男のボディケア

スメハラは体臭のメカニズムを知って予防・対策する

「スメルハラスメント」というワードが一般化された問題となっています。体臭が他人の尊厳を傷つけるというのですが、あなたは「スメハラ」していませんでしょうか?体臭発生のメカニズムを理解して対策をすれば、あなたは必ずスメハラ問題から解放されるはずです。

大泉 高明

執筆者:大泉 高明

男のボディケアガイド

もしかするとあなたも「スメハラ」人間?

「スメハラ」とは「スメルハラスメント」の略称。これまで「セクハラ」「パワハラ」が社会的問題とされてきましたが、スメハラも社会一般的な問題となっています。セクハラ・パワハラはセーフのあなたも、スメハラは大丈夫でしょうか?

そもそもハラスメントとは、様々な場面での「嫌がらせ、いじめ」のこと。他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えたりすることを指します。

スメハラは本人の意図に関係なく、自身の体臭や口臭で、相手を不快にさせたり、不利益を与えたりすることです。セクハラやパワハラは意識を変えることで防げますが、スメハラは、意識の問題ではありません。

スメハラを防ぐためには、科学的に体臭や口臭の発生原因を知り、適切な対策をすることが大切です。地球温暖化で、次第に温帯から熱帯に近づきつつある日本では、秋になっても暑い日が続きます。あなたのスメハラ対策は本当に大丈夫でしょうか?

今回は、スメハラの原因のうち体臭に絞って、その発生メカニズムと対策について解説します。これを行えば、あなたはこの夏にスメハラ容疑で逮捕されることはないでしょう。
 
汗をかくのは必然だが、スメハラ男にはなりたくない…

汗をかくのは必然だが、スメハラ男にはなりたくない…

 

体臭発生のメカニズムと対策

体臭は誰にでもありますし、臭いを嗅いだことがない人はいません。しかし、スメハラ扱いされるような強烈な体臭もあれば、ほとんど気にならない程度の体臭まで様々なことも事実です。それでは体臭はどのようにして発生し、どうしてこれほどまでに個人差があるのかを考えてみましょう。

結論としては、体臭は以下の通りに発生します。

全身状態→食生活→飲食物→腸内環境(腸内菌フローラ)→肝臓代謝→血液状態→汗腺・皮脂腺分泌→皮膚環境(皮膚常在菌)→悪臭化・揮発化→体臭

このステップで体臭が発生しますので、このメカニズムを知って対策すれば、スメハラと言われることはありません。
 

全身状態

例えていうと、体臭とは車の排気ガスのようなもの。エンジンの調子が悪いと排気ガスが臭くなるのと同じで、病気だったり、体調が不調だったりすると体臭がでます。がん特有のニオイもあり、臭いで病気がわかるともいわれています。

【対策】
人間ドックや健康診断を受け、体の不具合があったら、まずそれを直すことです。また、寝不足や不規則な生活でも体の代謝が下がり、体臭の原因になります。体臭予防では、体調管理をまず行うべきです。
 

食生活

食べ過ぎ、飲み過ぎはエンジンに燃料を加え過ぎた状態で、体臭の原因になります。人間の消化器の処理能力には限界があり、これを超えるとお腹の中で食べ物は十分に消化されず、一種の腐敗状態になります。

また、適量であっても、肉ばかり食べて野菜を食べないと、エンジンにガソリンだけ入れて空気が不足している状態と同じで、エンジンなら黒煙、人間では体臭となります。

お酒も肝臓の処理能力に限界があり、飲み過ぎると二日酔いではなくても、アルコールの分解物のアルデヒド類が血中に増えて、二日酔い臭がします。

【対策】
とにかく腹八分目で、食べ物も飲み物もほどほどにして、バランス良く、良く噛んで食べることです。これができないと、他の対策は無意味です。
 

飲食物

体臭元のほとんどは食べ物です。ニンニクやニラは、食べ物と体臭との因果関係がわかりやすいですが、他の全ての食材も体臭と関係しています。

肉や魚などの動物性たんぱく質には、システインなどの硫黄を含んだアミノ酸が豊富です。栄養素としては不可欠ですが、食べ過ぎたり、野菜が不足したりすると、代謝が上がらず、悪臭物質であるメルカプタンや硫化水素の基になります。

また、肉には動物性の脂肪が多く、摂りすぎると動物性の脂肪酸が皮脂腺からたくさん分泌され、脂くさい体臭のもとになります。糖分の摂りすぎも代謝が下がり、体臭の原因になります。

【対策】
動物性たんぱく質を食べ過ぎず、適量にすること。動物性たんぱく質の3倍ぐらいの野 菜を摂ることが体臭を防ぐために必要です。特に葉緑素の多い緑の野菜は、ニオイを吸着する働きがあります。糖分を摂りすぎないようにして、アルコール類もほどほどにしましょう。
 
美味しくても、動物性たんぱく質はほどほどに

美味しくても、動物性たんぱく質はほどほどに

 

腸内環境

人類はアフリカに誕生し、数百万年をかけて進化し、現在の形になりました。アフリカを出て、ヨーロッパ、中東、インドに進んだアーリア系の人類と、中国や東南アジアに進出し、南北アメリカ大陸にまで進んだモンゴロイド系の人類に別れました。

この過程で、肉食文化を中心としたアーリア系は腸が短く、コメなどの穀物や野菜類の食文化を中心としたモンゴロイド系は、腸が長くなるように進化したというのが通説。別の説によると、アーリア系の欧米人の腸と比べて、モンゴロイド系の日本人の腸は1.5倍も長いともいわれています。

戦後急速に食文化が欧米化した日本では、米や野菜類の消費が減り、肉の消費が高まりました。少量の肉の摂取は問題ありませんが、日本人が欧米人並みに肉を食べると、欧米人ではとっくに便として外に出ているころに、日本人では腸の2/3程度のところに留まっています。

肉類には硫黄を含んだアミノ酸が多いので、肉の分解物は非常に強い悪臭が。このため、日本人が肉を食べ過ぎると、この悪臭物質を大腸で便から水分を回収する際に、この悪臭物質も血液に取り込んでしまいます。

また、腸内環境、特に腸内フローラ(菌叢)の状態も体臭に密接に関係します。腸内には様々な菌がいますが、簡単にいうと善玉菌と悪玉菌がいて、悪玉菌が増えると消化が上手くいかず、悪臭の原因物質が増えてしまいます。

【対策】
善玉菌を増やす効果がある食物繊維が豊富な根菜類を多く摂ることが大事。不規則にならないように、バランスの良い食事をとることも大切です。
 

肝臓代謝

腸から吸収されたものは、門脈を通って肝臓に送られ、様々な酵素により、吸収された物質が分解されます。腸管から吸収された悪臭原因物質も肝臓で解毒や中和がされます。

しかし、この肝臓の機能が衰えると、解毒や中和ができず、そのまま全身の血液に流れ出てしまい、体臭の原因になります。肝臓に何らかの疾患がある場合は、まずその治療をすることが優先されます。

さらに、特に肝臓に疾患がなくても、暴飲・暴食をすると肝臓に過度の負担がかかり、悪臭物質の解毒や中和が不十分になり、体臭の原因になります。喫煙も体がタバコ臭くなるというだけではなく、肝臓に負担をかけるため、タバコ臭以外の体臭の原因にもなります。

【対策】
肝臓に負担をかけず、解毒や中和を十分行わせるには、暴飲暴食をせず、深夜の飲食など不規則な食生活をしないことです。特に飲酒は肝臓にかなりの負担をかけますので、体臭が気になる人は、飲酒をなるべく控えるようにしましょう。喫煙をしていると、なかなか体臭から縁を切ることは難しいです。
 

血液状態

血液の汚れは体臭に直結します。肝臓で充分に分解や中和ができなかった悪臭原因物質、動物性の脂肪酸などは、やがてエクリン腺(汗の汗腺)、アポクリン腺(性腺)、皮脂腺を通して体外に排出され、いよいよ体臭が発生します。

また、赤道2周半に相当する10万kmあるといわれる血管の血流が滞ると、流れが悪いどぶ川のような状態になり、ますます悪臭を発するようになります。

【対策】
血液がサラサラ/ドロドロとよく言われますが、ある種の比喩的表現で、その内容も意味も様々。確かなことは、

全身状態→食生活→飲食物→腸内環境(腸内菌フローラ)→肝臓代謝→血液状態

というプロセスの中で、結果として起こる状態のことで、何かを食べたり、飲んだりしたら直ぐにドロドロになる、サラサラになるとうのは誤りです。これまで解説してきたこのプロセスの対策をしっかり行えば、血液はきれいなサラサラ状態になり、体臭も防げます。
 

汗腺・皮脂腺分泌

体臭の原因となる分泌物を出す分泌腺は3つあります。1つ目はエクリン腺(小汗腺)といわれる汗を出す汗腺です。汗は血液中の水分を皮膚に出して、体温調節する働きがあります。また、血液中の悪臭原因物質や、老廃物、毒素などを皮膚に排泄するという機能も持っています。

2つ目はアポクリン腺(大汗腺)といわれる性腺の一種で、フェロモン分泌に関係あるとされる汗腺です。このアポクリン腺は人種や個人によって発達の仕方が大きく異なります。人種的には黒人や白人に発達している人が多く、黄色人種(モンゴロイド系)はあまり発達していないとされます。

しかし、個人差も多く、フェロモンはじゃ香のように、極薄い状態では芳香ですが、濃いと悪臭に感じる臭いです。このアポクリン腺が発達した人は、ワキガ体質ともいわれ、腸や血液が汚れていたり、不潔にしていたりすると、強い体臭を出しやすい人です。

3つ目が皮脂腺です。もともとは皮膚表面に油分を供給して皮膚を健康に保つために必要な分泌腺ですが、一歩まちがえると脂臭い体臭や、加齢臭のノネナールを分泌する腺でもあります。

【対策】
ワキガ体質であっても、腸と血液がきれいで、皮膚、衣類、靴などを常に清潔にしていれば、それほど問題にはなりませんし、元々はフェロモンの性質が強いので、上手く活かせば悪いことではありません。

問題は普通の人より、ちょっと油断すると強い体臭になり易いことです。アポクリン腺を手術で除去する方法もありますが、あまり一般的とはいえません。
 

皮膚環境(皮膚常在菌)と悪臭化・揮発化

血液中に悪臭原因物質が多ければ、それがエクリン腺、アポクリン腺、皮脂腺から皮膚表面に分泌されます。またそうでなくても、汗腺は一種の排泄器官でもありますので、様々な体の老廃物が皮膚の表面に排泄されます。

これだけでも体臭の原因になりますが、さらなる問題も。皮膚には腸と同じく皮膚常在菌というフローラ(菌叢)があり、これにも善玉菌と悪玉菌があり、一定のバランスを保っています。この皮膚常在菌は健康な皮膚を保つために欠かせないもので、人間とは一種の共生関係にあります。

しかし、皮膚に悪臭原因物質などが増えると、悪玉菌の勢力が増強。動物性たんぱく質分解物などの悪臭原因物質を悪玉菌が食べて、よりニオイの強い揮発性悪臭物質であるメルカプタンや硫化水素などを排出します。

また、皮脂を食べて脂臭い体臭の原因物質である、揮発性のある低級脂肪酸の酪酸、カプロン酸、カプリル酸のほか、加齢臭のノネナールなどを出します。

【対策】
とにかく体の中に体臭の原因物質を溜めないことが一番ですが、次に重要なのが皮膚の清潔です。汗をかきやすい夏は、朝晩お風呂かシャワーを浴びると効果的です。
 
清潔な身体を保つこともビジネスマナー

清潔な身体を保つこともビジネスマナー


抗菌効果があるとされるシャンプー、石鹸、ローションなどを使うのも効果的ですが、洗うポイントを外すと効果がありません。詳しくは「体臭で嫌われる人必見!夏に向けて改善すべき生活習慣」を参考にして下さい。

また、衣類や靴にもたくさんの菌が繁殖しています。汗をかくと菌は数時間で何万倍にも増殖して、体臭の原因になります。下着や靴下を毎日清潔なものに着替えるのは当たり前ですが、シャツなども毎日取り換える必要があります。

体臭が気になる人は、下着や靴下も途中で変えるのも良い対策です。毎日洗濯するのが難しい、上着も陽に当たるところに干して日光消毒すると良いかもしれません。

靴も菌の巣窟です。毎日同じ靴を履くのは禁物です。1日履いたら2日は乾燥させましょう。できれば日光に宛てて消毒したり、乾燥材で乾燥したりしましょう。詳しくは「気になる男性の足の臭いの原因と今すぐできる対策法」を参考にして下さい。
 

代表的な対策商品一覧

最後に、スメハラ対策におすすめの商品を紹介します。状況に合わせて使ってみるのも効果的です。
 
  • 制汗作用があるとされるもの
ホウ酸
・効果:ホウ酸は汗腺の収斂作用があり、ある程度汗の出方を押さえる効果があります。

制汗剤
・商品:Ban/ライオン株式会社、エイトフォー(8×4)/花王株式会社、AG+/株式会社資生堂
・効果:酸化亜鉛 、クロルヒドロキシアルミニウム 、イソプロピルメチルフェノール、緑茶乾留エキス、ゼオライトなどを組み合わせたシリーズで、制汗作用と消臭作用があるとされる。
 
  • 服用して効果があるとされるもの
クマ笹を原料にした医薬品
・商品:ササヘルス/株式会社大和生物研究所、サンクロン/サンクロン業株式会社
・効果:クマ笹を原料とした第三類医薬品で、医薬品として体臭除去作用が認められている。

シャンピニオンエキス(サプリメント)
・効果:キノコを原料にしたサプリメントで、口臭や体臭に効果が期待できるとされる
 
  • オーデコロン類
香料によるマスキング効果で体臭を覆い隠す効果がありますが、使い方を誤るとかえって逆効果になるので、基本対策を行った後の仕上げに使うのが良いでしょう。
 
  • 石鹸・シャンプー
様々な抗菌作用があるとされる石鹸・シャンプーが商品化されていますが、抗菌活性に頼るより、こまめにポイントを押さえて洗うことの方が大切です。米食品医薬品局(FDA)が、トリクロサンなど19種類の成分を含む抗菌せっけんの販売を禁止したこともあり、抗菌活性があるとされる石鹸の効果に疑問符も呈されています。

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※個人の体質、また、誤った方法による実践に起因して体調不良を引き起こす場合があります。実践の際には、必ず自身の体質及び健康状態を十分に考慮し、正しい方法で行ってください。また、全ての方への有効性を保証するものではありません。

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