つみたてNISAを睨み「Smart-iシリーズ」を新規設定
インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)の引き下げ競争は一段落したと思いきや、りそなアセットマネジメントが業界最低水準を塗り替える4商品を含む9商品のシリーズを、2017年8月29日に新たに設定しました。その名は「Smart-iシリーズ」です。運用管理費用(信託報酬)の詳細は後ほど述べますが、投資コストの引き下げ競争を再燃させたのは、2018年1月から始まるつみたてNISAを意識したものだと考えられます。つみたてNISAと対象となる投資信託は、一定の条件を満たし金融庁のお墨付きを得た「適格投資信託」に限られるのです。適格投資信託以外はつみたてNISAの対象とならないことから、適格投資信託を設定して個人投資家の受け皿になろうという思惑があると考えられるのです。
りそなアセットマネジメント以外でも、三菱UFJ国際投信が「つみたてシリーズ」を2017年8月に新規設定、ブラックロック・ジャパンもつみたてNISAの適格条件を満たした商品の設定を検討しているようです。
「Smart-iシリーズ」は4本が業界最低水準を更新
りそなアセットマネジメントの「Smart-iシリーズ」は、国内外の債券、株式、REIT(不動産投資信託)の資産クラスで7本の商品で運用は開始されています。その内、日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)、東証REIT指数、S&P先進国REITに連動する4商品が業界最低水準を更新しています。日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)連動の商品の運用管理費用(信託報酬)は、年率0.1836%です。これまで最も低かった、ニッセイアセットマネジメントの「(購入・換金手数料なし)シリーズ」、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slimシリーズ」の年0.1944%を下回っています。
東証REIT指数連動の商品の運用管理費用(信託報酬)は、年0.1836%、S&P先進国REIT指数連動の商品は同0.216%です。これまで最も低かった、ニッセイアセットマネジメントの「(購入・換金手数料なし)シリーズ」の、東証REIT指数連動の年0.270%、S&P先進国REIT指数連動の商品は同0.2916%というように、日本株指数連動の商品よりも大幅に引き下げています。
ただし、ニッセイアセットマネジメント、三菱UFJ国際投信が黙っていないはずです。三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slimシリーズ」は、業界最低水準を更新するインデックスファンドが新規設定されれば、同水準まで引き下げることを目論見書上で明言しています。
また、ニッセイアセットマネジメントの「(購入・換金手数料なし)シリーズ)は、明言こそしていませんが、業界最低水準という看板をこれまで守ってきました。その経緯を考えれば、看板を外すことは考えにくいため、この2つのシリーズはいずれりそなアセットマネジメントの「Smart-iシリーズ」と同水準まで運用管理費用(信託報酬)を引き下げてくることでしょう。
疑問が残る三菱UFJ国際投信の動き
投資コストが引き下げられることは個人投資家として歓迎すべきことですが、気になるのは三菱UFJ国際投信の動きです。同社は「eMAXISシリーズ」というインデックスファンドを2009年10月下旬からスタートさせているにもかかわらず、常に業界最低水準を目指す「eMAXIS Slimシリーズ」を設定。2017年8月16日には「eMAXIS Slimシリーズ」と同水準の運用管理費用(信託報酬)の「つみたてシリーズ」を新規設定しているのです。同じ運用会社の中にさまざまなインデックスファンドのシリーズを設定するのが個人投資家のためになっているのか気になるところです。新たなシリーズを設定するのではなく、最も古い「eMAXISシリーズ」の運用管理費用(信託報酬)を引き下げれば良いはずなのにと思われるのです。個人投資家側から見れば、いくつもシリーズを並べるのではなく、シンプルに1つのシリーズを育ててくれたほうが有難いと思うむきもあるでしょう。