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不動産契約をめぐる「議員」の暴挙

不動産をめぐって何らかのトラブルや問題が起きたとき、地元の議員に頼って解決を図ろうとする人もいるようですが、それが必ずしも良策だとはいえません。ある地方議会の議員がとった「暴挙」とは……。

執筆者:平野 雅之


私自身は売買物件の仲介をメインに仕事をしてきたのですが、賃貸物件を数多く取り扱っている仲介業者の話をたまに聞くと、売買では考えられないような驚くことも起きるようです。

あるとき、賃借人(借主)が家賃を3か月分滞納していたので督促をしたのだそうですが……。

そうしたら後日、その賃借人と、連帯保証人になっている某地方議会の議員の連名で、「督促を受けたことにより精神的苦痛を負ったから慰謝料を支払え」と賃貸人(貸主)のところへ内容証明を送ってきたとのこと。まさに本末転倒の暴挙としかいいようがありません。

当時者の間でどのようなやり取りがあったのかは詳しく聞いていませんし、その後の顛末も聞いていませんが、おおまかにいうと、賃貸借契約とは直接関係がない部分で、その連帯保証人(議員)が貸主の弱みを握り、家賃の支払いを免れるために理不尽な攻撃に出たようです。

売買契約でも賃貸借契約でも「信義誠実の原則」が存在します。契約書のなかに「信義誠実の原則」または「規定外事項の協議義務」などとして記載されている部分です。

起きてしまったトラブルが大きくならないうちに対処することも大切ですが、お互いにトラブルの原因を作らないことも重要です。「争いごとはお互いに避けましょう」というのが根本にあるわけですが、この議員のような抗議には、信義も誠実もありません。

また、賃貸借契約とは異なりますが、敷地境界をめぐる隣人トラブルなどに地元の議員が口を出すことで、逆に問題が大きくなったような事例もいくつか聞いたことがあります。

トラブルの解決に議員が絡むと余計に話がこじれるケースも多いでしょうが、議員自身がトラブル当事者の場合はさらに厄介です。

もちろん、全体をみればしっかりとした議員のほうが多いでしょうが、ちゃんと対応のできる議員なら、そもそもトラブルなど起こさないはず。トラブルを起こすような議員なら、その地位を悪用しようとする人物でしかないでしょう。

冒頭の「家賃滞納」は本人に非がありますが、不動産に関して何らかのトラブルに巻き込まれたときは、その内容に応じてまず弁護士や自治体の担当課、不動産の専門家などに相談をすることが原則です。

不動産をめぐるトラブルなどに対し、いきなり地元の議員に頼って強引に解決しようとすれば、かえって解決を難しくすることにもなりかねません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年8月公開の「不動産百考 vol.2」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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