3. 仕事上のメリットは
行政書士試験と司法試験の試験科目が共通するということは、それだけ業務が共通することを意味します。たとえば、行政書士業務の基本中の基本と言える建設業の許可申請をみてみましょう。
東京都が発行する建設業許可申請の手引きには、「申請手続の代理については、法律で行政書士又は弁護士に限られてい ます。これら以外の方が、業としてこれを行うことはできません」と注意事項が書かれています。このように実務においても、行政書士業務と弁護士業務は重なることがあります。
それならば、行政書士試験合格後にわざわざ難しい司法試験を受ける必要はないのでしょうか?
そんなことはありません。行政書士は、示談交渉や裁判業務など紛争に関する法律事務をすることはできません。これらは弁護士にならないとできないのです。
以上をまとめれば、「行政書士のできることは弁護士ならばできるが、弁護士のできることは行政書士ができるとは限らない」ということです。
弁護士の資格を取得すれば、行政書士が扱えない業務に関しても仕事にすることができます。これが仕事上のメリットです。
4. どの進路を選択肢すればいいのか
ここまで書くと、「弁護士は行政書士業務をできるのだから、初めから司法試験を狙えばいいのではないか」と考える人もいるでしょう。ただ、司法試験は最難関の国家試験の一つであることは今でも変わりなく、多くの時間とお金と労力を要します。もし、法律職という仕事に就きたいのであれば、実現可能性を考えると、行政書士は非常に魅力的だと言えます。効率よく勉強すれば1年間で合格できますので、時間とお金と労力をあまり要しません。ですから、法律職を希望する方は、行政書士試験から受験することをお勧めします。
ただし、行政書士業務には仕事上のメリットで述べたように限界があり
合格者の中には司法試験の他に弁理士試験を目指す人もいらっしゃいます。
行政書士は本人の代わりに相手と交渉したり、訴訟提起などの裁判業務をすることができないからです。
「社会正義の実践」を担う法律職を希望する方は、行政書士試験からではなく、いきなり司法試験を受験することをお勧めします。
最後に、行政書士試験合格者の方は、受験上のメリット、法律職としてやりたい仕事、どれだけ時間・資本・労力を割けるかを考えて、司法試験を受験するかを決定することをお勧めします。
なお、これも行政書士試験合格者の司法試験受験のパターンですが、最近、行政書士を開業して実務を続けながら、司法試験に合格する人が増えてきました。これもバランスのとれた良い選択肢だと思います。