アドバイス1 55歳までのキャッシュフローを試算しよう
可能なセミリタイアの時期ということですので、55歳までのキャッシュフローを試算をしてみましょう。前提条件として、その間の支出は教育費以外変わらず、収入も変わらないとします。現実と違うと思いますので、計算結果を一つの目安としてください。まずは貯蓄ですが、住宅ローンは毎月の返済に年間100万円、さらに別途、ボーナスから年間150万円以上の繰上返済されていて、昨年完済となったとのこと。したがって、その資金が今後全額貯蓄に回るとすれば、年間250万円。42歳から55歳までの13年間で、3250万円となります。
毎月の貯蓄2万円は、収支から見て児童手当分を貯めていると言えますので、今後2人のお子さんに支給される児童手当の総額をざっくり252万円(※受給期間を長男の方が残り10年、次男の方が12年とする)と見込んで加算します。また、教育費はあとでまとめて差し引くので、現在発生している4万5000円も、ここでは便宜上、貯蓄に回します。これが13年間で702万円。
さらに、確定拠出年金は55歳に退職した場合、退職金と合わせて1000万円(手取りとする)ほど。加えて、加入されている2本の養老保険はともに55歳までに満期となります。その満期金が322万円(税金等考慮せず)。これに今ある貯蓄340万円も合わせて、手持ち資金は総額5866万円となります。
ただし、前述したように、ここに教育費に関わる収支は反映されていません。進路はまだ不確定ですので、大雑把ではありますが、今後かかる総額をお子さん2人で2000万円とします。一方、学資保険が2本あり、満期金は計800万円ですから、差し引き1200万円。これを先の貯蓄から捻出するとすれば、残高は4678万円。ここに、個人年金保険から受け取る年金の総額300万円を加えた4978万円が、セミリタイア後の生活資金ということになるわけです。
アドバイス2 リタイア時期を調整できる程度の老後資金は用意可能
では、セミリタイア後はどうなるのか。退職後、すぐに新しい仕事に就くとします。KENさんの想定だと、年収350万円とのことですが、これを額面とすれば手取りで270万円程度。月割りすると22万5000円となります。55歳以降の生活費ですが、教育費はかからず、保険料コストも1万円(個人年金保険・支払い60歳まで)に減っています。新たに保険に加入するとしても、2万円以下には収まるとします。だとすると固定資産税や不定期支出を考慮しても、生活費は月平均で20万円程度と考えられます。つまり、KENさんの収入だけでほぼ生活でき、その収入が確保されている間は、先に試算した4978万円を生活の不足分として取り崩す必要はありません。
この金額をどう考えるかは個々に違いますが、将来受給される老齢年金の額も考え合わせれば、一般的には老後資金としてそれなりに余裕があると言えるのでは。セミリタイアを55歳としましたが、貯められる金額は減っても、その貯蓄を取り崩し始める年齢を後ろにずらせば、前倒しすることも可能でしょう。つまり、何歳まで働くか、完全なリタイアの時期をいつにするかといったことも、ご自身のライフプランに合わせてコントロールできると思います。
あくまで試算ですから、このとおりにキャッシュフローが推移するとは限りません。とくに、セミリタイア後の働き方ですが、希望される収入で「ストレスを感じない仕事」に本当に就くことができるかは不確定要素と言えます。また、これまでの試算には加えませんでしたが、奥様がパートで働く可能性があるとのこと。プラスマイナスがあるようなので、実際にはそれらの点も十分考慮に入れて検討してください。
アドバイス3 医療保障は満期を待たず、新規で確保
ともあれ、仕事でどの程度、ストレスを感じているかわかりませんが、それで心身が病んでしまうのであれば、本末転倒。収入も大事ですが、体を壊すまで我慢するのではなく、働くことに魅力を感じるような仕事をみつけていただきたいなと思います。最後に相談内容とはズレますが、気になる点を2つ。まず、養老保険ですが、契約者が父親で、被保険者と受取人がKENさんになっていると、贈与税の対象となりますのでご留意ください。
もうひとつ。その養老保険が満期となると、医療保障がなくなるということですが、満期を待たず、新たに医療保障を確保するのも手です。基本的に、若くて健康なうちに加入した方が終身保険の場合は、トータルコストは抑えられる傾向があります。奥様の養老保険に付加されている医療特約も同様。その特約部分を解約して、新たに医療保険に加入する方が合理的かなと思います。
相談者「KEN」さんから寄せられた感想
ただ、漠然とした将来設計を考えておりましたが、八ツ井先生のアドバイスを頂き、セミリタイアに向けた現実的なプランを考えていきたいと思います。このような貴重な機会を設けていただいたことに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
取材・文/清水京武
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