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ドラマ仕立てのCMが増えているワケ

ドラマはテレビドラマだけのものではありません。番組の間に流れるCMにも素晴らしいドラマがいくつもあります。ほろ泣き、号泣、ちょっと吹き出してしまうものまで、ドラマガイドが称賛する完成度が高いドラマ仕立てのテレビCMをご紹介! また、企業がCMをドラマ仕立てにする狙いに迫ります。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

「三太郎」「白戸家」……CMがドラマ化している

“三太郎シリーズ”「ピタッとくる」篇のTVCMカット

“三太郎シリーズ”「ピタッとくる」篇のTVCMカット

auの「三太郎」やソフトバンクの「白戸家」、住友生命の「1UP」などストーリーのあるCMは昔からあるものの、最近は特に増えているような気がします。15秒、30秒の短い時間に、胸がギュッと熱くなる、日々のトホホに思わず目を細める……そんなドラマCMに泣いたり笑ったりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

企業がCMをドラマ仕立てにするのがトレンドになっているのには、ある戦略がありそうです。

(1)届けたいのは企業の“イメージ”
商品の機能だけを説明することなく、物語をつくるCM。物語に欠かせないのが登場人物ですが、その登場人物が魅力的であれば、視聴者は好感を持ちます。その好感は企業への好感へとつながります。クール、ユニーク、感動的なCMをつくることで、企業が注目されることは認知度のアップはもちろん、好感度アップに貢献しているのです。

(2)シリーズ化に見る話題性
物語はシリーズ化しやすく、話題性につながります。「妹も1UPしたの知ってる?」なんて、会話が生まれた経験がある人も多いのではないでしょうか。好感度の高い登場人物に「もう一度会いたい」という視聴者の気持ちも高まり、CMの続編の話題性や注目度がアップしたり、実際にリアルなイベントなどへの集客につなげたい狙いもあるでしょう。また、季節性の強い商品や、キャンペーン告知のCMはオンエアの期間が一時的です。シリーズ化することで、都度の企画・制作が1からのスタートではないところには、企業サイドにもメリットがあるようです。

今回は、数あるドラマCMの中でもドラマガイドが選ぶ、秀逸な作品を紹介します!


はたらくひとにドラマはある!

ひとは変われる! 住友生命 「1UP」シリーズ
 
竹原ピストルの『よー、そこの若いの』が、ガツンと力強い1UPのシリーズ。やや内向的なサラリーマン上田一(瑛太)は、ちょっとおかしいけれど、応援したくなる人物です。彼が変わろうとする日々を本人や同僚が証言していくスタイルは妙に説得力があり、自分も1UPしたくなります。


世界を支えているひとは、すぐそばにいる コカ・コーラ ジョージア「世界は誰かの仕事でできている」シリーズ

七変化する山田孝之の演技力があってこそ成立するジョージアのシリーズ。梅田悟司のコピー「世界は誰かの仕事でできている」が、胸にささります。

登場する建設現場の作業員、起業家、営業マン、ドラックの運転手、はたらくひとたちは、みんなかっこよくて味がある。2017年に公開された「おつかれ、俺たち」篇では、ひと息つくために座ったベンチが一緒になった営業マン(山田孝之)と建設作業員(新井浩文)が、警戒しながらコーヒーを飲んでいるうちに、気持ちは相手の仕事への尊敬へと変化します。その過程を表現する心の声とちょっと妄想、そして「おつかれ」、最後は俺たちの連帯感がすてきです。


家族に会いたくなるCM

おとうさんの姿に笑い泣き 東京ガス 「家族の絆 やめてよ」篇
動画:https://youtu.be/xgevHDhom0Q

家族を描くCMの名作が多い東京ガス。「家族の絆 やめてよ」篇が描く父と娘の風景に「そうそう」と思いながら、結婚式までの日々はちょっと切なく、目頭が熱くなります。シュワっとガスに火をつける。から揚げがジュワっと揚がる。父のためにコーヒーを淹れる。時折織り込まれる食卓の音に、家族のかけがえのない幸せが映ります。

母と息子が描かれる「家族の絆 母とは」篇では、渡辺えりが、誰よりも遅くまで起きていて、誰よりも早く起きているチャーミングな母を名演、東京ガスの涙腺崩壊シリーズは、これからも、視聴者の心をつつみこむことでしょう。


愛らしさがたまらない サントリー GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶「ママのかお」篇
 
5歳のムギちゃんが、ママのおこった顔を歌うCMは共感とともに、ママたちの「そうなのよね……明日は怒らないようにしなくちゃ」と思わせる、チャーミングなCMです。ママの姿もパパの姿も映りませんが、温かい家族の風景が見えてきます。草原のなか、なぜかボートに乗っているムギちゃん、そこは好きな場所という設定だとか。気持ちのいい青空と白い雲に心が和む、誰もが笑顔になれる作品です。


がんばるひとに寄り添う ほろ泣きCM

みんなの歌に明日が見える ライオン「働く女性への応援歌」篇

職場にいそうなふつうの女性たちの帰宅の姿を描いたCM。頑張っていない女性なんていないこと、クタクタの帰り道、「お風呂に入りたい」「歯磨きしたい」と思うこと、誰もが経験し、共感できるのではないでしょうか。心が折れそうになっても「言い訳しないでがんばった」の歌詞にほろっとしながら、明日をがんばろうと前向きになれるCMです。
原曲は北山修(作詞)加藤和彦(作曲)コンビによる1971年発売の名曲『あの素晴らしい愛をもう一度』。今日をがんばるすべての女性に贈られる美しいCMです。

たたかうすべてのひとに 大塚製薬 カロリーメイト「とどけ 熱量。」篇
人生で何度もむかえる正念場。勝つか負けるかわからないけど、逃げるわけにはいきません。大学入試に向かう少年が闘うのは競争相手と不安な心。今もこのCMをYouTubeで見返しては、入試にのぞむ高校生も多いとか。「挑む」ひとはもちろん、挑むひとの家族や友人たちも、「こんなふうに君はがんばっているんだ」と思うことでしょう。中島みゆきの『ファイト!』の歌詞と満島ひかりの歌声に心が震え、初めて見たとき号泣しました。続編「見せてやれ、底力」篇は新入社員のがんばりを描いた作品。満島ひかり歌う米米CLUBの『浪漫飛行』に、やっぱり泣けます。


日本の歴史に新しい感覚を

「ReBORN」への想いに感動する! TOYOTA「ReBORN」シリーズ
物語は2011年の東日本大震災のあと。500年ぶりに再会した豊臣秀吉(ビートたけし)と織田信長(木村拓哉)が東北をドライブします。お市の方(マツコ・デラックス)、伊達政宗(加藤清史郎)、千利休(笑福亭鶴瓶)、狩野永徳(石坂浩二)、北政所(渡辺えり)、徳川家康(堺雅人)など、遊び心ありの見応え十分なキャストとクラシックの名曲、力強い「ReBORN」のことばが、静かに心にしみいります。


よみがえる昔話がクールすぎる! サントリー ペプシネックス ゼロ「桃太郎 Episode」シリーズ

仮面ライダー、ウルトラマン、日本のヒーローは続々誕生していますが、桃太郎がその先駆けなのかもしれません。鬼ヶ島というとてつもない島での闘いを決意する桃太郎はとにかくクール、桃太郎の世界観が新鮮で息をのみました。音楽はザ・ヘヴィー (The Heavy)の『Same Ol'』、「自分より強いヤツを倒せ。」のコピーもクールです。


思わず(笑)となり、どうしてもつづきが気になるCM

青春の摩訶不思議を生き生きと描いた 大塚食品 ビタミン炭酸MATCHシリーズ

海、空、自転車、シュワっとしみる炭酸、それだけで素敵なドラマなのに、なぜに彼は大人になってしまうのでしょう。しかも声も大きく変化。それでも制服で語り合う彼の笑顔には、高校生の「キラキラ」が映るから不思議です。清々しさとプッと吹き出しそうなおかしさが共存するCM、「青春は戻らないらしい」のコピーがちょっと意味深な、さわやかな作品です。

社内の静かな闘争が巻き起こす人間ドラマ 全国都道府県及び全指定都市 ロト7シリーズ
動画:http://www.takarakuji-official.jp/tvcm/

妻夫木聡vs.柳葉敏郎の熾烈な争いがつづくロト7。「お前の夢は金で買えるのか」ではじまったシリーズは壮大なストーリーと激しい表情で視聴者を楽しませます。そんな2人に加え、石橋凌、名高達郎、新井浩文、戸田恵梨香、本田博太郎、小泉孝太郎が続々登場、重々しい演技で見せてくれます。腹黒いのは誰なのか、最後に勝つのは誰なのか、興味はつきません。


ほんの短い時間に命が吹き込まれるテレビCM、キャストはもちろん、音楽、コピー、さまざまな要素で完成されるドラマは総合芸術、CMは文化と言えそうです。日本を楽しくするCM、これからも楽しみですね。
 
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