健康と幸福度の意識調査…あなたの幸せの条件は?
「幸せ」と感じている人は家族そろって朝ごはんを食べている人が多いよう。あなたはどうですか?
人はどんなときに幸福だと感じるのでしょうか? 2019年に内閣府が発表した「「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書」によると、性・年齢、地域差、年収・金融資産残高・学歴、社会とのつながりなどいろいろな条件で生活全体における満足度を調査したところ、健康状態がもっとも満足度に影響を与えたとの結果があります。また、2014年に厚生労働省から発表された「健康意識に関する調査」によると「幸福度」を判断する際に重視した項目に「健康状況」と回答した人が最も多かったという結果があります。
もちろん健康なら何でもよいというわけではないでしょうし、病気と闘っていても幸福を感じることはできるはずですが、この結果からは、健康がベースとなることで、仕事も頑張れ、遊びも楽しめて、幸せを感じやすいと考えている人が多いことがわかります。
<目次>
- 「朝ごはん習慣」がある人ほど幸せを感じやすいという報告も
- 朝食習慣は栄養バランスが高い人ほど「幸せ度」も高い
- ごはんを通して家族と過ごす時間も、幸せ度の実感につながる
- 朝食を習慣化する方法・朝ごはんを食べる簡単な時間づくり
「朝ごはん習慣」がある人ほど幸せを感じやすいという報告も
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターは、2018年に1万1876人を対象として「肥満や高脂血症、食生活・運動習慣がうつ病と関連」についての調査を行いました。これによると、うつ病の予防や治療には「体重の適正なコントロール、肥満やメタボリック症候群と関連する疾患の治療や予防、朝食をしっかり摂り、間食や夜食を控え、運動を心がけること」が大切であるとしています。「栄養をしっかり摂り」ではなく「朝食をしっかり摂り」と書かれているところが、非常に興味深いと思いませんか?もう1つ、少し古いデータになりますが、2010年に20代から60代のビジネスマン1000人を対象とした「幸せ度とライフスタイルに関する調査」があります。この調査により、朝ごはんを食べる習慣のある人は朝ごはんを食べる習慣のない人に比べて、自分は幸せだと感じている割合が高いことが分かりました。栄養バランスのしっかりした朝ごはんを食べる習慣のある人たちは、習慣のない人たちに比べて、仕事にも余暇活動にも満足している割合が多く、経済的にも満足しています。さらに健康状態もよく「家族と過ごす時間」など精神的な面にも「幸福感」を感じている人が多いことが見てとれます。
一方、朝ごはんを食べる習慣のない人たちのデータを見ると「幸福感」に「経済的な余裕」を最も重視しており、「イライラしたり不安」な気持ちを感じることも多いようです。休日はゴロゴロと横になって過ごし、少しでも待遇のよい職場があれば転職したいと現在の仕事にも後ろ向きな様子。家族と過ごす時間などにも幸福感を感じることが少ないという結果になっているようです。
「朝食の習慣」があるから、心身が健康で、経済面でも、仕事にも家庭にも満足度が高いのか、それとも経済的などの満足度が高い人が「朝食の習慣」を保ちやすいのかは興味深いところですが、これだけ相関関係が見られるのであれば、まずは自分でできる「朝食習慣」を身につけることは、毎日の幸福度をより高めていくのに有効な方法といえるのではないでしょうか。
朝食習慣は栄養バランスが高い人ほど「幸せ度」も高い
上記の結果は「朝ごはんを食べる習慣がある」ことだけが対象でしたが、朝ごはんの内容についてもう少ししっかり調査してみると、朝ごはんのメニューとして、ジュース、牛乳、コーヒーなどの飲み物を飲んでいる人、パンやサンドイッチなどのパン食が主食の人、ごはんやおにぎりといった米食の主食を食べている人が多いようです。飲み物や主食に「幸せ度」の差は見られませんが、「幸せ度」が高いと感じている人たちは「バナナやリンゴなどの果物」「サラダやおひたしなどの副菜」を食べています。単品ダイエットの一環でバナナやリンゴだけを食べている人もいないとは限りませんが、「幸せ度」の高い人たちはいろいろな料理を組み合わせて食べており、栄養バランスのよい朝ごはんを食べていることが推察されます。「朝ごはんを食べないのは絶対NG!その理由と朝食習慣化のコツ」でもご紹介しましたが、朝ごはんを食べた子どもの方が学業成績もよいことが分かっています。当調査を行った川島隆太先生(東北大学)は「朝飯きちっと食わないとバカになる」と提唱されています。少し思い切った言い方に聞こえるかもしれませんが、栄養学的にはもちろん、生活習慣の面でも、まさにその通り。
子どものうちに朝ごはんをしっかり食べる習慣を身につけていない人は、社会人になって朝ごはんの重要性に気づいたところで習慣化するのは難しい……という現実もあります。簡単なようで、習慣化されていないと難しい。けれどさまざまなメリットがあるのが「朝食習慣」といえそうです。
筆者が勤務する病院に来院する患者様の中にも、朝ごはんを食べる習慣が全くないという方もいらっしゃいます。中には、内科的な疾患だけでなく、精神疾患も併発して治療を受けられている方もいらっしゃいます。心身の疾患のすべてが朝ごはん習慣に起因しているとはいえませんが、こういったケースもあるということを頭の片隅に置いて、自分でできる健康管理法を習慣化していくのがよいのではないかと思います。
ごはんを通して家族と過ごす時間も、幸せ度の実感につながる
調査の中で「幸せ度」が高かった人たちは「健康状態」に加えて「家族と過ごす時間」が重要だと考えている人が多いことも分かりました。特に子どもは食生活の基礎が決まる時期。親子で調理を一緒にすることは、子どもの脳の発達を助けることも知られています。例えば、親子で週に1回、ホットケーキを作ることで親の子育てストレスが下がるともいわれていますし、子どもも発達心理学的によい影響を受けるようです。このような経験によって幸せを感じて育つことでも、大人になってからも「食」や「家族と過ごす時間」を大切に思う土台ができていくのかもしれません。
朝食を習慣化する方法・朝ごはんを食べる簡単な時間づくり
朝ごはんを食べた方が健康にもよいし、「幸せ」を感じやすいことも分かりました。とはいえ、忙しい朝、朝ごはんはできるだけ手軽に済ませたいというのが本音だと思います。朝ごはんを食べる目的は「体を眠りから目覚めさせ、午前中のエネルギー源を確保すること」ですから、エネルギーを作りやすい栄養のバランスのとれた朝ごはんを食べることが大切。農林水産省では「めざましごはん」として、朝ごはんに米飯を推進しています。夜のうちに炊飯器をセットしておけば朝、起きて食べるだけ。おかずは夜のうちに作り置きできるものを用意しておけば手間いらずです。
これが理想の朝ごはんの青写真だと思っていただければけっこうです。しかし、実際には、朝ごはんを食べる時間が確保できないと考えている人も多いと思います。どうしても難しいという方は、「朝ごはんにお菓子はOK?朝に食事が大切な理由」も参考にして、自分自身の朝のスケジュールを考えて、朝ごはんを食べるにはどうしたらよいのか、工夫をしてみてください。
朝ごはんで健康だけでなく、毎日の幸福度も上がる可能性があるのです。最近つまらないな、落ち込むことが多いな、心から笑っていないなと感じている人は、ぜひ朝ごはんの習慣を見直してみてください。
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