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俳優・大杉漣 俳優道を謳歌した300の顔をもつ男

2018年2月21日、俳優の大杉漣さんが亡くなりました。1951年生まれの66歳、確かな演技力と気さくな人柄で日本中から愛された名優の人生を追悼の意を込めて振り返ってみたいと思います。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

日本中に愛された俳優・大杉漣さん 追悼の意を込めて

2018年2月21日、俳優の大杉漣さんが亡くなりました。1951年生まれの66歳、確かな演技力と気さくな人柄で日本中から愛された名優の、人生を謳歌する生き方には憧れがありました。
俳優・大杉漣

演技力と人柄で日本中から愛された名優・大杉漣さん(写真:アフロスポーツ)


演技を深める人間力が俳優力を豊かにする

圧倒的な演技力とその幅の広さから300の顔を持つ男と呼ばれた大杉漣さん。徹底的にこだわり抜いた演技に対する信念や情熱、日々の努力はもちろんですが、大杉漣そのひとからにじみ出る人間力が、その演技を支えています。

薄っぺらい人間がどんなに力んでも、その薄さは見えてしまうし、邪念からか集中していない空気も漏れてしまうもの。演技はつくろうものではなく、さらけ出すものなのかもしれません。「一生下積むことが、ぼくの仕事」と語っていた大杉漣さん、どんな役にも全力で臨み現場を最優先させ、どんなひとにも愛を持って接してきた人間力が、豊かな演技を支えていたと感じます。

300の顔をもつ男

デビューは22歳。劇団、ピンク映画、Vシネマなどを経験し、北野武作品『ソナチネ』で注目されたときは40歳を過ぎていました。
『現場者―300の顔をもつ男』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/7bsbtpO)

『現場者―300の顔をもつ男』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/7bsbtpO


淡々と顔色ひとつ変えない極悪非道な男、アタフタし続ける小心な中年男、一本筋の通った堅物の父親、声の大きさや顔の怖さではなく、にじみ出る何かで凄む演技は圧巻、教科書どおりではない役づくりで私たちを楽しませ、驚かせ続けました。

『孤独のグルメ』シーズン3の第8話(2014年)では、主人公が訪ねる東京キネマ倶楽部の統括マネージャー・長沼を演じ、観ている私たちが古き良き時代に想いをはせる補助線をそっと引いてくれるような心地よい雰囲気。『居酒屋ふじ』(2017年)の第2話には本人役で登場、いやらしさゼロの下心で笑いを誘っています。おじさんの底力で社会を照らした『緊急取調室』シリーズ、自らの信念に翻弄される主人公の上司を熱演した『スペシャリスト』シリーズ、常に私たちの心構えを崩壊する芝居で驚嘆させた映画『アウトレイジ 最終章』……。どの作品を観ても「あの大杉漣さん、可笑しかったよね」「怖かったよね」「泣けたよね」と印象に残る演技ばかり。いかに大切に演じられているかがわかります。

バラエティやバンド活動…… あるがままに生きた豊かな人生

映画やドラマでの俳優業のほかにナレーションでの参加や、近年はバラエティ番組での活躍も多くみられました。 サッカーチーム・徳島ヴォルティスの熱狂的なサポーターとしても知られ、サッカーにバンド活動、趣味の日曜大工など、自分の枠を広げ続ける好奇心旺盛な生き方は、がむしゃらよりも「あるがまま」。とても豊かな生き方であることが伝わってきます。

印象的なのは、いつも満ちあふれた幸せな笑顔でいらしたということです。ギターを弾いてハモニカを吹く姿は幸福なダンディ。大俳優・大杉漣さんは、いつも私たちのすぐそばにいらしたように思えて仕方ありません。

もっともっと観たかった。まだまだ観ていたかった。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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