あるとき、仕事の打ち合せで喫茶店に入ったところ、隣のテーブルで不動産会社の営業担当者とそのお客様らしきふたりが会話中でした。聞くつもりはなくても聞こえてきたので、何の気なしに聞いていたのですが……。
お客様からの質問に対して、間髪入れずに断定口調の大きな声で答えているその営業担当者の話は、はっきりいって間違いだらけ。嘘を並べているというよりも、営業担当者本人がよく知らないことを知ったかぶりで答えている様子だったのです。
可哀相なこのお客様。
「○○さんはすごいんですね、私は○○さんのこと信用します」 って……。
よほど口を挟んでやろうかとも思ったのですが、さすがに無関係の第三者である私が口出しすることは憚られました。それでもあえて注意して、営業担当者に騙される危機からお客様を救ってあげれば、正義の味方になれたのかもしれません。
結局はそのまま声をかけることもありませんでしたが、もっとも、そのお客様は営業担当者の間違いなど百も承知で、その営業担当者をからかっていただけかも。
それはともかくとして、残念ながらこの手の営業担当者はまだ不動産業界内に存在するようですから、きょうも日本のどこかで誤った強引な説明がされているでしょう。お客様に被害のないことをお祈りするしかありません。
しかし、お客様のほうでも営業担当者をしっかり選ぶことが大切です。そのとき、「どのような質問にもすぐに答えてくれること」が必ずしもよい営業担当者だとはかぎらないと理解しておくべきであり、相手の口調や態度で勘違いしないようにしたいものです。
それが正しい答えならよいのですが、間違った説明であれば役に立たないばかりか、思わぬ損害を生じることにもなりかねません。
いまはネット上にさまざまな情報が溢れていますから、基本的な内容なら間違った説明を受けてもその間違いに気付く機会は多いだろうと考えられます。ところが、個別の事情が絡む物件に関する説明は、営業担当者が誤った説明をすればお客様にはその真偽が分からないのです。
ちなみに、上記の二人連れは年配女性のお客様と、ややイケメン風の若い男性営業担当者の組み合わせでしたが、女性客にとって男性担当者がイケメンかどうか、男性客にとって女性担当者が美人かどうかは、もちろん信頼性にまったく関係ないこと。
見た目ではなく、本質的な部分で営業担当者を選ぶことも必要でしょう。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2006年7月公開の「不動産百考 vol.1」をもとに再構成したものです)
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