大ブームの観光列車、満足度ランキングTOP10を決定!
観光列車が相変わらず大ブームで、全国には数えきれないくらいの列車が走っている。そこで、私が取材できた列車について、満足度の高かったものの中からTOP10を選んでみた。それぞれの車両について、車内設備、車窓、飲食サービス、車内イベントなどのユニークさ、沿線観光地の魅力、総合的な満足度を点数化して順位を付けたものである。なお、あまりに高額で抽選倍率も高い超豪華列車(「ななつ星in九州」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」「TRAIN SUITE 四季島」「THE ROYAL EXPRESS」)や駅の窓口では予約できない「或る列車」「TOHOKU EMOTION」などの高級なグルメ列車については別格であり、同一には比較できないので、今回は対象外とした。
<目次>
- 観光列車とは? おすすめ満足度ランキング
- 第10位 HIGH RAIL 1375 (JR東日本 小海線、小淵沢~小諸)
- 第9位 花嫁のれん (JR西日本 七尾線ほか、金沢~和倉温泉)
- 第8位 越乃Shu*Kura (JR東日本 信越本線、飯山線ほか、十日町~上越妙高ほか)
- 第7位 のと里山里海号 (のと鉄道、七尾~穴水)
- 第6位 特急 ゆふいんの森 (JR九州 久大本線ほか、博多~由布院など)
- 第5位 リゾートしらかみ 「橅」編成など (JR東日本 五能線など、秋田~青森、弘前)
- 第4位 SL「やまぐち」号 (JR西日本 山口線、新山口~津和野)
- 第3位 四国まんなか千年ものがたり (JR四国 土讃線 多度津~大歩危)
- 第2位 ろくもん (しなの鉄道、軽井沢~長野ほか)
- 第1位 観光特急しまかぜ (近畿日本鉄道、大阪難波~賢島、京都~賢島、近鉄名古屋~賢島)
観光列車とは? おすすめ満足度ランキング
ランキング発表の前に、観光列車とは何かまとめておきたい。観光列車とは、単なる目的地への移動手段ではなく乗ることを楽しむための列車である。車両に関して
- 専用の車両で運行する。
- 車窓を楽しむための展望車や展望スペースを設けている。
- ゆったりとくつろげるようなグリーン車並の座席やソファー席を設けている。
- アテンダントさんが乗務し、車内や車窓の案内をしてくれる。
- 写真撮影の手助けなどおもてなしが充実している。
- 飲食やグッズの販売などがある。
- 楽器演奏や民話の語りなど沿線ゆかりのイベントが車内である。
- 急ぐ必要がないので、ゆっくり走る。
- 「絶景区間」では徐行したり、撮影のために停車したりする。
- 途中駅でイベントや景色を堪能するため、長時間停車をすることがある。
では、10位から順に見ていこう。
第10位 HIGH RAIL 1375
(JR東日本 小海線、小淵沢~小諸)
2017年夏に登場した比較的新しい列車。高原列車で有名な小海線(山梨県、長野県)を走破する。八ヶ岳、野辺山高原、千曲川、浅間山と車窓を楽しめるのはもちろんのこと、軽食やスイーツセットがオプションで味わえるのが魅力的だ。また、沿線の高原地帯の空気が澄んでいるため星空が楽しめることをアピールし、車内のギャラリー天井に星空映像を投影している。さらに、夜間に運行する列車では、野辺山駅に1時間ほど停車して駅前で星空観測のイベントを行う。こうしたユニークさが評価され、ベスト10入りを果たした。
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第9位 花嫁のれん
(JR西日本 七尾線ほか、金沢~和倉温泉)
北陸新幹線金沢延伸による波及効果を狙って登場した列車。金箔、加賀友禅、輪島塗など地域の伝統工芸の美を取り入れて、豪華絢爛たる車両を造り上げた。とくに1号車は、和風旅館や料亭を思わせる半個室で度肝を抜かれる。
和軽食セット、ほろよいセットなどの食事サービスも充実している。惜しむらくは、車窓が単調な田園地帯がほとんどで魅力的ではないこと。このため、総合点では減点され、上位進出を果たせなかった。
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第8位 越乃Shu*Kura
(JR東日本 信越本線、飯山線ほか、十日町~上越妙高ほか)
越後(新潟県)の地酒を味わうことをメインテーマとした観光列車。飲食のほか、車内でジャズなどの生演奏も企画し、午後の列車では青海駅のホームから日本海の夕景をじっくり楽しめるよう列車ダイヤが組まれている。旅行商品を購入しての旅のほか、駅窓口で指定券のみを予約しての乗車など多様な旅の楽しみ方が可能だ。ルートもいくつかあり、目的や季節に応じて選んで乗車するのも面白そうである。
<関連サイト>
越乃Shu*Kura 公式サイト
第7位 のと里山里海号
(のと鉄道、七尾~穴水)
第9位の「花嫁のれん」と同様、能登観光をアピールするため設定された列車。予算も限られる第3セクター鉄道にあって、車両の改造ではなく、新車を導入したことでやる気を感じさせる。派手さはないけれど、工夫された車内や、アテンダントさんのおもてなしは好感が持てる。
土休日の食事付きコースのほか、平日は気楽に乗れるカジュアルコースもあり、営業努力を評価したい。見ごたえたっぷりの七尾湾に沿って走る車窓は、ビュースポット停車が3ヶ所もあり、アテンダントさんの説明を聞きながらじっくり楽しめる。
<関連サイト>
のと里山里海号 公式サイト
第6位 特急 ゆふいんの森
(JR九州 久大本線ほか、博多~由布院など)
登場して四半世紀。数あるJR九州の観光列車(JR九州ではD&S[デザイン&ストーリー]列車と呼んでいる)の中では歴史ある老舗的列車だ。丸みを帯びたヨーロッパ的なクラシカル調の車体は優雅な感じを漂わせている。木のぬくもりを感じさせる車内は、今でこそありきたりのものだが、デビュー当時は実に斬新で目を見張ったものである。アテンダントさんのおもてなしぶりも旅を上質なものとしてくれる。
2017年夏の豪雨被害で、ルート途中にある久大本線の一部区間が不通になり、かなりの期間、小倉まわり、日豊本線経由で迂回運転された。しかし、2018年7月に復旧し、以前の魅力を取り戻した。人気も上々で、一部列車は増結して5両編成で運転されている。また、車内図書コーナー「ゆふ森としょかん」を設置したり、高級なお弁当の限定販売など、魅力向上に努めていることが高評価され、迂回運転中だった2018年ランキングに比べて大幅に上昇した。
<関連サイト>
特急ゆふいんの森(JR九州の公式サイト)
第5位 リゾートしらかみ 「橅」編成など
(JR東日本 五能線など、秋田~青森、弘前)
2017年4月に運行20周年を迎え、すっかり人気が定着した感のある観光列車で、老舗的存在だ。観光シーズンには1日3往復し、3種類の車両が用いられている。青池編成に続いて、2016年7月にはブナ編成が新しいハイブリッド車両に置き換えられ面目を一新した。
ブナの愛称をイメージした木製のシンボルツリーを車内に配置し、非日常感を演出したり、カウンターや展望室、イベントスペースもあり車内散策の楽しみがある。
津軽三味線生演奏、津軽弁語り部実演といった車内でのイベントのほか、能代駅でのバスケットボールシュート、千畳敷駅での海岸散策など停車駅でのユニークな体験もある。列車は特急ではなく快速列車なので、乗車券のほか指定券(520円、閑散期は320円)のみが必要だ。きわめてリーズナブルな列車で、満足度が高くなる。
<関連サイト>
五能線リゾートしらかみの旅(JR東日本秋田支社の公式サイト)
第4位 SL「やまぐち」号
(JR西日本 山口線、新山口~津和野)
1979年8月より運転されているSL保存列車の先駆けであり、観光列車のはしりとも言える。当初は客車自体に特別感はなかったが、1988年からは、12系客車を大改造した「レトロ客車」に変わり観光色が強まった。
この客車の老朽化にともない、2017年9月より、専用の新型客車が導入された。新型とは言っても、外観はSL全盛期の雰囲気を再現したレトロ風客車である。車内もレトロ風ではあるが、バリアフリー対応、温水洗浄機付き新型トイレ、テーブルに充電用コンセント設置など最新の設備で充実している。また、3号車には運転シミュレータやSLならではの投炭ゲームといったイベントコーナー、SLについての展示スペースや売店もある。さらに、1号車はオープンデッキの展望車付きグリーン車となり、一気に魅力がアップした。これにより、2018年度は圏外であったが、堂々のランク入りを果たした。
SL「やまぐち」号のサイト
第3位 四国まんなか千年ものがたり
(JR四国 土讃線 多度津~大歩危)
「伊予灘ものがたり」に続くJR四国の本格的観光列車第2弾。特急用ディーゼルカーを改造した3両編成の車両は古民家風の落ち着いたもので、テーブル席やカウンター席が主体だ。
大歩危小歩危の渓谷、讃岐山脈の峠越えなど変化に富んだ車窓を眺めながら食事が楽しめるほか、各駅で停車してのイベントなど盛りだくさんの内容で充実している。それでいて、特急グリーン車料金プラス食事代だけで乗車できるので、良心的な価格だと思う。
2018年よりランクが下がったのは、他の列車の得点がアップしたためであって、この列車の魅力が下がったためではない。
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第2位 ろくもん
(しなの鉄道、軽井沢~長野ほか)
旧信越本線の一部区間を転換した第3セクターしなの鉄道が運行する観光列車。JR九州の数ある観光列車を手掛けた水戸岡鋭治氏がデザインした個性的な車両である。ふすま張りの料亭を思わせる和風個室や開放的なテーブル席、こどもが楽しめる木のプールなど楽しさ一杯で、水戸岡氏が「ろく(6)もん」だから「ななつ(7)星」の次に優れた車両と自信を持って製作したとのことだ。
軽井沢~長野間でのレストラン列車としての運行のほか、軽井沢を夕方出発するワイントレイン、JR篠ノ井線に乗り入れて姨捨駅付近での夜景を楽しむナイトクルーズ列車などバラエティに富んだ運行をしていて、リピーターでも楽しめる。軽井沢をはじめ、温泉地やリゾート地が沿線には目白押しなので、「ろくもん」を利用した観光や保養旅行も魅力的である。
2019年1月には、新たに「北信濃雪見酒プラン」が登場、長野駅から黒姫駅まで北しなの線に乗り入れ、冬の信州の魅力をアピールしている。車内で生演奏を行うなど、新たな試みも行い、高評価につながった。
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<公式サイト>
観光列車「ろくもん」の公式サイト
第1位 観光特急しまかぜ
(近畿日本鉄道、大阪難波~賢島、京都~賢島、近鉄名古屋~賢島)
様々な車両で特急を運転している近鉄が、その歴史と伝統を踏まえて威信をかけて世に送り出した豪華な観光特急電車である。ハイデッカー車両やビスタカー以来の伝統である2階建て車両も連結し、独自なカラーは最優等列車であることをアピールしている。
本革を使用した白いシートは電動リクライニングを装備し、豪華さをウリにしている。ほかにグループで楽しめるサロン席、和風個室、洋風個室とバラエティに富んでいるほか、カフェカーは、カウンター席とはいえ、ピラフやカレー、うなぎなど温かい食事が摂れる。往年の食堂車を彷彿とさせる貴重な存在である。
全てにおいて文句なし、プレミアム感たっぷりなのに、べらぼうに高価ではないところが嬉しい。満点を取れなかった唯一の弱点は車窓の魅力である。大阪線の山越え区間、鳥羽付近の海の情景など見どころもあるものの、平坦な区間も多いのが実情である。車窓を楽しむなら、京都発の列車がおススメだ。そうした弱点はあるものの、見事1位になったのは、他の列車を圧倒するグレードの高い車両ゆえだと思う。
<関連サイト>
観光特急「しまかぜ」公式サイト
なお、ランクインした観光列車の項目ごとの点数は以下の通りである。同点の場合は、列車の格(特急や快速)や豪華さが上のものを上位とした。また、TOHOKU EMOTION については、豪華列車に位置づけられるので、別枠として対象外に変更したので、ご了解いただきたい。
※すべてガイドの主観に基づいた評価
観光列車ブームは留まるところを知らず、今後も新規の列車が予定されている。もっとも、一番車窓が魅力的な北海道において、会社の経営不振もあって注目を集めるような列車がない。かえすがえす残念であるが、最近になって東急電鉄がJR北海道の線路を借りて新たな観光列車を走らせる構想を発表した。具体的なことは未発表だが、期待したいと思う。