国交省が民泊などに対応して、マンション標準管理規約を改正
マンションのルールブックが「管理規約」です。マンションの管理組合ごとに自由に作ってよいのですが、円滑に管理を行うために、国土交通省ではひな型となる「標準管理規約」を用意しています。国土交通省は、そのひな型を2016年3月と2017年8月の2度にわたって改正しました。時代の変化に応じて、変えた方がよいと判断したからです。つまり、皆さんがお住まいのマンションの管理規約も、変えたほうがよいことになりますが、どのように変えるのがよいでしょう。
マンションの標準管理規約が改正された
民泊を認めるのか禁止するのか、まずは意思決定を
まず、最新の2017年8月の改正について見ていきましょう。改正のポイントは「民泊」。2018年6月に、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されるのに対応したものです。標準管理規約の改正の内容は、まず管理組合が、民泊をマンションで可能とするのか禁止するのかを決め、実施する場合・禁止する場合いずれも管理規約に明示する必要があるとして、具体的な規約の文例を提示しています。
民泊を正規に実施しようとする場合、(1)規制が厳しい旅館業法の許可を得て営業するか、(2)国家戦略特区でそれぞれ条例の定めに従って認定を受けて営業するか(以下「特区民泊」)、(3)住宅宿泊事業法に従って届け出て営業するか(以下「新法民泊」)になります。
そのため、管理組合では新法民泊と特区民泊の両方を可能にするのか、禁止にするのか、いずれかのみ可能にするのかなどを決める必要があります。
また、新法民泊の場合、住宅を提供するホストが宿泊するゲストと一緒に滞在しているかどうかで「家主居住型」と「家主不在型」の2タイプに区分しています。宿泊事業の色が強くなる家主不在型はNOだけど、家主居住型ならOKという判断もできますので、具体的に可能または禁止する範囲を決めて、規約に明示する必要があります。
ほかにも、新法民泊を行う際に住宅提供者は行政庁に届け出なければなりませんが、事前に管理組合にも届け出を求める場合、新法民泊を行うことを禁止するが、加えて仲介事業者への広告掲載も禁止する場合などについても、規約の文例を提示しています。
民泊を禁止するなら、2018年3月15日が最初の山場
ところで、民泊新法の施行は2018年6月15日ですが、住宅提供者が行政庁に届け出る受付が3月15日から開始されます。それまでに、管理組合で民泊に対する意思決定をしていないと、「営業しようとしているマンションでは民泊を禁止する意思がない」ことを確認したとして、届け出が認められる可能性があります。現在は無許可で民泊を行っている事例がかなり多く、マンション内を見知らぬ観光客が出入りしたり、生活文化の違いから騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルが生じたりといった問題も起きています。こうした無許可営業に対抗するためにも、管理規約で具体的に明示することが有効です。
お住まいの管理組合でできるだけ早く意思決定をして、改正された標準管理規約などを参考に、管理会社と相談しながら対応策を検討していくとよいでしょう。
高齢化、甚大災害、中古活性など時代の変化でルールも変える
さて、民泊新法に伴う改正の前、2016年3月の改正では、さまざまな時代の変化に対応した改正が行われました。高齢化等を背景とした管理組合の担い手不足、管理費滞納等による管理不全、災害時における意思決定ルールの明確化など、新たな課題に対応したルールが盛り込まれています。改正点の大きなものとしては、まず、外部の専門家を管理組合の役員に就任できる道を開いたことですが、ほかにも以下のような多様な改正が行われました。
- 共用部分などに影響を与えるおそれのある専有部のリフォームに対して理事会の承認を必要とするなどの変更
- 駐車場を公平に使えるような選定方法や外部貸しの場合の注意点の提示
- 新築物件の議決権割合を住戸価値割合に連動させる選択肢の提示
- 理事会の代理出席に関するルールの整備
- マンションの管理状況などの情報開示のルールを整備 など
ひな形となる「マンション標準管理規約」では、いくつかの選択肢を提示していますが、どれを選択するかはそれぞれの管理組合に任せています。
中古マンションの売買の増加に伴い、管理状態などの情報を開示する方向に動いていますが、一方で個人情報保護の観点も見逃せません。今のマンション管理は、多様な課題を抱えていますから、どういったルールで運営するのかは大きな問題です。
自分たちのマンション内で快適に暮らすためにはどうしたらよいか、資産価値を保つためにはどうしたらよいかなどを考えて、わが家の管理規約を一度見直してみてはいかがでしょうか。
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