お金の悩みを解決!マネープランクリニック/老後のお金や介護費用が心配な人の相談

47歳貯金500万円。老後のお金が足りるのか不安です(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、iDeCo、外貨建て保険、繰上返済…などが気になり老後が不安な40代の女性会社員。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 60歳以降も働くことで老後資金は大きく変わる

ご相談要素がいろいろありますので、先に結論から申し上げます。老後に向けて家計を見直し、iDeCo利用と貯蓄を行い、かつ60歳以降も働けば、老後資金はさほど心配する必要はありません。その間、住宅ローンの繰上返済も行えば、さらに老後の家計にゆとりが生まれます。少なくとも、このままだと老後資金が足りないという理由で、外貨建ての保険に加入する必要はありません。

順序立てて説明します。まず、現在の貯蓄ペースですが毎月10万円。ただし、次女の方が大学を卒業する2年後からは、少なくとも教育費がなくなります。その後の家族構成は未定(お子さんの独立など)ですが、仮に生活費は変わらないとすると、ご主人定年の60歳までの11年間で、およそ1700万円ほど貯蓄を増やすことができそうです。今ある貯蓄と合わせると2200万円。

対して、今後の大きな支出としては、残りの大学費用260万円があります。その他、クルマの買い替え等があったとして、それらを差し引いて、60歳のとき1700万円が手元に残るとします。

60歳以降ですが、まず生活費は現在と同じ生活水準で、世帯はご夫婦2人だけとすると、28万円前後(住宅ローンの支払いも含む)といったところでしょうか。収入は、65歳まで夫婦とも雇用延長し、3分の2に減収したとすれば、手取りで計32万円。ご主人65歳までの5年間で400万円ほど(ご主人62歳までは奥様の収入は現状のままとして計算)貯蓄を上積みできそうですので、老後資金は2100万円に増えます。

一方、もしも夫婦とも60歳でリタイアしたら、年金受給までともに5年間無収入となります。計算すると、ご主人65歳のときの手持ち資金は、およそ500万円に目減りすることに。収入などはあくまで試算ですが、資金的には60歳以降も働くことがいかに大切かがわかるはずです。
 

アドバイス2 住宅ローンの繰上返済は積極的に行いたい

次に、ご主人65歳以降を考えます。ご夫婦の厚生年金の加入状況はわかりませんが、公的年金の受給額を合算で月額25万円(額面)とします。そこから、税金や社会保険料を差し引くと、毎月7万円程度の赤字となりますが、74歳のときに住宅ローンが完済となり、それ以降は公的年金だけで普段の生活費はカバーできそうです。

結果、ご主人が90歳のときに残る手持ち資金は1300万~1400万円。これに長生きリスクや住宅のリフォーム費用、介護や医療の費用を考慮しても、それなりに資金を備えられていると言えるでしょう。年金額がご相談文にあるように月額22万円なら、残るのは400万~500万円。安心できる額ではありませんが、必要最小限備えていると思いますし、家計改善等で安心できる額に増やせる範囲でしょう。

さて、老後資金をご相談者は心配されていますが、老後不安を解消するための対策は、大きく分けて2つあります。ひとつは生活のダウンサイジング、もうひとつは老後資金を増やすことです。この両輪があって、老後対策は十分に機能します。

とは言え、60歳になった時点で生活費をスパッと落とせるかと言えば、そう簡単ではありません。今のうちから家計の無駄を省き、生活費を下げることを習慣化しておくことが大切です。

どこを見直すかは各家庭の優先順位によりますが、例えば趣味娯楽費と家族の小遣い、雑費で計9万円。このあたりは削りやすいのではないでしょうか。また、保険ですが、ご主人の医療保険に死亡保障の特約を付ける必要性は感じません。お子さんの共済も不要でしょう。

また、生活費を下げるという意味では、住宅ローンの繰上返済も有効です。奥様が心配されているとおり、完済が74歳というのはそれだけでリスクとなります。固定支出ですから、家計状況にかかわらず、その返済は避けられないからです。

ただし、先の試算どおり貯蓄が進み、かつ60歳以降も働くことができれば、積極的に繰上返済ができるはず。「住宅ローン用に毎月5万円積み立てる」とありますが、いいと思います。そのペースで貯めて、60歳の時点で700万円を繰上返済するとすれば、返済期間は9年7カ月、返済利息は約79万円軽減できます(その間、利息が変わらないとして計算)。

また、この程度のまとまった額を返済に充てても、手持ち資金は1000万円残ります。もちろん、前倒しで200万円、300万円と複数回行ってもいいでしょう。ともあれ、少しでも返済期間を短縮することは、老後資金にとって大きな負担軽減になるのです。
 

アドバイス3 保険という名の「投資」に頼る必要はない

もうひとつ、老後資金を増やすことについては、年代によって異なります。50代になれば運用の比率を下げ、元本保証の商品を中心に確実に増やしていくことが重要です。したがって、低金利であっても、メインは定期預金などで貯めていけばいいでしょう。

一方、検討されているiDeCoですが、おススメです。ぜひ、始めてください。積立額も4万6000円でいいと思います。最大のメリットは節税効果があること。おそらく、ご夫婦で3万円以上は税金が戻ってくるのでは。10年間で360万円。運用でこれだけ利益を得るのは大変です。

また、iDeCoへの拠出は60歳までですが、引き出しを開始するのは最長70歳まで。つまり20年間運用ができるわけです。全額を運用に充てず、一部は定期預金タイプの商品を選択して確実に貯めてもいいと思います。

最後に、米ドル建ての養老保険ですが、死亡保障は不要ですから、求めるのは貯蓄性となります。「1米ドルで80円より円高であれば損はない」とのことですが、80円を割らないという保証はありません。為替は誰にも読めないのです。もし本当に割らないなら、米国債を購入した方が、コストは安く済むはずです。また、80円は割らなくても、85円で得られる利益が小さいなら、あえてこの保険商品を選択する理由がなくなります。しかも、支払った保険料は自由に引き出せません。

もちろん、大きく利益を得る可能性もあります。ということは、保険という名の「投資」ということです。そしてそれだけのリスクを取るだけの資金的余裕はありません。こういった保険に頼らなくても、老後資金は十分準備できる家計だと、私は思います。
 

相談者「笑う門には福来るさん」から寄せられた感想

老後資金については さほど心配しなくてよいとのことでしたので安心しました。外貨建ての保険は やはりリスクが高いので先生のアドバイスとおりやめておきます。iDeCoも投資ではありますが節税効果が期待できるので加入します。これから 何が起こるか分からないので、貯められる時にはしっかりと貯蓄しておきます。相談して良かったです。ありがとうございました。


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
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マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武

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