新型シビックは予想外のロケットスタート!?
初期受注で約半数を占めたというハッチバックのエクステリアはなかなかスポーティ。ボディサイズは全長4520×全幅1800×全高1435mm(セダンは全高が1415mmになる)。ホイールベースは2700mm
6年以上の時を経て日本国内で復活を果たした新型ホンダ・シビック。ホンダといえば、ここ20年くらいは、ミニバンやSUV、軽自動車のイメージが強く、20代くらいの若い層にはとくにそうかもしれない。
しかし、1972年生まれの筆者にとっては、80年代後半から1990年代にかけてホンダといえばシビックに代表されるハッチバックやセダンで、あるいはプレリュードといったスペシャリティカーの印象がまだどこかに残っていて、ミニバンやSUVでも乗る前には「ホンダだから」と走りへの期待が高まるのだ。
もちろん、アコードやレジェンドなど、ミニバン・SUV・軽自動車以外のセダンも売ってきたわけで、シビックでいえば日本では空白の年月も世界では売ってきたわけだから、日本で復活を果たした新型シビックへの期待も否応なしに上がるわけだ。
先行受注を含め、発売から約1カ月で約1万2000台の受注を獲得したという新型シビックは、ハッチバック、そしてタイプRが人気で、MT比率は約4割というから走りに対する期待値の高さがうかがえる。
人気はハッチバックで、MT比率も4割に達する
さて、今回の試乗車は6MTのハッチバック、そしてCVTのセダンだった。前者は1.5L直列4気筒直噴ターボを搭載し、182ps/240Nmというスペック(ハッチバックのCVTは220Nm)で、ハッチバックは6MTもCVTもプレミアムガソリンを指定する。
一方のセダンはCVTのみで、同じ1.5Lの直列4気筒直噴ターボを搭載し、173ps/220Nmというアウトプットになっている。こちらはレギュラーガソリン仕様となる。
ステップワゴン、ジェイドと同じ1.5Lの直噴ターボは、先述したようにハッチバック向けはプレミアムガソリンを指定するなどして専用チューンにより、最高出力はレギュラーガソリン仕様よりも9ps引き上げられている。
意地悪く観察していれば、わずかなターボラグを感じさせるものの、自然吸気エンジンのようにスムーズに吹け上がる同エンジンは、ステップワゴンなどと比べても回しても楽しく、しかもMT仕様はCVTよりも20Nm増強されているだけあって、トルク感も十分にある。低速域から中間加速、高速域までストレスを感じさせることなく走りを楽しめる。
MTの仕上がりも上々で、クラッチのつながるポイントも分かりやすく、シフトストロークも短めだ。ただし、適切なドラポジをとっても1速に入れる際にゲートがやや遠くに感じる。
この点は、より長身の人が設計時の標準体型とする世界戦略モデルならではの影響だろうか。とくにペダル配置を含めて違和感がなかっただけに、慣れるまで少し時間がかかった。
また、デジタル性(先進性)を訴求したと思われるメーターデザインやカラーも好みが分かれそうだ。個人的には少し過剰な演出に思えた。運転時に視界に入ってくるメーターだけに、もう少し大人っぽい落ち着きがあってもいいのかもしれない。
一方のCVTを積むセダンも動力性能に不足はないものの、ドラマチックな加速フィールを得られるわけではなく、淡々と回っていく印象を受ける。セダンはより実用車という位置づけなのだろうし、レギュラーガソリンという経済性の高さも考えてもCVT+レギュラーガソリンという組み合わせは妥当だろう。
印象的な乗り心地の良さ
また、走りで印象的なのは乗り心地の良さだ。ボディが大きく揺すぶられるシーンは比較的少なく、フラットライドでワインディングから高速道路、街中でも快適。大きな凹凸やジョイントを乗り越えた際の「いなし」も巧みだ。ホンダに限らず新型登場時の初期型は、硬めの乗り心地を示すモデルが多く、少し身構えていただけに拍子抜けしたほど。
乗り心地で選ぶなら、バックドアに大開口をもつハッチバックよりもやはりセダンの方が一枚上手。リヤタイヤに加わる衝撃はハッチバックよりもさらに小さく、標準装着される215/55R16(ハッチバックは235/40R18)という2サイズ小さなタイヤは大小問わず揺れを正直に伝えてこない。
一方、軽快感があり、高速域では直進安定性も十分に感じられるハンドリングもホンダの期待を裏切らない仕上がり。キビキビ走りたい時には軽やかに、まっすぐ走りたい時はしっかりとした、相反する動きを披露してくれる。
居住性、積載性もCセグメントトップクラス
居住性や積載性もCセグメントとしてはかなり大柄な部類に入るだけあって、広さは十分に確保されている。とくにフットスペースの余裕は上位のDセグメントに迫るかもと思わせるほどだ。また、後ろに行くほど下がっていくルーフラインや、傾斜のきついバックドアのウインドウの形状から気になった頭上空間も不足はあまり感じさせず、身長171cmの筆者なら閉塞感を思えることもなかった。荷室の容量はハッチバックで420L(VDA方式)を確保し、400Lを切るCセグメントモデルが大半の中、ボディの大型化の恩恵を感じさせる。
80年代、90年代のシビックとは別モノといえるほど、大きく立派になった新型シビック。走りやスタイリングにこだわるのならハッチバック、乗り心地や後席の静粛性など快適性にこだわるならセダン。もちろん、スポーツカー並の圧倒的な速さを追求するならタイプRが控えている。モデルライフを通じて売れ続ける手を打っていけば、欧州勢が強いCセグメントで存在感を発揮できそうだ。