お金の悩みを解決!マネープランクリニック/子どもが欲しいがお金のことが不安な人の悩み相談

33歳貯金800万。不妊治療費がかさみ貯蓄が増えません(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、不妊治療の費用で悩む30代の女性会社員。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 資金的には3人目はきびしいと言わざるを得ない

不妊治療を続けながら、お子さんを3人以上を希望されているわけですが、まずはシミュレーションしてみましょう。

前提として第1子を来年、第2子を3年後に出産するとします。不妊治療は順調に進んでも、今年は300万円かかるとのこと。さらに来年、再来年と200万円ずつはかかると想定しました。結果、その間はやはり貯蓄は難しく、2年後には貯蓄が今より200万円(ただし助成金は考慮せず)ほど目減りするという状況となります。

第2子出産後は、不妊治療は停止するとします(3人目を希望をしない)。一方、収入面では、ご主人は定年後、65歳まで働く(60歳以降は年収240万円)。また、奥様のさくらさんは産休および育児休業中は現状の60%に、また職場復帰後は下のお子さんが小学校に入学するまでの時短勤務とし、現状の70%としてみました。それでも、途中、自宅の外壁工事費などまとまった支出もありますが、上のお子さんが高校入学するまでは年間プラスの収支が続きます。

ここでのポイントは、ご主人が63歳のときに貯蓄のピーク時となりますが、その額が1500万円ほどだということ。もしも、第3子を出産された場合、かかる教育費はその進路で異なりますが、高校まで公立、大学を私立文系とすれば学校外教育費(習い事や進学塾など)を加えてお子さん1人1000万円前後。

しかし、それとは別に養育費(食費などの生活費)も発生します。3人目のお子さんは1人目、2人目よりは低くなりますが、それでも年間24万円(国民生活白書より)。大学卒業までの22年間で500万円超。さらに不妊治療費も加算されますので、実質1500万円では足りないということになります。

さくらさんが心配されるように、3人目以降のお子さんについては、この資金ではきびしいという状況が予想されるわけです。対して、2人であれば、現状の家計管理を維持できれば、その教育費や養育費を捻出することは可能でしょう。
 

アドバイス2 妻が正社員として働き、育児、家事は夫婦で助け合う

では、お子さん2人なら安心かと言えば、懸念される部分もあります。さくらさんの体力面です。治療と出産が数年続き、職場復帰後は片道2時間の通勤。その上で育児、家事を日々こなしていくのは、時短勤務だとしても大変な労力です。

一方で、さくらさんが正社員で働き続けるということは、お子さん2人を出産するマネープランでは欠かせない条件です。さらに言えば、ご夫婦の年齢差は12歳。来年出産されても、そのお子さんが大学を卒業するとき、ご主人は68歳となっています。そう考えると、収入面で今後家族を支えるのは、さくらさんが中心とも言えます。正社員で勤務し続けることにより、公的年金の受給額が増えるという点も見逃せないメリットです。

したがって、出産後はご主人の理解とサポートが不可欠です。さくらさんの家事、育児にかかる負担を軽減できるよう、家族で助け合うことが重要なポイントだと言えます。

また、資金的にはお子さん3人はきびしいと先に述べました。もちろん、お金のことだけでお子さんの人数を決めるべきではないと思います。ただし、3人となった場合は、大変だと認識しておくことは必要です。場合によっては、ご夫婦とも70歳まで働く必要があるかもしれません。

もうひとつ、治療費はそれなりに大きなコストです。まだ先の話ではありますが、もしかしたら、ご夫婦2人での生活を考えなくてはならない時期も来るかもしれません。その場合、あらためてマネープランを考え直す必要があることも頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。
 

アドバイス3 繰上返済は慌てず、まずは手持ち資金を増やす

家計に関しては、無駄遣いもなく、取り立てて見直す部分はないとかと思います。雑費4万円は多いとも思えますが、あえて節約するほどではありません。

心配されている住宅ローンは、確かに完済はご主人80歳のとき。しかし、見方を変えれば、そのときまださくらさんは68歳。先に触れたように、さくらさんが稼ぎ頭と考えれば、そう不安視することはないでしょう。繰上返済についても、5年後に500万円の返済を目指しているとのことですが、お子さんの教育費が予想以上にかかり、家計が苦しくなることも考えられます。慌てて繰上返済をせず、手元に資金として残しておく方ことを基本に考えておくべきだと思います。

また、検討されているiDeCoについては、ご主人はおそらく住宅ローン控除を利用されていると思うので、節税効果を期待するなら奥様名義での利用となります。ただし、ご存知だと思いますが、iDeCoは老後資金づくりが目的ですから、一度拠出した資金は、原則60歳以降でなくては引き出せません。したがって、積立額を大きくすると、手持ち資金が減り、やはり教育の不足などに対応できません。まずは月1万円程度の積み立てから始めてはどうでしょう。

また、運用が目的であれば、自由に引き出せるNISAの方がいいかもしれません。来年からは長期投資が可能となる「つみたてNISA」もスタートし、選択肢も増えますので、利用しやすいものを選べばいいと思います。
 

相談者「さくら」さんより寄せられた感想

この度はアドバイスいただきまして、本当にありがとうございます。
不妊治療が想像以上に生活のいろいろな面で影響が大きく、焦りとプレッシャーからずっと不安を拭えずにいました。また治療にばかり目がいってしまい、それ以外の今後を見据えた生活が疎かになっているのを感じつつも、治療に固執している部分がありました。なんとなく抱いていた不安に現実的なアドバイスをいただき、現実の厳しさを改めて実感致しました。具体的な数字で教えていただいたことで、主人と将来を見据えた話をすることができそうです。なるべく早く子供を授かることを願いながら、主人と協力しあって、地に足のついた生活ができるよう努めたいと思います。本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……

平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
 
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ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。著書に『30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる 考え方・投資の仕方』(明日香出版社)。All Aboutマネーの連載『ふたりで学ぶマネー術』も人気


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