子供が自制心を養うには、遊びの力がカギ
遊び方を工夫してセルフコントロール力を身につけよう!
実際、カウンセリングをしていても、「子供の自制心のなさ」について相談されることがよくあります。年齢が上がるにつれ、自らを律して行動する場面が増えるため、それができないと、親子ともに悩むことになってしまうのです。 子供の自制心について、悩むママが多い現況を踏まえ、どうやったらセルフコントロールが効く子になるか、そのコツをお伝えしていきたいと思います。
小さい頃からのセルフコントロール力は、その後も引き継がれやすい
アメリカのスタンフォード大学が行った「マシュマロテスト」について聞いたことがあるでしょうか? これは今から40年以上も前に行われた実験でありながら、子供の自制心を分かりやすく計測したものとして、今なお、引用され続けている貴重な研究データです。対象は、当時4歳の子供たち186人。実験は、子供1人、実験者1人の1対1の形で進められました。1人ずつ教室に通された子供たちは、マシュマロが1つ乗った机の前に着席し、実験者にこう言われます。
「ちょっと用事があるので、部屋を出るから、ここで待っててね。このマシュマロは君にあげるよ。でも、私が戻ってくるまで食べるのを待てたら、マシュマロをもう1つあげる。もし1人でいる間にそれを食べたら、2つめはないよ。じゃあ後でね」
15分後、実験者が戻ると、3分の2の子はマシュマロを食べ、3分の1の子が食べずに待っていたそうです。4歳の段階で、自分をコントロールする力に差があることが分かります。
この実験はここで終わりません。この1回目の実験から18年後、追跡調査を行ったのです。幼少時の自制心の傾向が、その後、どう変化するかを調べるためです。その子たちは、すでに22歳の大人になっていましたが、なんと、4歳のときの自制心の傾向と相関があることが分かったのです。さらに、45歳になったときにも計測を試みると、そこでも同じ傾向が見られました。つまり、幼少時の自制心は、その後も引き継がれやすいということです。
ならば、幼少時にしっかりと身につけさせたいと思います。しかし、実際に「子供の自制心」をどう育んでいったらいいのかというと、なかなか難しいものです。ただひたすら、「我慢させること」を繰り返すだけでは、子供たちも欲求不満になりますし、弊害が出てくる恐れもあります。できれば、大人が取り入れやすい形で、しかも、子供がやっていて楽しい形で自制心が育めたらベストです。
子供の自制心を養う、昔ながらの遊び方
最近、イギリスのオックスフォード大学が行った研究が、「楽しく自制心を育てる策」を見出してくれていますので、ここでご紹介しましょう。それは、丸い大きな円を作って遊ぶ「サークルゲーム」で、子供たちのセルフコントロール力を上げていくというもの。サークルゲームというとピンと来ないかもしれませんが、私たちが子供の頃によくやったような、みんなで床に座り、輪になって遊ぶ、あのスタイルです。
その研究では、7~8歳の子に、35分間のサークルゲームを週に2回、3か月間続けました。すると、その子たちのセルフコントロール力が、以前と比べ、明らかにアップしていたのだそうです。
特に効果的だったのが、
「このゲームはこういうルールでやるものだ」
「このルールに従ってやるように」
と言われたグループの子供たち。
同じように輪になって「サークルゲーム」をやった子でも、「これをやると、〇〇が上手になるよ」とゲームで何を達成するかを言われたグループは、そこまでの効果はなかったそうです。「流儀やルールに従ってゲームを行う」というのがカギなのだそうです。
子供の自制心を養うのはこんな遊び方
子供たちが輪になって遊ぶには、ある程度の人数が必要ですので、理想的には、子育てサークル、保育園、幼稚園、小学校などのセッティングが理想でしょう。円陣を組み、- 先生のしぐさをできるだけ正確にコピーする
- リーダーの子を決め、その子の手の叩き方を正確にまねる
- 既存のルールをアレンジしたゲーム(一般的には赤信号でストップだが、このゲーム内では、紫のサインが出たら手の動きをストップ、など)
- オリジナルの規則を作り、そのルールに則って行うゲーム
なぜこのような遊び方が自制心を育むのかについてですが、ゲームの中で、ルールに縛られることで、忍耐力がつくからではないかと考えられています。
筆者は海外暮らしが長いので、諸外国の子供の様子を目にすることも多いのですが、日本人の子供たちの方が、このタイプのゲームは得意なのではないかと感じています。日本人は、規則に基づいた行動を好む真面目なメンタリティーが土台にあるので、ルールのあるゲームを介して子供たちの自制心を育むのは、大人としても取り入れやすい方法ではないかと思われますので、ぜひお試しください。
*出典:Child Development(2017)「Rituals Improve Children's Ability to Delay Gratification」より
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