住宅など不動産の売買では、買主が予期せぬ損害を被ることがないように事前の調査をしっかり行なうことが重要です。トラブルの原因にはさまざまな要素があり、それらをすべて回避しようとすれば都道府県や市区町村などが保有する各種の情報を開示することが欠かせません。

それに対して実際のところはどうでしょうか。たとえば、個人情報保護法が2005年に施行された際には自治体などが過剰反応を示し、本末転倒というしかないような対応もあるとの報道がされていました。

個人情報保護法だけが原因ではないでしょうが、不動産の買主が何らかの損害を被るかもしれないような情報を「隠匿」する自治体の増加が2000年代後半にみられたようです。

要するに「不動産のマイナス要因は所有者の個人情報だ」という発想が根底にあったらしいのですが、私自身も何度か役所の回答拒否に遭ってうんざりしたことが思い出されます。

物件調査に慣れた身であれば即座に他の手段を講じますから、それで実害を被ることはなかったのですが、手間が増えたことだけは確かでしょう。物件調査にそれほど慣れていない不動産業者だったら、分からないままで契約に進んでしまったケースがあるかもしれません。

国土交通省や都道府県の不動産業を管轄する部署は、基本的に「買主=消費者を保護する」という立場ですが、それ以外の省庁や役所の部署では「買主を保護する」という発想自体をまったく持ち合わせていないように感じられることもあります。

トラブルが起きてからは親身になって相談に応じてくれる役所のほうが多いと考えられますが、トラブルを未然に防ぐことについては、まだまだ不十分な役所が多いようです。

また、近年はハザードマップなどによる災害リスクの公表が進んできているものの、たとえば地震の際に地滑りなどの危険性がある「大規模盛り土造成地」の調査・公表については、依然として消極的な市区町村も少なくありません。

さらに、地域で生じている問題や住民トラブルなどについては、何も教えてくれない役所が大半ですし、「事故物件」についても警察が教えてくれることはないため、最近は民間の事故物件情報サイトが人気のようです。

住民トラブルや事故物件などについては売主からの告知に頼らざるを得ない部分が多いものの、それ以外の災害リスクなどについては役所が積極的に公開しなければ、売主自身も知らないケースがあるでしょう。

災害リスクなどマイナス要因を公表することによる地価下落への懸念から、住民の反発を恐れて公表に踏み切れない市区町村が多いという話も聞かれます。しかし、マイナス要因を隠したままで表向きの地価を維持しても、それは幻想の価格でしかありません。

マイナス要因が存在する土地を所有している人や現に住んでいる人にとっては厳しい話でしょうが、これからの不動産市場では事実は事実として明らかにすることが求められています。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年8月公開の「不動産百考 vol.2」をもとに再構成したものです)


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