BRT(バス高速輸送システム)とは
BRTとは、バス・ラピッド・トランジットの頭文字をとったもので、「バス高速輸送システム」と訳されます。路面電車とそん色ない輸送力と機能をもつ、バスをベースとした都市交通システムです。福岡の連結バスBRT。路面電車のような大量輸送力が魅力。
こうした臨海部の交通利便性を高めるため、東京都は2014年、「都心と臨海副都心を結ぶ公共交通に関する基本方針」を策定し、BRT構想を立ち上げ。2015年にBRTルートなどの基本計画をとりまとめ、運行事業者を公募したところ、京成バスと東京都交通局の2者が選定されました。
2019年は「勝どきルート」と「晴海・豊洲ルート」が開通
「都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する事業計画」によると、2019年に2系統の運行から始め、2020年の東京五輪後に3系統、2024年度以降の選手村の改修後に4系統を運行する予定。まず2019年の2系統では、新橋駅を起点に勝どきを終点とする「勝どきルート」、虎ノ門を起点に新橋駅・勝どき・晴海2-3丁目を経由して豊洲駅を終点とする「晴海・豊洲ルート」が開通します。そして2020年五輪後には、虎ノ門を起点に新橋・市場前駅(豊洲新市場前)、有明テニスの森を経由して国際展示場駅を終点とする「新線ルート」が加わる予定。2024年以降に五輪選手村の再開発が竣工したら、虎ノ門~新橋~勝どきを経由して晴海5丁目の選手村をつなぐ「選手村ルート」が完成します。
今回のBRTの特徴は大きく3つあります。第一に、いずれのルートも現在工事中の「環状2号線」(環2、臨海部~外堀通り~秋葉原)を利用する点です。そして第二には、高速バスらしく停留所が少なくなる点。現在の都内のバス停はおおよそ350~400メートル間隔ですが、BRTでは2倍の1-2キロメートルくらいに伸び、これによって新橋~勝どきの約2キロ間が10分でつながることになります。第三の特徴は、大量の輸送力。片道最大3000人/時と言われている路線バスに比べ、BRTは2車両が連結されているため最大5000人/時の輸送力をめざします。
臨海部の常住人口は8倍、就業人口は400倍に膨らむ?
このBRT開通によって、都は常住人口・就業人口ともに大幅に増えると見込んでおり、特に五輪選手村が整備される晴海五丁目は常住人口が3100人から五輪後2万9000人に増えると見込んでいます。この人口増大を収容するため、約18ヘクタールの広大な敷地に、住宅(マンション)24棟(総戸数約5650戸)のほか、商業施設・クリニック・保育所などが整備される予定です。竣工後は晴海五丁目には1万2000人以上が住む大きな街が誕生し、BRT沿線エリアとなる晴海・勝どき・豊洲の全体エリアでは常住人口19万人以上に増えるとみられています。現在、晴海五丁目は最寄り駅である勝どき駅まで徒歩20分ほどかかりますが、このBRTで利便性は一気に高まりそうです。
また就業人口も増加する予測も。新豊洲では現在の就業事項が100人ほどですが、2020年の五輪後には4万4000人と400倍にも膨らむと試算されています。
築地市場移転問題で開通スケジュール延期も
一方の都心側も、東京メトロと都市再生機構(UR)が「虎ノ門ヒルズ」付近に東京メトロ日比谷線の新駅を設置する方向で動いています。というのも、日比谷線は「虎ノ門ヒルズ」の西側を通る桜田通りの地下を通っているから。新駅は霞が関─神谷町駅間に設置され、日比谷線新駅や銀座線虎ノ門駅とは「地下歩行者ネットワーク」で結ぶ構想も出ています。しかし、これらの実現は少し先延ばしになりそうな雲行きも。臨海部の人口増は環2の開通を前提としていますが、虎ノ門から新橋までは開通したものの、新橋から豊洲区間が築地市場の敷地を通るため、築地市場が移転しないと工事が進められず、これによってBRT運行会社設立を延期する方針が決まり、BRT開業スケジュールも後にずれこんでいます。築地市場の移転ならびに環2の整備が急務といったところです。