アドバイス1 公的年金と家賃収入で生活費の捻出は可能
貯蓄が増えず、老後が不安というご相談ですが、不安の要素を考えると、足元の貯金残高が少なく、しかも毎年貯金ができていない。また、57歳以降の収入なくなるため、不動産収入でやっていけるかということなのでしょう。結論から先に言います。心配はほぼ不要と思っていいでしょう。長いスパンで見れば、まとまった貯蓄ができ、十分な老後資金が用意できると考えます。
現在の貯蓄が100万円となり、今年からお子さんの大学費用として年間120万円が発生し、さらに住宅ローンの支払いも毎月20万円ある。しかも、ご本人は役職定年となり、予定より早い退職となってしまう。ここだけを考えれば、確かに不安に感じるはず。しかし、大学費用は4年で終了、住宅ローンはあと5年で完済となります。
つまり、それ以降は年間コスト360万円を貯蓄に回すことができます。少なくとも、貯蓄が少ないという問題は、この時点で解消されます。ちなみに、退職予定の56歳のとき、退職金1100万円を加えると、4000万円の資金が手元にあることになります。
また、資産的に老後を乗り切れるかどうかという点については、実際にシミュレーションをしてみました。設定として退職後は就職せず、公的年金支給までは収入はマンションの賃貸料だけとします。また、56歳の退職時以降は、生活費は「月10万円程度」を想定されているとのことですが、基本生活費として月14万円ほど。それ加えて、自宅とマンションの関連経費、現在ボーナスから捻出しているご両親へのお小遣い、海外旅行費用など、さらに社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料)を加算し、年間支出を400万円程度としました。
家賃収入を相場としている月22万円とすると、貯蓄からの取り崩しは約140万円。これが65歳まで続くと、8年間で1120万円となります。さらに、家賃収入を年1%ずつ減らし、かつ何かまとまった支出があったとしても、2500万円は手元に残るはず。
一方、公的年金の支給額は、収入から類推して年165万円ほど。これに税金や社会保険料を差し引いて150万円ほどが手にできるとすると、家賃収入と年金で生活費はカバーできることになり、貯蓄2500万円は基本的に取り崩さなくて済む計算になるわけです。
アドバイス2 今は「貯蓄できない」と割り切ることも大切
もちろん、将来何が起こるかわかりませんが、シミュレーション上では、老後で資金的に困ることはあまりないと言えます。仮に、予期せぬ大きな支出があっても、ローンが完済しているマンションを2室所有しています。いざとなれば売却も可能ですし、ボランティアをしながらでも、今までのキャリアを活かせば(アルバイト程度の)ある程度の収入は、退職後も十分望ます。その点からも安心と言えます。また、シミュレーションの設定をさらにきびしくしてみます。まず、家賃収入ですが、今は相場22万円でも、実際に貸す10年後にその額で貸すことができるかは不確定です。そこで8割に減らして17万6000円にします。また、生活水準も先の設定よりも月5万円(年60万円)増加させたとします。それでも65歳のとき2100万円、70歳のとき1600万円が手元に残っています。
ただ、レジャー費を年間50万円として試算していますが、それでも今の半分以下の額です。退職後、より時間がある中で、その程度抑えられるかどうか。不安要素があるとすれば、その部分でしょうか。
ともあれ、今から4、5年の間が支出のピークとなります。その間は、思いどおり貯蓄できなくても、仕方がないと割り切ってもいいのでは。さらに言えば、それでも年間50万~60万円の貯蓄はできるのですから、今はそれだけで十分。過度に心配することも、無理に節約をする必要もないと考えます。
相談者「一人の人生」さんから寄せられた感想
一人で将来を考えていると、いつも上手く行かない部分ばかりが目につき、未来に対する自信を失い、気分は落ち込むばかりでした。今回専門家のご意見を頂いて、気持ちが随分と楽になり、楽しい老後を送れるように少しずつ考え始めました。しばらく貯蓄できないかもしれませんが、前向きに頑張れそう、感謝しております。教えてくれたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
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