子どもの不安感を取り除くには
<目次>
- 子どもの強い不安感に悩む親子は3分の1以上!?
- 子どもの不安感への対処1.子供の個性を認める
- 子どもの不安感への対処2.1日5分でも親子でただ楽しむひと時をもつ
- 子どもの不安感への対処3.罰、脅し、辱めを用いた「しつけ」は逆効果
- 子どもの不安感への対処4.不安を感じる対象の仕組みを知る
- 子どもの不安感への対処5.「ワクワクするね!」と声をかける
- 子どもの不安感への対処6.「自分はこれができる!」といった自信をつける
- 子どもの不安感への対処7.思考と現実は同じではないと話し合う
- 子どもの不安感への対処8.不安感に名前を付ける
- 子どもの不安感への対処9.少しずつ助けを減らしていく
- 子どもの不安感への対処10.夜寝る前に心配事を話さない
子どもの強い不安感に悩む親子は3分の1以上!?
子供の過度の不安感は親にとっても本人にとってもつらいもの……。
とはいえ、過度の不安感は、周りを心配させ、子供本人にとっても絶え間ない緊張状態によるストレスの原因となってしまいます。また新しい体験へと踏み出すことを妨げ、せっかくの成長の機会も生かされません。
アメリカでは、18歳までの人口の3分の1が、何らかの不安障害を抱えているという報告もあります。(*1)強い不安感に悩む子供や青年というのは、実はそれほど珍しいことではないのです。
幸い、子供の不安感というのは、年を経るにつれ緩和するものも多く、またたとえ不安障害と診断されるまでに進行しても、比較的治療しやすい症状と分かっています。(*2)
ですからまずは、「大丈夫」と肩の力を抜き、親自身の不安感を和らげましょう。そして今、できることをしていきたいです。以下、子供の不安感についての研究を基に、対応法を整理してみましょう。
子どもの不安感への対処1.子供の個性を認める
不安感の強さは、トラウマ的な体験や、引っ越しや新学期などの変化時といった「環境的な要因」と、遺伝や性質などの「生まれ持った要因」の両方によって引き起こされます。ですからまずは、ショッキングな出来事が起こったり、環境が大きく変化する時期には、できるだけ子供が安心できる環境を整えるよう心がけたいです。そしてその子の個性を認め、不安感の強い子がもつ感受性や想像力の豊かさなど「よい面」にフォーカスしてあげましょう。
例えば、慣れるのに時間がかかるという子供の個性を受け入れることで、その子のペースでお友達の輪に入っていくことを待てるようになるでしょう。また初めての場で率先して活発に振舞うことはなくても、お絵描きや積み木にじっくりと向き合うことは得意といったその子の「よい面」にも気づくかもしれません。
環境を整えつつ、個性を認め、長い目で見てゆったりと見守ってあげたいです。
子どもの不安感への対処2.1日5分でも親子でただ楽しむひと時をもつ
子供の不安感は周りの大人の対応によって緩和すると分かっています
すると、1日わずか5分でもこうした関わり方を心がけるだけで、子供の不安感が驚くほど緩和したといいます。ピンカス氏によると、こうした「子供主体の関わり方」が、子供が過度に緊張や心配することなく活動に取り組むをことを助け、温かくリラックスした雰囲気を生み出すためとのこと。
1日5分でも、「こうして欲しい」という親の気持ちを少し横に置き、ただ子供と楽しむ時を心がけてみましょう。
子どもの不安感への対処3.罰、脅し、辱めを用いた「しつけ」は逆効果
不安感の強い子に、「言うこと聞かないなら外に出すよ!(罰)」「我がまま言っていると恐いおじさんに連れていかれるよ!(脅し)」「こんなこともできなくて恥ずかしい!(辱め)」といったしつけは逆効果です。不安感が強い子にとってこうした接し方は、恐れや不安感だけが増し、「なぜしてはいけないのか?」を学習することは難しいためです。まずは親子で気持ちを落ち着け、なるべく話し合いを通して導くよう心がけましょう。
子どもの不安感への対処4.不安を感じる対象の仕組みを知る
着ぐるみや恐い映像に強い不安感を感じる場合は、コスチュームを身に着ける人が休憩する様子を見たり、映画の撮影現場を訪ねるなど、恐がる対象の裏側をのぞいてみましょう。不安を感じる対象の仕組みを理解することで、不安感が和らぐこともあります。子どもの不安感への対処5.「ワクワクするね!」と声をかける
ハーバード大学の研究によると(*4)、審査員の前でスピーチする、難しい数学のテストを受ける、人の前で歌うなど不安感が高まる状況に、ひとつのグループには「落ち着いて!」、もうひとつのグループには「ワクワクする!」と声をかけるようにしたといいます。すると、「ワクワクする」と言ったグループの方が、よりよいパフォーマンスをしたといいます。これは、不安状態から落ち着くより、不安状態からワクワクする方が、脳の機能からみるとより容易なためと説明されています。
例えば子供が、発表会の前など不安になっている場合には、隣で一緒に心配するより、「ワクワクするね!」と笑顔で声をかけてみるのも方法です。不安感に呑み込まれそうな子供も、ワクワク楽しむ気持ちを思い出せるでしょう。
子どもの不安感への対処6.「自分はこれができる!」といった自信をつける
得意なことや没頭できることをもつことで、「できた!」といった達成感を繰り返し体験でき、自信が培われます。例えば、虫が好きで珍しい虫の名前や生態も知っている、走ることが好きで練習を重ね少しずつ速く走れるようになったなど、「自分はこれ!」といったものを積み重ねてあげましょう。自信をもつことで、他のことへの不安感も緩和していく場合があります。子どもの不安感への対処7.思考と現実は同じではないと話し合う
不安感の強い子は、「もし~してしまったら」といった思考が得意なものです。時には考え過ぎて、不安感が増してしまうこともあるもの。「考えていること」と「現実」とは一緒ではないと話し合いましょう。例えば、目を閉じて、「指が緑色になる」と思うよう促します。1分したら目を開け、「緑色になった?」と確認してみるのも方法です。また、少し年齢が上の子には、「明日のテストで失敗する」ではなく、「明日のテストで失敗すると思っている」と言いかえるよう促してみます。現実と思いは、同じではないと自覚するよう助けてあげましょう。
子どもの不安感への対処8.不安感に名前を付ける
不安感に、滑稽な名前をつけてしまうのも方法です。子供の想像力に働きかけ、「おかしな名前をもった生き物」が、周りにちょっかいをかける様子を思い描いてみます。不安感を感じるたびに、この名前を呼んでみることで、よりリラックスできる場合もあると分かっています。子どもの不安感への対処9.少しずつ助けを減らしていく
イェール大学の子供研究センターの研究によると(*5)、子供の不安感への親の許容量を少しずつ減らしていくのも大切といいます。例えば、親と離れることに困難を抱える子が、頻繁に職場に電話をかけてくる場合も、少しずつ電話に出る回数を減らしていくのも方法です。
いつまでも助け続けるのではなく、その子の様子をみながら、無理させ過ぎないよう少しずつ手を引いていくこと。そうして、少しずつ慣らしながら、「1人でも大丈夫」といった自信を培ってあげましょう。
子どもの不安感への対処10.夜寝る前に心配事を話さない
疲れていると問題をより大きく感じてしまうもの。夜寝る前に、不安に思うことを話し合うのは避けましょう。暗闇の中で不安感も増大し、寝入るのが難しくなってしまいます。寝る前に、心配事が押し寄せる場合は、心配に思うことを書き出し、朝や週末に話すと決めておきましょう。不安感とは、適度ならば、万一の事態に備え最善を尽くすことを促す大切な感情です。親子で不安感と上手に付き合う方法を、工夫していきたいですね。
参考資料:
(*1)‘Lifetime Prevalence of Mental Disorders in US Adolescents: Results from the National Comorbidity Study-Adolescent Supplement (NCS-A)’ By Dr. Kathleen Ries Merikangas, et al. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2946114/
(*2)’ Brighter futures for anxious kids’ by By Kirsten Weir March 2017, Vol 48, No. 3 American Psychological Association
(*3)“Growing Up Brave: Expert Strategies for Helping Your Child Overcome Fear, Stress, and Anxiety “ by Donna Pincus Little, Brown and Company, 2012
(*4)‘Getting Excited Helps with Performance Anxiety More Than Trying to Calm Down, Study Finds‘ American Psychological Association
(*5)‘Parent Training for Childhood Anxiety Disorders: The SPACE Program’ by Eli R. Lebowitz, et al. Yale Child Study Center
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