カタログ燃費よりも走りやすさを優先
ハイブリッドやEV(PHV)に続くエコカーとして、ガソリンエンジン車の燃費を高めた「第3のエコカー」。その元祖的存在が2011年9月登場の初代ダイハツ・ミラ イースだった。
約2カ月後にスズキがアルト エコを投入し、「ダイハツvsスズキ」による燃費競争を繰り広げてきたのは周知のとおりで、そこに他メーカーも追随することで、軽自動車の燃費向上が実現してきた。
しかし、その燃費はいわゆるカタログ燃費(JC08モード)であり、実際の燃費(実燃費)とは乖離していた。さらに、こうしたチキンレースともいえる燃費競争が三菱(OEMの日産版含む)の燃費数値の不正問題、スズキの燃費計測不正問題にも発展していった側面も否定できないだろう。
また、燃費重視を図るばかりに発進・加速性能に対して不満も出ていたそうで、2代目にスイッチした新型ダイハツ・ミラ イースは、カタログ燃費を先代の後期モデルと同じ最高値35.2km/Lに据え置き、ストレスのない走りを重視したという。
そのためには、軽量化ももちろん盛り込まれている。車両全体で80kgものダイエットがそれだ。今までであれば「軽くなったのに燃費は変わっていないの?」という疑問も浮かぶ。
軽量化のぶんを燃費向上とトレードオフの関係にある加速性能など走りに向けているのが新型ミラ イースのひとつの特徴だ。逆にいえば、軽くなっただけ燃費向上に振ることもできたはず。
しかし、カタログ燃費の数値が少しくらい上がるよりもストレスのない加速性能を引き出す方がユーザーニーズに応えることになるはず、という決断は歓迎したい。
「走り、燃費、安全」のバランスがいい
実際の走りも期待以上だった。停車時からの加速性能も「遅い」と感じさせることなく、スムーズに速度を上乗せできる。
また、一般的に軽くなると乗り心地の面では不利になりがちだが、軽いボディにも関わらず軽自動車としては十分に納得できる快適性が確保されている。
高速道路に場所を移しても80km/hくらいまでなら車内も比較的静かで、乗り心地やハンドリングの面でも大きな不満はない。ただし、法定速度上限の100km/h巡航となると、パワートレーン由来のノイズやロードノイズ、風切り音などが大きめに侵入してくる。
後席は街中であればまずまずという乗り味だが、高速道路ではボディの小さな揺れが常に続く感じで、タイヤハウス周辺からの音も盛大に侵入してくる。
このあたりは、85万円を切るエントリー価格で、100万円前後の価格帯がメイングレードとなっているだけにコスト面での厳しさを感じさせる。
さらに、ハンドリング云々というモデルではないが、100km/hくらいになると、直進安定性ももう少しという印象だ。ただし、コーナーリング時の姿勢も悪くなく、郊外や山がちな地形でも毎日の「下駄代わり」として十分に役割を果たしてくれそう。
「スマートアシスト3(SA3)」装着車を選びたい
このクラスの軽自動車は、主に高齢者を中心に、若いドライバーにも支持されている。1家に1台ではなく、1人1台といった地域では根強いニーズがある。そこで気になるのが、最近報道されることの多い高齢ドライバーを中心としたブレーキとアクセルペダルの踏み間違いなどの事故。
ステレオカメラとソナーセンサーを採用した衝突回避支援ブレーキ「スマートアシスト3」を、廉価グレードを除いて設定しているのも評価したい。新型ミラ イースを買うなら「スマートアシスト3」装着車は必ず選びたい。