信頼できる健康情報・医療情報とは?

情報を見抜く力

たくさんの情報が溢れかえる現代。とりわけ身体に関わる大切な健康・医療情報は、どう真偽を見分けるべきでしょうか?

みなさんは、医療に関する情報をどのようにして手に入れていますか? インターネットで検索する方も多いでしょうし、実際に病院や診療所にかかられているのであれば、医師や看護師からお話を聞くこともあるでしょう。昨今は多くの病院で「病院図書館」を設置するようになったので、こういったところで情報収集される方もいるかもしれません。

日常的には、雑誌やテレビで紹介された健康情報などを見て、「○○が××に効くんだ」と思うこともあるでしょう。身体によいものの情報を、お友達や家族から伝えられることもあるかもしれません。

手に入る情報が多い現在、中には相反する情報に出くわすことも多く、何が本当なのかわからなくなって戸惑われることもあるかもしれません。

まずこの記事では、専門的な医療知識を持たない方もも、医療に関する正確な情報が手に入る情報源として知っておきたいサイトと、それがどれくらい信頼できると考えて良いのかを含めて解説します。

世界の医療者が診療方針の確認で使用する『コクラン』

医療に関する情報で最も信頼されているサイトとして挙げられるのが、国際的な組織である『コクラン』によるコクランライブラリです。

■コクランライブラリ
http://www.cochrane.org/ja/evidence

コクランは、世界の医療者が自分の診療方針をまず確認するベースとなるものであり、逆にコクランで確立していないことは、医療者によって方針や考え方が異なるような確実とは言い切れない治療法・診療方針なのだと理解していただければよいと思います。

コクランは、信頼性の高い情報を医療者と患者市民に提供することで医療を変えていこうと1992年に設立された、医療者、研究者、市民の国際的な集まりです。

医療の世界では、一つ一つの診療行為が、効用に関しても安全性に関しても、命がかかわるため、慎重に検証が行われてきました。この慎重な検証のもっとも一般的な例が、「ランダム化比較試験」というものです。

ランダム化比較試験では、一定の状態や病気の患者さんをくじ引きの原理で「ランダム」に選び、治療を受けるグループと、治療を受けないグループに分けます。その結果を比較することで、この治療法の効果や安全性を検証します。この「治療」が一般的な投薬の場合は、治療を受けない群は、その治療薬に似せて作られた無害の薬(偽薬といいます)の投与を受けることも多いです。

治療効果には、気持ちや思いが影響することも多いので、治療を受ける側の患者はもちろん、薬を提供する医療者側も、治療を受けているのがどちらのグループかわからない状態にして検証するこの方法が、最も「確かな」方法とされています。

コクランでは、一つの治療法や課題に関して、こういった「確かな」方法で行われた過去の研究を洗いざらい探してきて、一つ一つの研究で取られた方法などについて客観的かつ厳密に評価して、信頼に足るものだけをまとめるということをしています。これらのまとめを「コクランレビュー」といいます。

コクランレビューは、世界中の医師やその他の医療者が、診療方針を決めるときに参考にするだけではなく、平易な言葉によるまとめも同時に作成されますので、一般市民や患者さんも積極的に閲覧しています。

現在まで、7000以上の治療法や課題に関するコクランレビューが公開されています。もともとは英語で書かれていますが、各国語で翻訳もされていて、日本語に翻訳されているものも随分と増えていますので、上手に活用していただきたいサイトです。

コクランレビューの使い方

コクランレビューの実際の使い方について解説します。『エビデンス』ページで、知りたい病気や治療法の言葉を検索するだけです。

コクランレビューには、病気の治療法だけではなく、病気にかかっていない人がより健康になるための方法、病気にならないための予防法についての情報も掲載されています。

実際にいくつかの疑問に関して、見てみましょう。

■腰痛に対して実際にヨガは有効なのか
「ヨガ 腰痛」という言葉で検索すれば、複数のエビデンス記事が出てきます。検索の最初に表示される『非特異的な慢性腰痛に対するヨガ療法』という記事はこの疑問のわかりやすい回答になるでしょう。

■ヨガで生活習慣病を予防できるのか
「ヨガ 生活習慣病」と検索すれば、同様に複数の記事が出てきます。『心血管疾患予防のためのヨガ』などのまとめが、その回答になると思います。

■果物や野菜をたくさん摂れば、生活習慣病の予防になるのか
こちらも、「果物 野菜 生活習慣病」と検索をすると、トップに『果物や野菜の摂取量増加による心血管疾患予防』という記事が出てきます。これらの疑問に対する公正で信頼性の高い検証をされた情報を知ることができます。

また、このコクランの姉妹組織に『キャンベル』というグループもあります。健康医療情報からは少し逸れますが、こちらのグループでは、コクランと同じ方法で、教育や福祉や犯罪といった分野で信頼できる情報を提供しています。

キャンベルレビューでは、たとえば、学校でのいじめを減らすための方策について「School-based programs to reduce bullying and victimization(英語)」などのまとめが作られています。

これらのまとめは、関心のある研究者や医療者、市民が、国を超えてチームを作り、ボランティアで作成しています。ただ、作成するための方法が厳密で、きっちりと標準化されています。定期的に最新の情報にしています。

こういったこともあり、世界の医療者が自分の診療方針をまず確認するのが、コクランであり、逆にコクランで確立していないことは、医療者によって方針や考え方が異なるような治療法・診療方針なのだと理解していただいたらと思います。

標準的な日本の診療方針が確認できる『マインズ』

似たような活動で、「診療ガイドライン」というのも存在しています。

様々な医療分野ごとに学会がありますが、それぞれの専門の学会の先生方が上記のコクランレビューなどを参考にして、日本での診療方針について、まとめた文書です。

厚生労働省が積極的に支援し、日本医療機能評価機構という団体が、これらの学会のガイドラインで特にしっかりと作成したものを集めて公開しているサイトが『マインズ』です。

■マインズ
https://minds.jcqhc.or.jp/

『マインズ』では、日本語で、日本の状況に合わせて、それぞれの病気の標準的な診療方針を確認することができます。

病気の体験談がデータベース化されている『ディペックス』

特に病気の診断をされた方にとって一番知りたいことは、一般的な健康情報・医療情報ではなく、その病気になることでどんな体験をするのか、これから患者としてどうなるのか、ということかもしれません。実際の患者さんの「闘病記」という形でブログや本なども多く見られます。

これらの病気の体験をデータベース化している活動があり、「ディペックス」といいます。

■ディペックス
http://www.dipex-j.org/

こちらも国際的な活動ですが、『ディペックス・ジャパン』として、日本でもさまざまな病気の体験をした患者さんの生のことばもデータベース化されています。

様々な健康情報、医療情報が最先端の研究として騒がれることもありますが、エビデンスが確かでないものや、まだ動物実験による研究段階で人の身体への実際の効果や影響が明らかでないものも多々あります。まずは、これらの実際に医療者が利用しているサイトなども見る習慣をつけて、健康情報の信頼性を見る力をつけていくことも大切かと思います。

信頼できる情報源やその見分け方についてのコツに関しても、これから解説していきたいと思います。
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