体重コントロールに欠かせない「エネルギー」調節

焼き魚

体重コントロールするには食材のエネルギーを考慮することが多いと思います。実はもう1つ、調理方法に注意すると体重コントロールが楽になることもあります。


管理栄養士として働いていると、食事に関連する悩みは大きく2つに分かれると感じます。

「ダイエットしたい」
「おばあちゃん、最近あまりご飯を食べてくれなくて……」

といったものです。これらは正反対で、共通点のない悩みに見えるかもしれませんが、問題になっていることは1つだけ。「食事によるエネルギーコントロールが上手く行かない」ということに尽きると思います。

余談ですが、「エネルギーコントロール」と「カロリーコントロール」は何が違うのか、疑問に思った人もいるかもしれません。正確には、「エネルギー」は「動力源」です。車で言うと、ガソリンのようなものだと思っていただければよいかもしれません。しかし、エネルギーは「キロカロリー(kcal)」という単位で表し、「kcal」という単位を使うのはエネルギーだけなので、いつの間にか「カロリーコントロール」という表現が一般に浸透してしまったようです。「エネルギーコントロール」も「カロリーコントロール」も大きな意味の違いはありませんが「エネルギーコントロール」と表現するのが、より正確な表現だという点はぜひ覚えておいていただければと思います。

ただし、厚生労働省でも「カロリー控えめ」という表現を許可していますので、「カロリーコントロール」という表現も、今の時点では問題はないといってよいでしょう。正式にはエネルギーという表現だけれど、一般的に「カロリー」と表現したほうが伝わるかな?と悩むのは栄養士だけかもしれませんが、本記事では、本来の正しい言葉である「エネルギー」で、解説を進めさせていただきます。皆さんが普段イメージする「カロリー」と同じ意味だと捉えながら、読み進めてください。

食材のエネルギー考慮だけではNG?「低カロリー」食材の罠

料理のエネルギーコントロールをしたいと考えたとき、最初に思いつくのは、「食材」のエネルギーをコントロールする方法だと思います。

ダイエットしたい場合は、エネルギーの低い食材を選びます。いわゆる「低カロリー」の食材です。例えば、鶏肉を選ぶときでも、同じ重量であれば、モモ肉よりもササミのほうがエネルギーが低いため、ササミを使った料理を選ぶほうが、食材そのもののエネルギーは低いです。逆に、食が細かったり、しっかりエネルギーを摂りたい場合は、ササミではなくモモ肉を選ぶほうがエネルギーを効率よく摂取できます。

ところが実は、素材の持つエネルギーだけで料理のエネルギーが決まるわけではないのです。「調理」の過程でエネルギーが増えたり減ったりします。

調理方法で増減するエネルギー量

バーベキューや焼肉店で、肉を網で焼いて食べた経験のある人も多いと思います。肉を網で焼くと、網の間から溶け出した脂が落ちていきます。この場合、焼きあがった肉のエネルギーは生肉よりも減少します。

同じ肉を焼く料理でも、鉄板に牛脂を塗って焼けば、溶け出した脂は落ちることなく肉の中に閉じ込められるためエネルギーが大きく下がることはありません。

また、同じ肉を揚げてとんかつにすれば、揚げ油を吸ってエネルギーは上がります。このように、同じ食材であっても調理方法によってエネルギーが上がったり下がったりすることがあるのです。

一般的には、調理によるエネルギーの変化は、

ゆでる<網焼き<蒸す<煮る<炒める<揚げる

の順で上がりやすくなると言われています。厳密には、食材や切り方によって順番が変わることがありますが、以下でそれぞれの調理法について詳しく見てみましょう。

■ゆでる
水(湯)の中に入れて加熱する調理法。食材の周りの水(湯)に脂分が溶け出すため、エネルギーが下がりやすい調理法です。
■網焼き
網のすき間から食材に含まれる水分や脂肪分が落ちるため、エネルギーが下がりやすいといわれています。
■蒸す 
油を使わない上、水蒸気で熱せられ、食材中の脂肪分が抜けるため、エネルギーが下がりやすいです。
■煮る
基本的には油を使わないのでエネルギーは上がりにくいといわれていますが、砂糖などの高エネルギーな調味料を使うとエネルギーが上がってしまいます。
■炒める
油を使うため、エネルギーが上がりやすい調理法です。フッ素加工を施したフライパンや、使い込んで油が染みこんだフライパンを使うと、油の使用量が抑えられるためエネルギーが上がるのを防ぐことができます。
■揚げる
油の中に食材を入れ、加熱する料理であるため、最もエネルギーが上がる調理法です。同じ揚げ物でも素揚げより衣をつけて揚げる(フライ、天ぷら)のほうが、油の吸収率がよいため、エネルギーが上がりやすくなります。
このように、ゆでる、網焼き、蒸すの3つは油をほとんど使いませんし、食材中の脂が流れ出るので、エネルギーダウンになります。一般的な言葉で言うなら「低カロリー」な調理法といえるかもしれません。ゆでると脂が最も流れ出やすいので、カロリーダウンには最も効果的です。

逆に、炒める、揚げるは油を使うため、エネルギーアップに。炒めるより揚げるほうが料理に油が多く付着するため、炒めるよりも揚げるほうがエネルギーアップには効果的。ダイエットに揚げ物は不向きですが、高齢者など、食が細くなって太りたい人には効果的です。

例えば、2017年春先に、桂歌丸師匠が「80歳になって、はじめてから揚げを食べた」という報道がありましたが、食が細く「太れない」のに、医師から体重を増やすように指示されている歌丸師匠にとって、から揚げは効果的な料理なのです。

エネルギーは調理でどれくらい変わるのか? 牛肉の調理例

たとえば、牛もも肉の場合、生肉100g(167kcal)を料理したとすると、表のようになります。

調理法別の牛肉のエネルギー量変化

生肉100g(167kcal)を調理した場合の変化


エネルギーが減るのは網焼き(厚切り)、ゆでる(薄切り、厚切り)、網焼き(薄切り)、フライパンで焼く(厚切り)の順。フライパンで薄切り牛もも肉を焼いたり、揚げたりするとエネルギーが上がることが分かります。

脂肪の量は網焼き(厚切り)、ゆでる(薄切り)、揚げる(から揚げ)、網焼き(薄切り)、ゆでる(厚切り)のエネルギーが減っています。脂肪分が少ないから、から揚げもいいかな?と思った人もいるかもしれませんが、から揚げは調理後の重量が約半分になってしまいます。網焼きの厚切り肉は脂肪が少ないのでいいのではないか?という考えもありますが、加熱時間が長く肉汁が大量に流れ出てしまった結果ではないかと推測されているようです。どんな状態まで焼いたかまでは書かれていませんが、ウェルダンまで焼いた結果かもしれませんね。

この他にも、「ぶりの調理方法によるエネルギーの違い」「あじ・豚ロース・卵の調理方法によるエネルギーダウン作戦」など、さまざまな食材について、調理によるエネルギーの変化が検討されています。

食材の持つエネルギーや栄養素も重要なファクターになりますが、調理方法にも気を配ると、よりエネルギーコントロールがしやすくなると思います。調理をする際、頭の片隅に置いておくとよいかもしれませんね。
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