アドバイス1 50歳でのフルリタイアは問題なし
結論から先に申し上げますと、早期リタイアに関して資金的には問題が見当たりません。明日、退職されても大丈夫です。ともあれ試算してみましょう。50歳で予定どおりに退職し、フルリタイアするとします。それまでの1年8カ月で、およそ900万円金融資産が増えます(ボーナス3回支給として試算)。したがって、退職時の金融資産は確定拠出年金と退職金の合計を1000万円とすると、総額1億8100万円。厚生年金、企業年金ともに65歳受給を選択した場合、それまでの生活費は貯蓄を取り崩すことになります。想定されている生活費が社会保険料等込みで月20万円とのことですから、15年間で3600万円。結果、65歳の時点で1億4500万円がまだ手元に残ります(投資商品の評価額が変わらないとした場合)。
次に65歳以降を考えます。収入として、75歳になるまでの10年間、厚生年金と企業年金から月18万4000円受給でき、75歳以降は14万5000円となります。たぁ坊さんが90歳まで生きたとすると、この間の生活費のうち、貯蓄から取り崩す分はおよそ1200万円。老後資金は1億2800万円残ります。しかも、個人年金保険より60歳から10年間、月5万2000円の年金支給がありますから、実質1億3400万円が90歳の時点で残っているわけです。
もちろん、あくまでこの数字は試算に過ぎません。今後、医療費等の大きな支出が発生する可能性は当然あります。長生きによるリスクも考慮すべきでしょう。それでも一般的に考えれば、十分過ぎるほどの余裕があるといえます。趣味の海外旅行の回数を想定の倍にしても、おそらく何の問題もないでしょう。
アドバイス2 使い切れない場合の対策を立てておく
通常、マネープランクリニックでは、家計内容にも言及しますが、たぁ坊さんに関しては何もありません。高収入でありながら生活に浪費、無駄な支出がありません。独身であっても、これだけ貯蓄ペースの高い人はまれ。資産形成にはいかに日頃の家計が大事かがわかります。あえてアドバイスするなら2点。一つは保険です。現状では死亡保障の必要性は感じません。死亡保障1000万円の終身保険は払済保険にしてもいいのでは。医療保障も同様。保険料が大きくないので、安心を買うという意味で継続しても構いませんが、これだけ資産があれば、かかる医療費は貯蓄から捻出するという考え方の方が合理的です。また、個人年金保険の保険料は前納してはどうでしょう。
もう一つは介護費用。まず、親の介護は親の資産でまかなうというのが、基本的なマネープランの考え方です。親御さんの資産の範囲内で行うということです。自分の介護費用については、要介護の程度にもよりますが、平均すると1人400万円ともいわれています。ともあれ公的介護保険を活用すれば、資産を大きく損なうとは思えません。必要以上に不安になる必要はないでしょう。
逆に、資産を使い切れないのではないかという懸念があります。もし遺す人がいなければ国庫に没収となるでしょう。おそらく、親御さんともども相続対策はされていると思いますが、何もされていないなら、リタイア後には税理士に相談するなど、対策は立てておくといいと思います。
相談者「たぁ坊」さんから寄せられた感想の一部を紹介
基本的には資金的問題が全くないということに安心しました。資産に占める株式の割合が高い状態なので、株式であれば何社かに分散する、株式を止めてTOPIX連動の投資信託にする、或いは低金利でも預貯金にすることで安全性を高めることを考えます。使い切れないというのは全くの想定外でした。現状含め、日ごろの生活費や趣味の投資を増やすなどして計画的に使い切れるようにすることも考えます。アドバイスありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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