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犬の「カーミングシグナル」とは?種類と向き合い方

犬の気持ちを知りたい方は必見! 犬が気持ちを伝えるために行っているカーミングシグナルについてご紹介します。カーミングシグナルを知ることは、単に犬のきもちを理解するに留まらず、より良い関係性を築くために大いに役に立つものです。

川崎 恵

執筆者:川崎 恵

犬ガイド

犬のカーミングシグナル……犬の気持ちを理解するために欠かせない!

犬の「カーミングシグナル」とは?

家族だからこそ愛犬のきもちが知りたい!

犬を家族に迎えた方たちが共通して想うこと。それは、「この子の気持ちを知りたい!」ではないでしょうか? 愛する存在だからこそ、彼らの真意を知りたいし、知った上で共に心地よいコミュニケーションを図りたいと願うのは自然なことです。

今回ご紹介するカーミングシグナルを理解することは、単に犬のきもちを知るに留まらず、より良い関係性を築くために大いに役に立つものです。なぜなら、愛犬の心の状態を理解出来るようになれば、私たちの接し方も、かける言葉も変わってくるからです。

皆さんとワンちゃんとの生活がより豊かで、より楽しいものとなることを願い、カーミングシグナルについてお届します。
   

カーミングシグナルとは

カーミングシグナルは犬のきもちを代弁したボディーランゲージ

カーミングシグナルは犬のきもちを代弁したボディーランゲージ

犬が不要な争いを避けるために自分の立場や感情を音声を使わずに、しぐさで相手に伝える行動(ボディランゲージ)をカーミングシグナルと言います。カーミングシグナルは、犬同士のコミュニケーション手段であると同時に、私たち人間にも使用されるものです。

Calming Signalの「Calming」は"落ち着かせる"の意味。「Signal」は"信号"との意味です。よって、文字通り、Calming Signalは「自分と相手を落ち着かせるための合図」と捉えることができます。

カーミングシグナルはノルウェーの動物学者であるテゥーリッド・ルーガス氏(Turid Rugaas)が提唱し、現在27個に分類されています。
 

カーミングシグナル全27種類

  1. 相手に犬にゆっくりと歩いて近づく
  2. 体を横にそらす
  3. カーブを描きながら近づく
  4. 見知らぬ犬に体の横を見せてお尻から近づく
  5. 尻尾を振る
  6. 座る
  7. 初対面の犬と出会った後、どこかへ行く
  8. 前脚を上げる
  9. 鼻を持ち上げる
  10. 2頭の犬の間をさく
  11. あくびをする
  12. 体を振る
  13. 体を低い位置にして飛び掛ろうとしている遊びの体勢
  14. 尻尾を振って体を低くする
  15. 子犬のようにじゃれる
  16. そっぽを向く
  17. 犬同士が顔を見合い口元を後ろへ引く
  18. 歯をカチカチと鳴らす
  19. 口と鼻の周りを舐める
  20. 口をパクパクさせる
  21. 背中を向ける
  22. おしっこをする
  23. その場所にいないように振舞う
  24. 固まる
  25. 地面の臭いを嗅ぐ
  26. 伏せる
  27. しようと思ってできなかった行動を別の行動に転移する
*その他
 

カーミングシグナルを理解することのメリット

私たちがカーミングシグナルを理解することで、犬が抱えているストレスや不安を早期に解決することが可能になります。そして、何よりも犬との信頼関係を強く結ぶことができます。これはカーミングシグナルを通して、犬たちと双方向のコミュニケーションが可能になり、より深い絆が生まれからです。
 

カーミングシグナルを理解しないデメリット

カーミングシグナルは、想いに気づいて欲しいサイン

カーミングシグナルは、想いに気づいて欲しいサイン

カーミングシグナルは、犬たちの不快や不安を表しています。カーミングシグナルを理解していることで犬たちの想いに気付き、ストレスを早期に軽減することが可能になりますが、逆に気付けないことで大きなストレスを与える結果となることもあります。
 

犬はどんなときにカーミングシグナルを使う?

カーミングシグナルを提唱したテゥーリッド・ルーガス氏は、「犬をより深く理解するために、カーミングシグナルの意味、そして、犬がシグナルをどのように使用するか理解しなくてはならない」と言っています。犬たちがどのようなタイミングでシグナルを使用するかを理解することで、彼らの気持ちを読み取るチャンスを知り得ることができるのです。より良いコミュニケーションを築くためには、愛犬たちがカーミングシグナルを使用する「とき」を見逃さないことが大切です。

≪犬がカーミングシグナルを使うとき≫
  1. 人や犬からの脅威を避けたいとき
  2. 不安、恐怖、喧嘩、不快なことを鎮めたいとき
  3. ストレスや不安を感じ、自分を落ち着かせたいとき
  4. 他者に落ち着いて欲しいとき
  5. 他者に安心感を与え、友好的であることを伝えたいとき
 

見つけ方と観察ポイント

カーミングシグナルは愛犬を観察することから始まります

カーミングシグナルは愛犬を観察することから始まります

カーミングシグナルは、小さい仕草であったり、素早い仕草であることが多いので見逃してしまいがちです。また、同じシグナルであっても状況によって意味が異なることがあります。カーミングシグナルを理解するには、何よりもじっくりと腰を据えて愛犬たちを観察することが大切です。最初は難題のように思えていても、練習することでシグナルをキャッチできるようになります。全ては練習です。愛犬と双方向のコミュニケーションを図れる日がきますので、ぜひ楽しみながら続けて下さい。

≪ルーガス氏が示す、「観察するスキルを身につける」ポイント≫
  1. 家の中で、じっと座って犬を観察する時間を作る
  2. 愛犬が他の犬と会う機会を利用して観察する
  3. 見るべきシグナルをひとつ選び、集中的に観察する
 

カーミングシグナルは全ての犬にある能力?

カーミングシグナルは犬に生まれつき備わっている大切な能力!

カーミングシグナルは犬に生まれつき備わっている大切な能力!

カーミングシグナルは、世界中すべての犬に生まれつき備わっている能力です。ただ、日々の経験により容易に失われる場合があると言われています。また逆に、環境と経験によってシグナルが強化される場合もあるとされています。

≪カーミングシグナルが失われる例≫
  1. ストレスが大きい環境に置かれることで、その能力が失われる。
  2. シグナルを出しても気づかれず、無視され続けることで、その能力が失われる。
少し想像してみて下さい。私たち人間も気持ちにゆとりがないと、豊かな表現ができなくなるものです。大きなストレス環境においては、表現することに萎縮してしまうこともあるでしょう。また、自分の気持ちを表現しても、無視され続けては、表現することを無駄だと思い込んでしまいます。実は、犬も同じなのです。

カーミングシグナルは犬の心の声です。彼らはカーミングシグナルを通して、大切なきもちを表現しています。その声なき声を自由に表現できる環境と、その想いを読み解いてあげる知識と能力が私たち飼い主には必要なのです。

≪失われた能力を再生させる為に大切なこと≫
置かれた環境や経験によりカーミングシグナルを表現しなくなった犬であっても、状況が変わることで再び使い始めることが確認されています。犬たちが再びカーミングシグナルを表現するようになるためには、彼らにとって快適な生活環境であることと、飼い主の方がカーミングシグナルをキャッチできるようになることが大切とされています。
 

何歳頃から使い始めるの?

子犬のあくびは立派なカーミングシグナル

子犬のあくびは立派なカーミングシグナル

生まれたばかりの子犬は、自分の意志で自由に体を動かすことが出来ないため、多種類のカーミングシグナルを使うことができません。唯一出せるシグナルは「あくび」と言われています。子犬たちは成長に伴い、体の自由がきくようになり、多くのシグナルを出せるようになっていきます。
 

カーミングシグナルの科学的検証について

カーミングシグナルは、最近までその内容が科学的に検証されたことはなかったそうです。先ごろ、イタリアのピサ大学獣医科学科の研究チームにより、『犬同士における視覚コミュニケーションの分析~カーミングシグナルについての予備的研究』というレポートが発表されました。

今回発表されたのは予備研究の結果であり、明確な結論を出すにはまだ多くのデータと統計が必要であるとされていますが、ルーガス氏の経験に基づく『カーミングシグナル』は確かに相手を落ち着かせる働きがあるとの科学的裏付けが取れそうとのことです。
 

最後に

愛犬との向き合い方の選択肢は飼い主の方にある

愛犬との向き合い方の選択肢は飼い主の方にある

ルーガス氏は著書『カーミングシグナル』の中で、以下のように述べています。

「犬がどんな態度を見せたとしても、それはあなたが見せた態度の結果です。あなたには常にその選択肢があるわけです。どんな状況でも、どうすべきかは選べます。犬に尊敬して欲しいのなら、あなたが犬を尊敬しなければいけません。良い関係というのは相互通行であり、バランスのとれた一体感の中で一緒に暮らすことです」

カーミングシグナルを通して、犬と共に豊かに暮らすために自身の向き合い方を私は改めてルーガス氏から学んだように感じています。

参考図書:テゥーリッド・ルーガス著『カーミングシグナル』

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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