軽トールワゴン、軽自動車ユーザーはなにを重視するのか
現在、日本で1番も売れているホンダN-BOXのライバル車、スズキ・スペーシアがフルモデルチェンジした。実力さえあれば、N-BOXを抜いてベストセラーカーになることだって十分あり得る。実際、N-BOX天下の前は、同じタイプのダイハツ・タントが日本一をキープしていた。なぜ売れるかと言えば、優れたコストパフォーマンスを持つからだ。150万円程度の予算で200万円以上する白いナンバーの普通車以上のスペースユーティリティを持っており、それでいて税金や保険、整備コストなどは圧倒的にお得な軽自動車。性能だって今のノンビリした日本の交通状況なら問題無し。
今や最も使い勝手の良いタイプだと考えていいだろう。興味深いことにN-BOXが売れている理由は、実用燃費や動力性能の高さではなかった。頑丈に作った結果、重くなってしまい実用燃費を見ると最も悪く、動力性能だって競合車に勝てない。けれどユーザーは真面目なクルマ作りを評価した。
個性的なデザインと燃費性能を改善した新型スペーシア
ISG(モーター機能付発電機)画像
写真を見て頂ければ解る通り、海外旅行用のトランクをイメージしたデザインを売りにしている。また、従来型より燃費性能を改善させてきた。その上で、上手に宣伝すれば軽自動車ユーザーを引き込めるという判断のようだ。皆さん納得すれば、スペーシアは販売台数を伸ばせることだろう。
サイドエアバッグとカーテンエアバッグがオプションで欲しかった
ただ詳細を見ていくと「今まで通りのスズキ流ですね」と思う。例えば側面衝突時の安全性。2018年から「ポール側突」という、電信柱など円柱に横から衝突した時の安全基準が加わる。軽自動車の場合、横滑りなど、電柱に衝突すると、わずか26km/hですら死亡事故になるほどの衝撃を受けてしまう。この基準をクリアしようとすれば、運転席の横に側面衝突時に有効なサイドエアバッグを付ければOK。スペーシアを見ると、サイドエアバッグは全車に標準装備となっている。けれど、運転席+助手席のサイドエアバッグだけしか付かない。後席の乗員を守る後席のサイドエアバッグはオプション設定も無し。
頭部を守ってくれるカーテンエアバッグはスペーシアカスタムHYBRID XSターボにのみ搭載。つまり法規さえ守ればいいというコンセプト。一方、軽自動車も白いナンバーも乗員の命の大切さは同じと考えているN-BOXは、全グレードに4万8千円のオプションで前後全てのシートの安全性に貢献する前後席サイド&カーテンエアバックを選べる。
サポカーS対応の自動ブレーキ装備だが、N-BOXの最新式自動ブレーキと比べるとどうか
自動ブレーキも同じ。カタログを見ると、追突事故時の被害を低減したり歩行者を検知する自動ブレーキが付いており、国交省の定める『サポカーS』になっていると書かれている。けれど使われているセンサーは簡易で安価ながら雨などで簡単に効力を失う赤外線+カメラ式。絶対的な性能の明記もない。N-BOXはホンダで現在販売している白ナンバーの乗用車に付くレーダー+カメラ式のシステムの中で最も優れた最新式を投入してきた。軽自動車1番優れた性能を持つ自動ブレーキを投入してきたのである。前述の通り同じ装備内容で比較すれば、スペーシアはホンダより数万円安い。それをどう考えるかで、クルマ選びは決まると思う。
軽自動車ユーザーの皆さんがどういった評価をするかは解らない。価格や燃費、デザインを評価すればスペーシアなんだろう。けれどカタログで明記されていない「違い」を評価するなら、依然としてN-BOXに軍配が上がる。安全性など重視する皆さんにはジックリ考えたらいい。
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