セルフメディケーション税制は医療費控除の特例
会社員を含め多くの人にとって、確定申告書を提出する主な理由の一つに、「医療費控除の適用を受ける」ということがあります。医療費控除といえば、1年間にかかった医療費を集計して、合計額から、上限10万円の一定額を引いた金額を所得から控除できるという制度です。平成29年分の確定申告から、従来の医療費控除の計算方法に替えて、セルフメディケーション税制という制度の適用を受けることができます。
セルフメディケーション税制とは、健康診断の受診など、自己の健康の保持や疾病予防のための取り組みを行っている方を対象に、1年間に自分や家族のためにドラッグストアなどで購入した市販薬の購入費用の合計額のうち、1万2000円を超える金額を所得控除できる、というものです。
軽い風邪などの場合に、なるべく病院を受診する回数を減らして、膨張する国民医療費の国庫負担を少しでも軽くすることなどを目的とする制度です。
適用を受けられる上限は8万8000円となっていますので、セルフメディケーション税制の適用を受けられる市販薬の年間購入金額は10万円が限度、ということになります。
ちなみにどのような市販薬が対象になるかについては、厚生労働省のページに薬の名前の一覧が載っています。
また、市販薬の外箱にセルフメディケーション税制の対象品目である旨書いてあることもありますし、購入時のレシートに記載されていることもあります。ドラッグストアで購入できる薬は、おおよそ対象になっています。
セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、健康診断の受診などが必要
セルフメディケーション税制を受けるための要件として、1年のどこかで以下のいずれかの受診が必要です。
- メタボ検診
- インフルエンザなどの予防接種
- 勤め先が実施する定期健康診断
- 市町村が実施する健康診査
- がん検診
会社員であれば、会社で健康診断を受けることが多いと思いますが、個人事業主をはじめとしたそれ以外の方は、健康診断などを自分で申し込んでいるかにも注意が必要です。万一健康診断を受けていない場合でも、予防接種なども対象になりますのでチェックしましょう。ちなみに、家族の分の医薬品購入費用も対象にできますが、家族が上記のどれかを受診していることまでは要件になっていません。確定申告する人が上記のいずれかの受診を行っていれば、家族分も対象にできるということです。
市販薬の購入が多い場合はセルフメディケーション税制の方がお得になることも
従来の医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用です。選択ということは、セルフメディケーション税制を受ければ従来の医療費控除は受けられない、ということです。つまり、「市販薬はセルフメディケーション税制の適用を受け」て、「その他は従来の医療費控除を利用する」という組み合わせはできないのです。そこで、どちらの制度を受けたほうが得になるのかという点で判断する必要があります。
まず従来の医療費控除は、10万円(もしくは所得の5%)を超える部分だけが適用となります。そのため、そもそもの医療費が上記の足切り額に満たない場合は、セルフメディケーション税制の適用しか可能性がありません。セルフメディケーション税制の足切り額は1万2000円なので、この金額を超えるだけの市販薬を購入しているかどうかで判断します。
それでは医療費が15万円で、そのうち市販薬が3万円の場合はどうでしょうか? この場合、医療費控除の足切り額が10万円とすれば、従来の医療費控除は5万円、セルフメディケーション税制は1万8000円となり、従来の医療費控除の方がお得です。
このように、どちらを受ければよいかということは、単純に足切り額を引いた後の金額でどちらが高いかということで判断できます。総額の医療費が10万円に満たず従来の医療費控除の適用を受けられなかった方も、市販薬の購入額次第では、セルフメディケーション税制の適用は受けられる可能性があるということです。
健康診断等の受診結果等が必要になる
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例なので、領収書などが必要であることは従来の医療費控除と同じです。加えて、上記でも書いたようにセルフメディケーション税制の適用を受けるためには、健康診断の受診などが必要です。そのため、健康診断なら診断結果表のコピー(診断結果の部分以外)、予防接種なら受診時の領収書コピーなどが必要です。健康診断の費用や予防接種の費用自体は医療費控除の対象にならないのですが、セルフメディケーション税制の適用を受けるためにはこうした受診の証明書類の提出が必要になる、というわけです。