中小企業診断士/中小企業診断士資格の基本情報

【中小企業診断士】税理士・社労士・行政書士との違い

経営コンサルタン資格である中小企業診断士とよく比較される他の国家資格、税理士・社会保険労務士・行政書士。これらの違いについて、実務内容・受験資格・合格に要する期間などをご説明します。

つだ まどか

執筆者:つだ まどか

中小企業診断士ガイド

中小企業診断士資格と比較されやすい国家資格は?

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どの資格にしよう?


社会人が転職・独立・副業・キャリアアップなどを視野に入れた資格取得を目指す際、学位であるMBAと比べられやすい中小企業診断士資格ですが、他の国家資格と比較されるケースもよくあります。

例えば、税理士・社会保険労務士・行政書士・司法書士・FP・公認会計士などです。

私自身も「キャリアアップしたい」と思った20代の時、漠然と“国家資格”というカテゴリの中でリサーチしたのを覚えています。

現在、私が講師を務めるTACではあらゆる資格講座をラインナップしているため、中小企業診断士講座の説明会でも他士業との違いを聞かれることが少なくありません。

質問される機会が特に多いのは、税理士・社会保険労務士・行政書士です。

 

中小企業診断士・税理士・社労士・行政書士資格の共通点と異なる点
 

幅広い経営知識やスキルを習得する中小企業診断士資格ですが、これら3つの資格の共通点として、国家資格であることが挙げられます。

共通して異なる点は、中小企業診断士が従事する業務そのものは資格取得者以外でも従事できるのに対し、他資格は独占業務を有しているということです。

業務独占資格は法で定められており、ある特定の業務においてその資格取得者だけが従事できる業務を有する資格のことをいいます。資格取得者でないものが、該当する業務に従事することは禁じられています。

税理士であれば税務、社会保険労務士であれば労務、行政書士であれば行政関連を中心とする書類作成業務といった独占業務があり、いわば資格そのものが専門性を有すスペシャリスト資格なのです。

一方で、中小企業診断士はそれぞれの得意分野において、ある特定の業種を専門とする者、経営コンサルティングや講師業など特定の業務を中心に活動する者、企業内において中小企業診断士としての知識やスキルを活かす者など、その活躍ステージは様々です。

また、中小企業診断士は特定の業務に偏らず、幅広い業務に対応できるゼネラリスト資格であるという特徴があります。

以下に、受験資格・平均的な取得期間・業務内容について、比較しながらご紹介します。


中小企業診断士は幅広い層が、それぞれの得意分野で活動している


中小企業診断士は、誰でも受験できる経営コンサルタントの国家資格です。

平均的な資格取得までに要する期間は、1~3年程度です。

中小企業診断士業務は“診る・書く・話す”と一般的にいわれており、企業診断業務(コンサルティング)、執筆業務、研修・セミナー・講演など講師業務、調査・リサーチ業務などに従事しています。

もちろん、一般的な中小企業診断士業務の枠に留まらず、実務家として活躍している方も、たくさん存在します。

もっとも多くを占めるのが、企業に勤めながら本業に診断士資格を活かしたり、週末などに診断士業務に従事する企業内診断士です。


税理士は税務のスペシャリスト


税理士の主な業務には、個人や企業から依頼を受けて、法人税や事業税、所得税、相続税、固定資産税などの税務を代行する書類作成や申告、税相談があります。

企業にとって重要なデータである帳簿や財務諸表などを把握していることから、経営者にとって頼もしい相談役として挙げられるケースも多いようです。

税理士試験の受験資格は、

(1)学識
(2)資格
(3)職歴
(4)認定

の4種類があり、いずれか1つを満たせば受験することができます。

受験資格がない場合は、日商簿記1級に合格するなどして、受験資格を得る必要があります。

税理士資格は5科目に合格する必要がありますが、科目合格の有効期間がないため、自分のペースで何年もかけて取得される方も多いです。

ビジネスパーソンの場合は、働きながらある程度の学習時間を確保することになるので、例えば1年ごとに1科目のペースで順調に合格すれば、5年で取得できる、ということです。

中には、学生や税理士試験に専念される方もいるので、全体としては合格までに3~5年程度を要するケースが多いようです。

資格取得後は、税理士事務所や会計事務所を開業したり、勤めたりするケースが一般的ですが、近年は税務に留まらず企業や個人のコンサルティング業務にまで活動の幅を広げる方が増えています。


社会保険労務士は労務のスペシャリスト


社会保険労務士の主な業務として、労働社会保険手続き業務、企業の労務や個人の年金などの相談業務などが挙げられます。

例えば、就業規則の作成は、社会保険労務士業務の代表的なものとしてイメージしやすいでしょう。

社会保険労務士の受験資格は、

(1)学歴
(2)実務経験
(3)厚生労働大臣の認めた国家試験合格

の3つがあります。

例えば、企業の人事部において3年以上、労働社会保険諸法令に規定された実務に従事している者、中小企業診断士などの国家資格に合格している者は、受験資格を有します。

社会保険労務士試験は合格レベルに到達しても運に左右される要素が多い試験で、合格までに要する期間も一概には言えませんが、2~3年程度の学習期間を経る方が多いようです。

中小企業診断士と同様、一発合格される方ももちろんいらっしゃいます。

合格後は、社会保険労務士事務所への勤務や開業、引き続き企業の人事部に勤めるケース、他士業とのダブルライセンスで活躍される方も多くいらっしゃいます。


行政書士は、書類作成業務のスペシャリスト


行政書士の業務は幅広く、役所などに提出する許認可等の申請書類の作成・提出手続代理、契約書の作成、事実証明や権利義務書類の作成等があります。

ビジネスを行う上で契約書は欠かせないものですが、契約書以外にも示談書、告訴状、各種議事録、会計帳簿等、数千種類の書類作成業務が行政書士法で定められています。

また、個人を対象とした遺言書の作成や成年後見なども、行政書士の業務範囲です。

幅広く書類作成業務を手掛けることと、弁護士など他の法律の専門家と比べると身近な存在であることから、「まちの法律や」と呼ばれることもあります。

行政書士試験は、中小企業診断士試験と同じで、誰でも受験することができます。

受験資格のハードルがないことから合格率はそれほど高くありませんが、必要な学習時間を確保してコツコツ取り組むことで1~2年程度で合格している方が多いようです。

合格後は、行政書士事務所を開業するという道もありますが、行政書士会への入会費・年会費などがばかにならないことから、あえて行政書士登録をせず、資格合格者として有資格者の補助業務に従事するケースも多いようです。


中小企業診断士はコーディネーターとして、スペシャリストである他士業との橋渡しを担う立場


ゼネラリストである中小企業診断士は、幅広い視野で企業経営の診断・助言業務を行うことはできますが、各分野にはそれぞれスペシャリストが存在し、そこに立ち入ることはできません。

しかしながら、中小企業診断士の幅広いネットワークを活かして、時にはリーダー的なポジションでプロジェクトのコーディネーターを務めるケースが少なくありません。

その際には、税理士・社会保険労務士・行政書士などの他士業と連携しながら、実務を行っていきます。

他士業の方が、中小企業診断士とのダブルライセンスを目指すことが多い理由も、ここにあるのかもしれません。

 



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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