部分入れ歯と総入れ歯の違い

部分入れ歯のクラスプ

部分入れ歯は、歯に固定するための金具(クラスプ)があります。

まず知っておきたいのは、入れ歯の種類と違いです。右下部分だけの入れ歯であれば「下の部分入れ歯(部分床義歯)」、上下どちらか、例えば上あごだけ全て入れ歯の場合は「上の総入れ歯(全部床義歯)」と言います。

部分入れ歯は例外を除き、入れ歯となっている歯の本数が1本から13本までの種類があります。部分入れ歯の場合、残っている歯に、入れ歯を固定するための「クラスプ」と呼ばれるアームを設置します。これは総入れ歯の場合はありません。

上下どちらかのみも含めて総入れ歯の場合は、歯ぐきや粘膜の広い範囲に密着させることで吸盤のように真空状態を作って固定します。アームがなくても入れ歯が動かないように吸着させる方式です。

また、「総入れ歯」というと、残っている歯が1本もない状態と思われがちですが、少し違います。例えば歯の根っこである「歯根」が残っていても、歯の頭部分である「歯冠」がない場合などは、歯の根だけを残して、頭はただのドーム状に詰めたり金属で作ったりする「根面板」にし、ここを総入れ歯として覆うこともあります。

部分入れ歯にするか総入れ歯になるかは、歯根・歯冠の有無によっても変わるのです。

入れ歯使用を始める目安・初年齢……部分入れ歯は30代から

一般的には、いきなり総入れ歯になることはないでしょう。最初は必要な箇所に部分入れ歯を使用し、徐々に歯の本数が減少していくのに合わせ、最後に総入れ歯になるのが一般的です。通常は抜歯をしても、前後の歯の計3本を連結してブリッジで被せることができます。しかし、奥歯がなければ、ブリッジを作ることができません。そのため、最初に入れ歯が使われるようになるのは、片側で一番奥と二番目の大臼歯という2本の歯が失われた時が目安となります。

つい先日発表になった厚生労働省の平成28年度歯科疾患実態調査によると、入れ歯使用の初年齢は、部分入れ歯では、35~39歳から1.6%の人が使用開始して、49歳までこの割合で進みます。その後55~59歳で10.6%となり、65~69歳で31.0%、さらに徐々に増加して、85歳以上で46.3%の最高の使用率となります。

「85歳で半数以下」と聞くと、意外と少ないと思われるかもしれませんが、実は、部分入れ歯から総入れ歯に移行している人もいるため、入れ歯自体の使用率はもっと高くなります。次に総入れ歯を使用割合を見てみます。総入れ歯の場合、50~54歳が初年齢で0.9%。その後65~69歳で8.9%、85歳以上で46.3%となります。

部分入れ歯と総入れ歯を合わせた、入れ歯自体の使用率は、50~54歳で7.2%、60~64歳で22.8%、70~74歳で52.9%、85歳以上で92.6%となります。同じように過去に行われた11年前の平成17年歯科疾患実態調査と比較するとわずかながら、総入れ歯、部分入れ歯の利用は、減少傾向でそれだけ歯の寿命が延びていることわかります。

隠れ入れ歯予備軍……入れ歯をつけないメリット・デメリット

実際に入れ歯を使用している人の割合の他に、実は本当は部分入れ歯を使用すべき状態にも関わらず、入れ歯に強い抵抗があるため、使用していないケースも出てきます。入れ歯やブリッジの未装着というケースです。今回の統計では、60~64歳までは、抜いた部分を放置する本数が増え続け、その後に減少します。

おそらく60~64歳までは部分入れ歯や、ブリッジを使わずに粘り、その後に噛める歯がほとんどなくなったため、仕方なく入れ歯を使い出すのでしょう。実際に診療していても、このようなケースはよく見かけます。

入れ歯やブリッジの未装着でのメリットとは、残りの歯を削らずに済むことや、入れ歯使用の際の着脱などの手間がかからない、入れ歯が合わないなどの問題が起きない、入れ歯を口に入れておく異物感がないなどがあります。

デメリットとしては、噛み合わせの力の負担が、歯の本数の減少と比例して増大してしまうため、本数が少なくなると加速度的に残りの歯がグラグラになったりすることになります。どんなに入れ歯を使いたくなくても、65歳を過ぎた頃から入れ歯に移行せざるを得ない状態になることを考えた方が良いのかもしれません。

それでも歯科疾患実態調査のたびに、歯の疾患が減少傾向になっているため、今後も入れ歯の装着年齢の上昇と、装着者の減少が期待されています。
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