アドバイス1 賃貸であれば老後資金3200万円+退職金
35歳で住宅購入するとして、どの程度の資金計画なら可能なのか。ここで大事なのは、いくらまでなら借り入れできるかではなく、いくらまでなら返済が可能か、ということ。もっと具体的に言えば、住宅ローンを支払いつつ、教育資金や老後資金が用意できるかどうかです。そういう点から試算してみましょう。まずは、住宅を購入せず、ずっと同額の家賃で賃貸に住み続けた場合、今後のキャッシュフローはどうなるでしょうか。現在、定期的に積み立てているのは、毎月4万5000円ですが、このうち児童手当を除く(児童手当分だけあとで加算)と月3万円。これにボーナス月3万円の上乗せですから、年間で42万円。ボーナスからの貯蓄は、収支を見る限り、ほぼ難しい状況です。
ただし、自動車ローンが2020年に終わります。自動車ローンの支払いに充てていた月1万1000円、ボーナス月20万円が貯蓄に回るとすれば、完済後の貯蓄ペースは年間95万円。
加えて、奥様の収入ですが、お子さんが幼稚園入園と同時に、勤務時間を長くして毎月10万円。小学校入学で正社員となった場合、毎月15万~18万円、ボーナス年間40万~60万円になるとのこと。これらアップ分がほぼ貯蓄に反映できるとすると、ご主人60歳となる29年間で、計算上は4300万円ほど貯蓄ができることになります。
一方、大きな支出としては、教育費を含めた子育て費用があります。これを1200万円として、このうち、児童手当の積み立て分と学資保険の満期金で約400万円できますから、残り800万円を先の貯蓄から捻出することになります。さらに自動車の買い替え(2台分)などを考慮すると、60歳までに手元に残る資金は、今ある貯蓄160万円も加算して、3200万円程度(退職金を考慮せず)となるわけです。
アドバイス2 住宅費用は予算2500万円が上限
では、次に住宅購入をした場合を考えます。4年後に貯蓄の上乗せ分は200万円ほど。これを全額自己資金とします(現在の貯蓄分は住宅資金に充てず残したい)。当初の予算は「土地代1500万円、建物2000~2500万円」ですから、仮に諸経費(150万~200万円)込みで計4000万円とすると、自己資金を差し引いた3800万円を借り入れしなくてはいけません。30年返済(完済65歳)、全期間固定の金利1.5%で借り入れると、返済額は月に約13万1000円(ボーナス払いなし)。これに、その他のランニングコスト(固定資産税、将来の修繕費)を加算して、15万5000円とすると、家賃より住宅コストが月9万円アップします。購入後、25年間で2700万円。結果、ご主人60歳時に500万円しか手元に残りません。加えて、65歳まで毎月15万円超の住宅コストが発生します。マネープラン的には、無謀と言えるでしょう。
借入額を下げれば、当然、資金的には余裕が生まれます。借り入れが2000万円なら毎月の返済は月に約6万9000円、2500万円なら約8万6000円、3000万円なら約10万3000円。ランニングコスト全体を考えれば、2500万円借り入れて、60歳の時点で1700万円が手元に残りますので、これが上限でしょう。諸費用を自己資金として出せば、土地+建築費で予算は2500万円ということになります。
しかし、この場合も、奥様が先の収入アップを確実に実現させること、そして少なくとも夫婦とも65歳までは働くことが、欠かせない条件となります。したがって、借入額は2000万円程度に抑えておきたいところです。
アドバイス3 妻が正社員になった時点で再度考えてみる
もう一人お子さんを希望されていますが、その場合はどうか。当然、教育費を含む新たな子育て費用が発生し、また、奥様が出産、育児により、一定期間収入減となります。大まかですが、2000万円の借り入れで、老後資金は1200万円+退職金。退職金は不確定要素であり、65歳まで住宅ローンが続きます。FPとしては「背中を押せない」プランと言わざるを得ません。ただし、まだ考える時間はあります。現状では、お子さんの小学校入学を機に奥様が正社員となれるかどうか。なった時点で、住宅購入を考えても遅くはないと思います。結果、住宅ローンの開始年齢が上がりますが、その分、住宅購入の自己資金も増えます。また、ご主人の転勤も不確定要素。その意味でも、4年後にこだわらず、購入時期を後ろにズラしてもいいのでは。
家計については、ほぼ無駄は見当たりません。節約可能なのは通信費くらいでしょうか。しかも、保険については、ご主人の死亡保障が足りません。持ち家ではないこと、お子さんがまだ1歳であることを考えれば、現時点で少なくともあと1000万円は死亡保障がほしい。保険期間15年の定期保険で保険料は月1500円ほど。早めに確保してください。
自動車保険はこの金額に事情があり仕方ないなら、現状は見直せません。しかし、数年間、事故や自損がない状況が続けば、車両保険は外してもいいかもしれません。おそらく夫婦とも外せば半額~3分の1程度に保険料は下がるはずです。
第二子については、とても大事なことですから、ご主人と十分話し合ってともに納得できる形を探してください。単純に住宅購入と比較できるものでもありませんが、お子さん2人になれば、住宅にかけられる資金は減ります。それでも、物件やエリアによっては購入可能かもしれません。とにかく今は焦らない、慌てないことが大切です。そして、奥様が収入アップを重ね、状況がどうなっても対応できるよう、貯蓄に励んでください。
相談者「晴れ時々雨」さんから寄せられた感想
この度は、相談に乗っていただきありがとうございました。かなり無謀な計画をしていた事がわかったので、私自身の働き方や保険の見直しを夫としていこうと思います。家を建てるにしても、4年後と焦らずに、ある程度貯金がある状態にしてから検討しようと思います。先行き不安ですが、家族皆が納得し、幸せに暮らしていかれるように頑張りたいと思います。本当にありがとうございました!教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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