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ロボアドは投資の荒波に勝てるのか?

コンピューターに依存したAI投資が話題になっています。ロボアド運用として商品化する金融機関も増えてきました。人間が関与しないことにより、コストの低い資産運用ができることがメリットです。この10年の実績によれば、素晴らしいリターンを記録しているのですが、問題点はどこにあるのでしょうか?

北川 邦弘

執筆者:北川 邦弘

はじめての資産運用ガイド

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ロボアドバイザーは庶民の味方?

投資や資産運用はだれもが必要だと思っても、いざ自分で始めるには敷居の高い世界です。そこでいま注目されているのが、ロボットアドバイザーの登場です。ロボアドによる運用とは、コンピュータープログラムによる、機械的な運用指図で、お金を増やしていこうという手法。

具体的には、資産配分の決定、投資銘柄の選定、資産配分の維持などを、人間が関与することなく、自動的に行われるものです。メリットとしては、マンパワーが不要なので、コストが安いことがあります。

ロボアドによる運用を、商品提供している証券会社には、楽天証券、THEO、ウェルスナビ、マネラップ、投信工房などがあります。今後も、ロボアドの運用を商品化してくる金融機関は、銀行を含めて増えてくることでしょう。

10年実績の成績は素晴らしいが

ロボアド運用を始めるときは、どの会社を選んだらいいかという比較サイトまで出来ていますから、参考にされたらいいと思います。

比較サイトで比べているポイントは、次の3つです。
・コストが安いのか(0.5~1%/年間)
・実績リターンが高いのか(10~13%/年間)
・最低いくらから始められるのか(1~30万円)

2007年のリーマンショック以来、株式市場は堅調に回復していますから、ロボアドによる運用実績を、この10年くらいで集計してみれば、良好な数字に驚かれることでしょう。

しかし、それは外部環境が穏やかだったからであって、ロボアドの優秀性を示すとは限りません。ETFでも、単体の投資信託でも、あるいはファンドラップであっても、同等かそれ以上の実績を残しています(何と比較するかが肝要)。

運用において決定的に大事なことは?

投資において、決定的に大事なことは、暴落時(大底)にどうするか?バブル時(天井)にどうするか?という判断です。たとえ、年0.5%のコストを改善し、年1%の超過リターンを得ていたとしても、あるいは、その快適な優位性を、10年も維持できていたとしても、その累計は15%に過ぎません。

本物の株式市場は、ハイリスクハイリターンの世界です。10年間で100%増えた資産を、半年間ですべて失ってしまうというようなことが起こり得ます(実際に、リーマンショックで出現しました)。

そういうマクロの荒波の中で、100%のリターンをガッチリ確保して、100%のロス(ドローダウン)を回避することができた場合、何もしなかった場合と比べて、リターンの差異は100%となります。年間1%程度の優位差を意識していても、マクロで負ければ100%の劣位を食らうことがあるのです。

ダイナミックなリターンを築くのは、AIか人知か?

相場の天井と大底を示すような、ダイナミックで機敏な判断はだれがしてくれるのでしょうか?それは、間違いなくロボットやコンピューターではなくて、人間です。人知の介入が、決定的なリターンを作ってくれるのです。

現実には、投資タイミングの選択が、致命的な差になって、結実します。けれど、ロボットは、相場の天井で売り、大底で買い戻すようなアドバイスを、決してしてはくれません。

大暴落が来ても、何もしないで放置しておけば、5年も経てばいずれ戻るという見解もあります。もちろん、それはその通りなのですが、ロボアドに興味を持つような投資ビギナーが、5年間もの損失に耐えられるでしょうか。暴落時に何もしないという選択は、強い信念と明確なサポートがなければ困難です。単純ですが簡単ではありません。その意味で、相当に高度な投資術であります。

嵐に備える本当の運用とは?

順風満帆な穏やかな季節に、どの方法が効率的か(低コスト高リターン)を考えるのは、愉快なことです。それは、山を登る時に、平均気温で服装を判断するくらい、優し過ぎる思考です。

しかし、長期の運用期間の中では、嵐をどう避け、最低気温をどう予測するかで、生還できるかが決まります。航海でたとえれば、どの海流に乗るかで、到達距離は大きく異なります。ロボアドが、投資の荒波に勝てるのか?歴史を振り返って、慎重に判断しなければなりません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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