疲労回復法

おんせん県大分で大規模調査!温泉へのこだわり・実感

【温泉療法専門医が解説】「おんせん県おおいた」として知られる大分県。温泉の源泉数・湧出量ともに日本一を誇る温泉地です。今回は県庁職員3911人を対象に、大分県民の日常的な温泉の利用実態と温泉入浴によって感じている健康効果、それぞれのこだわりを調査しました。何と全国平均の10倍も温泉に入っているという実態も明らかに。詳しく解説します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

「おんせん県おおいた」の実態に迫る! 大分県民の温泉入浴調査

別府温泉

おんせん県おおいた別府温泉


私たちの研究チームは、「おんせん県」として名高い大分県の県庁職員3911名を対象に、2018年1~2月に大規模な温泉の利用に関する調査を行い、1182名(男性784名、女性398名)の回答をいただきました。

この調査は科学技術振興機構の「未来社会創造事業」の研究の一環として、東京都市大と東海大学の研究チームにより大分県庁の協力のもと、実施されたものです。

大分県は温泉の源泉数・湧出量ともに日本一を誇り「おんせん県おおいた」として温泉地活性化に力を入れている県です。温泉に恵まれた地域の方へ調査を行うことで、温泉の利用方法と温泉による体調の変化、また効果的な温泉利用のヒントを知るために、温泉入浴に関する大分県の皆さんの「こだわり」などを調査しました。

温泉に関する医学研究は、地道で時間も費用もかかる

そもそも日本は温泉に恵まれた国で、これまでも温泉に関わる医学研究が行われてきました。しかし実のところ、温泉に関する医学研究はなかなか大変です。限られた研究者で実験を行うとなると、通常1つの温泉地で10~20人程度、多くて数十人の方から手作業でデータを集めての実験が中心となります。時間も費用もかかるため、多くの研究をどんどん行うのは簡単ではありませんでした。

今回、私たちのチームが行った調査は、大分県のご協力のもと、大人数に広く簡単に調査を行うことができるアンケート形式で実施しました。研究室での温泉成分などの調査など、厳密な実験とはまた違った形ですが、多くの人の生の声を多く抽出することで、温泉入浴と健康効果の実感値を探れたと思います。

大分県民の温泉入浴頻度は全国平均の10倍!

調査の結果、まず驚いたのは、大分県の方は、全国平均と比べて10倍もたくさん温泉に入っていた、ということです。月1回以上温泉を利用している人は55.6%で、4.0%の人は毎日温泉入浴していました。

以前私たちが行った全国調査では、1か月以内に1回以上温泉を利用している人は5.5%だったので、その割合はちょうど10倍ほどです。温泉が身近にあるということが影響しているためだと思いますが、温泉医学者の私にとっては、なんともうらやましい環境です。10倍も温泉を利用されているとは、さすが、「おんせん県民」です。

温泉入浴時のこだわり・楽しみ方は多種多様

温泉に入るにあたって、温泉地の地元の人にはきっとさまざまな「こだわり」があるだろう、と考え、自由にこだわりを回答いただきました。

最も多かったのは、「水分補給」です。入浴前後に何らかの水分補給をするように特に心がけていると回答した人は21.7%でした。定番の牛乳やコーヒー牛乳を挙げる人も多く、今も昔も牛乳は温泉には欠かせない飲料のようです。

実際に、過去の別の実験的な研究では、牛乳は脱水を回復させる効果が高いという結果もありますので、入浴後に牛乳を飲むことは理に適っていると言えるでしょう。牛乳などを飲むことで経験的に体調が整うことを実感されてのこだわりなのかもしれません。また、お茶や水を持参して入浴するという人もいました。1回の入浴で800mLもの脱水になるという別の実験結果もありますので、水分補給への心配りは見習いたいこだわりです。

それ以外にも目立ったこだわりとしては「運動やスポーツの後には温泉に入る」というものでした。温泉は全身の血流を改善し、疲労物質も除去してくれますので、運動後に温泉に入ることで効率よく疲労回復ができるのでしょう。運動したら温泉、というセットでの習慣になっているのかもしれません。

他にも
  • 2度以上繰り返して湯船に入る
  • ぬるめの湯と熱い湯に交互に入る
  • マッサージをする
  • 温泉で一緒になった人と会話を楽しむ
  • サウナも併用する
  • 必ず露天風呂に入る
  • 瞑想する
  • 上がるとき、温泉水を洗い流さない
などなど、温泉入浴にはそれぞれのこだわりや楽しみ方があることがわかりました。

温泉入浴と睡眠の関係……快眠効果を実感する人が多い

また、温泉入浴による体調の変化を自由に回答してもらったところ、たくさんの種類の症状改善が挙げられました。その中でも最も多かったのは「温泉に入ると夜良く眠れる」と、睡眠の改善を挙げたもので、回答者の20.0%に上りました。

今回の調査では、おんせん県ならではの、たくさんの温泉利用者からの率直な意見を聞くことができました。「温泉に入るとよく眠れる」といったなんとなく感じることが、多くの人も同じように感じていることも分かりました。今回の調査は、研究室での厳密な実験ではありませんが、多くの人の体感を調査することで、温泉入浴と健康効果の真実の一面を示しているように思います。

今回の調査のさらなる詳細については2018年5月26~27日に別府で開催される「世界温泉地サミット」で発表する予定です。ぜひ楽しみにお待ちください。
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