似通った車をまとめて分類
Cセグメントのベンチマーク、7世代目となるVWの基幹モデル、ゴルフ。全長約4.3mの5ドアハッチバックで、1.2Lターボを搭載する。2Lターボを積むスポーティモデルのGTIやR、プラグインハイブリッドのGTEやEVのe-Golfなどもラインナップする。価格は249.9万~559.9万円
ユーザーにとっては、欲しいクルマのライバルを知ることができ、比較検討がしやすくなるというメリットがあるほか、メーカーにとっても、ライバルとの比較検討を促すことで自社製品の優位性を訴え易くなるというメリットがあります。もし、自信をもって“勝っている! ”と言える場合のみ、ですけれど。
年々、クルマのサイズが大きくなってきた昨今、全長のみによる分類は、その時代における水平比較という点ではシンプルで分かりやすいものの、旧型と新型との垂直比較では時として混乱が起こってしまいます。それゆえ、あいまいな区分けになるとはいうものの、価格やサイズ、グレードごとの性能などを勘案して分類する方法が、今なお有効でしょう。後ほど詳しく説明しますが、通常、(欧州)CセグメントとはVWゴルフ相当のクラスであり、DセグメントといえばM・ベンツCクラスに代表されるクラス、となります。
日本では馴染みがない、とは言いましたが、実は、“車格”という言葉で、比較検討用のグルーピングを昔のクルマ好きはよくやってきました。それは、カローラ対サニー、コロナ対ブルーバード、クラウン対セドリックなど、明確なライバル関係を中心に据えた分類でもあったのです。だから、たとえば、クルマをよく知らない人からアコードというモデルについて尋ねられたときには、「ホンダのコロナみたいなものだよ」、と答えるだけで、多くの人が納得したものです。とはいえ、あくまでもライバルとその周辺という区分けでしかなく、さらにあいまいな分類方法ではあったわけですが。
Dセグメントのベンチマークとなる、メルセデス・ベンツCクラス。上級モデル並みの安全・快適装備などを備え,コストパフォーマンスにも優れる。1.6Lターボ2Lターボ、2.2Lディーゼルターボを搭載、プラグインハイブリッドのC350eも用意された。全長は約4.7m、価格は436万~1433万円
つまり、すべてのモデルをセグメントに分けて比較することが以前よりも難しくはなっているのです。けれども、こと欧州車に関していえば、たとえそれがメーカーの言い分に従うものであったとしても、あえてセグメント分類してしまうことで、それぞれの優劣を付けやすくなるというメリットは、いまだに残っているようにも思います。ぼんやりとでもいいから、知っておいて損はない、というわけなのです。
そんなに難しく考える必要はありません。次項では、基本となるセグメント分類について、その代表モデルとともに解説してみましょう。
間もなく次期モデルが登場する、アウディのフラッグシップセダンがA8。こちらはFセグメントとなる。全長5145mmとベーシックモデルと5275mmのロングを用意。3Lスーパーチャージャー、4Lターボ、W12気筒の6.3Lエンジンを搭載、ハイパフォーマンスバージョンのS8プラスもラインナップされ、価格は1140万~2028万円
Aセグメント 一人+αのパーソナルビークル
欧州の主要メーカーにおける、最も小さいモデル。排気量も1Lを切る場合が多く、割り切った造り方になっています。日本の軽自動車も理屈的には含まれますが、独自の規格によって進化しているため、含めない方が分かりやすいでしょう。その国を代表する最も一般的なビッグ(=大衆)ブランド、ドイツならVW、フランスならルノー、イタリアならフィアットの最小モデルが相当します。パワートレーンの種類は限られており、主に一人+αのパーソナルビークル的な扱いです。
往年の名車をモチーフとした、全長約3.6mの3ドアハッチバックのフィアット500。ポップなデザインが魅力。0.9L直2ターボと1.2Lエンジンに5速シングルクラッチのデュアロジックを組み合わせる。価格は199.8万~259.2万円
ベースをスマートと共有する全長約3.6mのルノー トゥインゴ。RRレイアウトを採用、0.9Lターボと1Lエンジンを搭載する。価格は189万~199万円、2017年にはホットハッチのGT(224万円)も200台限定で用意された
Bセグメント 二人+αまでカバーできる、最も小さなオールマイティカー
VWの5ナンバーサイズのエントリーとなるのがポロ。全長約4mと、ちょうど一昔前のゴルフの大きさと同じ位で、街中で使うのにちょうど良いサイズだ。1.2Lターボと1.4Lターボ搭載、1.8Lターボを積むハイパフォーマンスモデルのGTIもラインナップ。価格は199.9万~337.9万円
割り切ったコンセプトのAセグとは違って、後席もちゃんと使えるし、荷物もまずまず積める。実用的には二人+αまでカバーできる、言ってみれば最も小さなオールマイティカーです。基本的には、A、B、セグメントともにハッチバックスタイル(2ボックス)となります。
ルノーの新デザインアイデンティティを取り入れた挑戦的スタイルをもつ、コンパクトハッチのルーテシア。全体として“魅せる”デザインとしたフランス車らしいインテリアを備える。0.9Lターボと1.2Lターボを搭載、スポーツモデルのルノー・スポール(R.S.)もラインナップされ、価格は204万~329万円
往年の名車を現代に蘇らせたMINI。内外装はクラシックMINIのモチーフを取り入れた個性的な仕立てとなっている。3世代目となり3ドアハッチバックも全長約3.9mという大きさに。1.2Lターボ、1.5Lターボ、1.5Lディーゼルターボ、2Lターボ、2Lディーゼルターボを搭載する。オプションも豊富に用意され、価格は230万~429万円
Cセグメント ほとんど乗用車のスタンダードと言っていい領域
PSAグループのモジュラープラットフォーム(EMP2)を採用した、プジョーンの基幹モデル、308。フランス車らしい実用車の合理性をもつ5ドアハッチバック、1.2Lターボと1.6Lと2Lのディーゼルターボを積む。SWと呼ばれるステーションワゴンや、1.6Lターボを積むハイパフォーマンスモデルのGTi byプジョースポールも用意される。価格は279万~436万円
基本の車型はハッチバックですが、AやBとは違って、セダンやミニバン、SUVなど、派生型も増えてきます。これもまた、乗用車の中核であるということの証というわけです。このクラスのスタンダードは、今も昔も変わらずゴルフ。そして、高性能仕様や高級仕様の存在も、このセグメントから顕著になってきます。
メルセデス・ベンツのエントリーモデルとなるAクラス。トールタイプだった旧型から、全長約4.3mのスポーツコンパクトにモデルチェンジを果たしている。1.6Lターボを搭載、AMGが開発から関わったA250シュポルトなど、スポーティなイメージに仕立てられている。価格は298万~711万円
プレミアムコンパクトクーペ&カブリオレのBMW2シリーズ。全長約4.4m、セグメントで唯一のFRや前後重量配分約50:50など、スタイルも含めスポーティな仕立てとされている。2Lターボを搭載し、価格は503万~683万円、3LターボのハイパフォーマンスモデルM240もラインナップ
Dセグメント 実用+α。ブランド毎の哲学や性格を最も流暢に表現
BMWの大黒柱、スポーティな3シリーズ。全長約4.6m、1.5Lターボ、2Lターボ、3Lターボ、2Lディーゼルターボに8ATを組み合わせる。プラグインハイブリッドの330eもラインナップ、価格は419万~1256万円。ベースグレードに加え、スポーツ/ラグジュアリー/Mスポーツという3つのスタイルを用意している
このセグメントから、ステーションワゴンやSUV、ミニバン、クーペ&オープンといった派生モデルのバリエーションもいっそう豊かになっていきます。実用プラスα、というわけで、ブランド毎の哲学や性格を最も流暢に表現するモデル群であると言えるでしょう。
VWの上級セダン&ステーションワゴン(ヴァリアント)のパサート。全長約4.8mのボディにダウンサイズエンジンの1.4Lターボを搭載する。乗り味は現代的で実用的、いまどき珍しい質実剛健という賛辞が似合うモデルだ。プラグインハイブリッドのGTEも用意され、価格は329.9万~582.9万円
アルファロメオのミドルクラスサルーンとしては75以来のFRを採用したジュリア。これまでより上級志向の仕立てとされた。全長約4.6mと標準的だが、全幅は1.87mとやや幅広なボディに2Lターボを搭載。ファラーリが生産する3Lターボを搭載したハイパフォーマンスモデルのクアドリフォリオも用意。価格は446万~1132万円
Eセグメント ブランドのコアバリューを体現する“儲け頭”
乗用車のグローバルスタンダードに位置付けられる、プレミアムなメルセデス・ベンツEクラス。自動運転に近づく安全運転支援システム(ドライブパイロット)など先進装備を多数装備する。全長約5m、Sクラスに負けない内外装の仕立てもポイント。2Lターボ、3.5Lターボ、2Lディーゼルターボを搭載、プラグインハイブリッドのE350eもラインナップされ、価格は682万~1838万円
高級志向がいっそう顕著となり、大排気量マルチシリンダーエンジンを積むグレードを最上位に用意していますが、それもまた最近ではダウンサイジングが進んでいます。とはいえ、ブランドのコアバリューを体現する“儲け頭”であることには変わりはなく、特にプレミアムブランドは、最も力を入れてくるセグメントと言ってもいいでしょう。ステーションワゴンやクーペ&カブリオレ、SUVにもセグメントは展開されています。
7世代目となるアッパーミドルサルーンのBMW 5シリーズ。内外装の仕立ては7シリーズゆずりのラグジュアリーな仕立てに。リモート・コントロール・パーケイングや部分自動運転を可能とする運転支援システムを標準化、2Lターボ、3Lターボ、2Lディーゼルターボを搭載、プラグインハイブリッドの530eや4.4Lターを積むハイパフォーマンスモデルのM5もラインナップされ、価格は617万~1703万円
7世代目となるアウディのアッパーミドルサルーン&ステーションワゴン(アバント)。ライバル2モデルと比べFFを基本に4WD(クワトロ)を用意し、FRメインのライバル達と趣きが異なっている。プレミアムブランドらしい高級感のある内外装も魅力。1.8Lターボ、2Lターボ、3Lスーパーチャージをラインナップ、価格は634万~1823万円
新世代ボルボのフラッグシップとなるのが、90シリーズのセダンモデルS90。全長約5mのクーペライクなエクステリアに、スカンジナビナンラグジュアリーを体現したインテリアを備えた。自動運転レベル2相当のパイロット・アシストなど15種類以上の安全・運転支援システムを備える。2Lターボと2Lターボ+スーパーチャージャーを積み、価格は644万~842万円
Fセグメント 価格は1000万円オーバー。最先端の技術に触れたいなら
「最高の自動車」を目指したメルセデス・ベンツのフラッグシップセダンがSクラス。安全性や快適性、効率などが徹底的に追求されている。全長5125mmとベーシックモデルと5255mmのロング、5465mmのショーファーモデルのマイバッハをラインナップ。ハイパフォーマンスのAMGも用意され、価格は1128万~3323万円
各ブランドとともに、このセグメントにはその世代で持ちうる最高の技術や機能を惜しみなく注ぎ込んでいます。それは、さながらテクノロジー見本市のよう。今、最先端の技術に触れたいというのであれば、迷わず、最新のFセグメントモデルに乗るべきでしょう。
ボディ構造にCFRPを取り入れたカーボン・コアを採用する、BMWのフラッグシップ7シリーズ。ステレオカメラを用いてサスペンションを調整する機能や部分自動運転を可能とする運転支援システムを標準化。全長5110mmとベーシックモデルと5250mmのロングを用意。プラグインハイブリッドやディーゼルモデルなどもラインナップし、価格は1066万~2471万円
100年以上の歴史をもつイタリアン・ラグジュアリーブランド、マセラティのスポーティなサルーンがクアトロポルテ。フェラーリで生産される3Lターボと3.8Lターボを搭載する。快適性と高級感をさらに高めたグランルッソ、スポーティさをさらに強調したグランスポーツという2つのトリムラインを用意する。全長約5.3m、価格は1206万~1946万円