスなく貯蓄を継続できるか、創意工夫してみてください。
気にされている老後資金は、年間60万円貯蓄できたとして、定年までの23年間で1380万円。退職金は400万~500万円でしょうか(できれば勤務先に確認してください)。ただし、これで足りるかどうかは残念ながらわかりません。老後までに不確定要素が、まだまだたくさんあります。
したがって、65歳まで、健康面で可能であれば、さらに長く働く。長期的に収入を得ることで、老後資金の目減りペースを減らす。それが今考えられる、もっとも効果的な老後対策となります。
アドバイス2 現状では住宅ローンを組むのはリスク大
ご実家のリフォームか、あるいはそれに費用を掛けるなら、中古住宅を購入した方がいいのかというご相談については、資産状況等を考えれば、今現在、住宅購入を選択するのはかなりのリスクをともないます。仮に中古一戸建て住宅の物件価格が1000万円、諸費用100万円とします。クルマの買い替えに150万円がかかりますから、頭金は出せて100万円ほど。したがって、借入額は1000万円。返済期間を定年までの23年間、金利1.5%とすると、毎月の返済額は約4万3000円。これに固定資産税、将来のリフォーム費用も考慮すれば、住宅コストは月6万~7万円となります。この時点で、生活費はボーナスを充てても、家計に貯蓄できる余裕はありません。
アドバイス3 親と自分の生活コスト、しっかり線引きを
また、にゃんさくさん1人で住むのではなく、親御さんと同居するとなれば、実家を売却しなくてはなりません。それがある程度まとまった金額であれば、借入額が下がります(売却資金を充てる)ので、購入に現実味も帯びてきますが、立地によっては売却そのものが難しいというケースもあります。ともあれ、どのタイミングで家を購入したいのか。また、ご実家を売却した場合の金額はどのくらいか。加えて、今後予定している窓の断熱と浴室のリフォームの費用がどのくらいなのか。さらにその先、どの程度リフォームの必要性があるのか。それらを自分なりに調べ、整理しておくことが必要です。
また、大事なこととして、リフォーム費用を誰が負担するのかということがあります。マネープランを考える際、「親の生活コストは親の資金から捻出する」が基本ですから、この先、お父さんが他界された後は、もちろん、お母さんの生活ケアはするとしても、資金的な部分はしっかり線引きすべきです。同居しているからといって、全部ご自身で背負うことはないと考えます。
また、その意味で、何か大きな支出が発生したとき慌てないためにも、ご両親の資産状況がデータに記載されてありますが、お母さんの貯蓄も知っておく方がいいと思います。それと、お父さん加入の保険の死亡保障額が400万円。これがすべて葬儀費用に消えてしまうのは、もったいないと思います。保険金はお母さんが受け取られると思いますが、遺されたお母さんのためにも平均的な予算(120万円程度)を考えてはと思います。
最後に医療保険は、やはり必要最小限の保障は確保したいところ。入院は5000円で十分。終身保障終身払いで保険料は月2000円程度。共済でもいいでしょう。
相談者「にゃんさく」さんから寄せれた感想
深野先生の言うように、この年齢で貯蓄をなくしてしまった負い目から貯めなければと自分を追い込んでいたと思います。楽しみを持ってはいけない気すらしていましたが、旅行にいっても大丈夫ということで少し気持ちが軽くなりました。やはりプロの方に相談するのは大事ですね。アドバイスいただいたことを参考にまた頑張っていきたいと思います。このような機会をいただいたこと本当に感謝しております。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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