アドバイス1 年間の支出をきっちり把握しよう
ご主人がやむなく転職することになり、収入が減ってしまうわけですが、奥様がパートから正社員として働くことができるとのこと。結果的に、ほぼ現状と変わらない世帯収入が想定されますので、現状の収入で教育資金等を試算してみます。まず現在の収支ですが、「毎月、いくらかでも貯蓄できる体質に変えたく」とありますから、ほぼ毎月貯蓄はできていないということになります。一方、データを見ますと、世帯収入(手取り)から毎月の生活費を引くと約5万円の黒字。年間にすると60万円ですから、金額としては十分に大きい額です。これが支出に回っているとすれば、それが何かをまず把握しておく必要があります。
ボーナスの支給がないことを考えれば、固定資産税はここから捻出されているはずですが、それ以外の不定期支出が何か。冠婚葬祭費、旅行等のレジャー費、あるいは毎月の生活費が思っているより高いことも考えられます。
ともあれ、具体的な支出の内訳が見えないと、家計の見直しがスムーズにできません。年間を通して、どのような支出があったのか。使途不明金はないのか。まずはここをクリアにしましょう。
アドバイス2 年間100万円貯蓄のポテンシャルはある
実際の支出(年間)の内訳が判明したところで、次に家計を見直します。まず、固定支出である保険の見直しは、保険料コストを一度下げてしまえばずっと負担軽減の効果が持続しますので、ぜひ実践してください。重要なのは、遠い将来の保障を確保するよりも、まずは目先、つまり貯蓄を増やすことです。したがって、夫婦とも、加入している終身保険は払済保険にします。また、こども共済も不要だと思います。一方、今後奥様が正社員として働くとなると、適正な額の死亡保障が必要です。定期保険で保険期間10年、確保するのは1000万円。保険料は2000円程度ですから、結果的に月1万円は保険料コストが下がります。
さらに、その他の支出費目ですが、食費、通信費、電気ガス水道料金、家族の小遣い、雑費とどれも総じて高めです。逆に言えば、見直ししやすい家計ということ。どれを削るかは、それぞれの世帯で優先順位があるかと思います。目標としては、先の支出費目の合計額の20%減。金額としてはほぼ5万円となります。
簡単ではありませんが、確実に貯蓄できるよう、奥様ともよく話し合って家計を立て直しましょう。当然、そのためにはお子さんも含め家族それぞれが、我慢を強いられます。しかし、優先すべきは教育資金です。しかも、貯蓄が少なく、学資保険に加入もしていないため、実質教育資金はないに等しい状態。児童手当も生活費に組み込まれています。これは憂慮すべき事態です。
確かに節約、節約では息が詰まるでしょう。上手に節約して、ときには息抜き(それも予算立てをしておく)をしながら、継続的に貯蓄できるよう工夫してください。
上記データの支出額より毎月6万円(保険+生活費の見直し)下げることができたとします。収入から差し引けば月11万円の黒字となります。そのうち、固定資産税等の支出を差し引いても、年間100万円の貯蓄は可能でしょう。世帯収入からも、それだけのポテンシャルはあると思います。
アドバイス3 貯蓄ペースが維持できれば教育資金は準備可能
では、教育資金はどうなるでしょう。長女の方は私立大学に進学予定。文系か理系かは不明ですが、理系なら卒業までの4年間に大学にかかる費用は平均520万円ほど。退職金300万円に、年間100万円の貯蓄ペースができれば2年間の貯蓄でカバーできます。
そうなると、3年後からの貯蓄が次女と三女の方の教育資金となります。10年後、三女の方が18歳になる時点で8年間分×100万円で800万円。私立文系であれば、大学にかかる費用は4年間で平均390万円ですから、何とか教育資金は用意できることになります。
もちろん、これはあくまで試算に過ぎません。このとおり順調に貯まっていくという前提での話です。したがって、しっかり貯蓄プランを立て、そのペースが守られているか毎月チェックをし、ペースが落ちているなら早急に対応するよう心掛けることが大切。それでも途中、どうしても支出が増えてしまう事態もあるでしょう。そのときは、無理をせず、最小限にとどめるように努めてください。
奨学金はひとつの選択肢ではありますが、安易に利用すべきではありません。支給型の奨学金が実際に制度化すれば、もちろん積極的に利用したいところですが、従来の返済型は慎重に考えるべき。まずは、家計を頑張って見直してみるところから、始めましょう。
もうひとつ、もしも奥様が正社員となってボーナス支給となれば、家計はそれなりに余裕が出ます。ただし、全額貯蓄とまでは言いませんが、基本的には貯蓄に回し、先の目標とした貯蓄ペースを上回る貯蓄ができるよう家計管理をしてください。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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